表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/322

従者達の反応

 ライオンの獣人らしい元王妃と姫の親子の横で、彼女らよりも常識外の世界に晒されて驚かされていた物達が居た。その3人がおおよそ2日の間にどう変化したのかをある程度お教えしよう。

 僕がヨルムンガンドから報せを受けてそこに行くと、怯える獣人の親子と騎士っぽいまだ幼さが残る2人が医務室でベッドの上にいた。最初5名と聞いていたから、重傷者だけ別なんだろうね。問題はここから。ヨルムンガンドは常識観念のぶっ飛んだマッドな薬師だった。もう完璧に完成しているらしいけど、伝説の域にある秘薬、エルクサーを獣人の重傷者に処方とは名ばかりの方法で投与したとのこと。『ぶっかけた』らしいので。その獣人さんは驚いたことだろう。すぐに痛みが引き、傷どころか古傷や腰痛なども全て完治。加えて、だんだん年齢に負けてきてた肌も艶や張りが蘇り、女としての自身も取り戻した。その騎士の名はアルマ。彼女は現在35歳未婚。仕事にかまけて婚期を逃し、何度も友人の結婚式や寿退役する後輩騎士の結婚式で何度となくスピーチをした。

 この時彼女はとても晴れやかな気分だったという。しかし、その後自分に投与された物の詳細を聞かされ、自分がこれからどうなるのかを悲観的な方向で考えた。エリクサー……。そんな天文学的な金額になる秘薬を一騎士に投与して何になる? ……余程の好事家が自分を愛玩奴隷とでもするために用意したのか? と錯乱じみた考えにすらいたっていた。彼女の困惑はこれが始まりに過ぎない。これからが本番だった。


「なぁ、キティ、ミアー。私達は今、生きているんだよな?」

「はい。しっかりと。隊長は三途の川を渡りかけてたっすけどね」

「私も信じられません。迷宮に居を構えるロリ領主……というか、そのお母様ってあの方……何歳なんでしょうね?」


 部下の2人もいろいろな物を目にし、自身の目にしている世界が現実の物と受け入れるまでには時間がかかった。常識外の秘薬を皮切りに、化け物のような騎馬、ミスリル加工の現場にアダマンタイトの加工品、果ては実年齢が28歳というがどう見ても10歳そこらにしか見えない『ロリ母』。そして、10歳で迷宮の主となり、領を切り盛りする『ロリ領主』だ。もう何から突っ込んでいいか解らないけれど、これからの護衛3人はいろいろな意味で天国と地獄を味わう事となる。本当の意味で天国と地獄を。

 まず地獄。年齢を重ねたアルマは何とか意地で乗り越えたが、2人の部下はどう頑張っても耐えきれなかった。『爆走トロッコ』はかなり揺れる。激しく揺れるし、地下通路は直線ではない。結構曲がる。運転する担当にもよるんだけど、今回舵を取ったのはまさかのエリアナ。爆走トロッコの運転で最も荒い運転をするロリ領主だ。可愛い顔してスピードジャンキーだからねエリアナは……。それを予期していたヴュッカにより、吐き戻し袋が用意されていた。ある意味至れり尽くせりだ。この後も至れり尽くせりの歓待を全員で受ける。もちろん騎士の3人も。


「お、おいひい……おいひふひるぅッ!!」

「本当に美味しい。この料理、お酒につまみ……凄い」

「私、もうここに住みたいです」


 3人はここの領地のとりこになっていた。最初に案内されたのは時間でちょうどよかったこともあり、レストランだった。5人がここに案内される事は決まっていたようで、既に準備万端の様子で料理は用意されていた。この場に居るのは身分的に使用人とは言え、殆ど家族的な連なりの人物であるようで一緒に食事をする。その人数分の料理がしっかりと用意され、各種酒類やつまみまで完備。ちなみに食べ残しが出た場合は別と料金を取られる仕様なので意地でも食べた方がいいらしい。

 そんなこと意識する必要もなく、全員で完食してしまったけども。

 料理は畜産物よりも海産物などが中心で人魚族のシェフが用意した生食を少し炙った物がとても人気だった。それと同じくらい生魚を酢で締めた白米よ合わせる料理が人気だった。透明の水と見まがうような酒を呷りながら生魚を食べるアルマの手はもう止まらない。キティの皿には数種類の焼き魚が乗っている。白米との掛け合わせを追求しているらしい。ミアーの皿には魚の干物が多い。ついでにエールビールのピッチャーが握られていて酒の方が多い気もする。先ほどリバースしていた若い子だとは思えない。

 エリアナとケイラの2人は何でも食べる。その中でもケイラが気に入ったのは魚卵系だった。この世界での魚は内陸国では珍味中の珍味。王侯貴族などの食事なのだが、鮮度の維持が難しい為にそれ程美味しいとも思われていない。ここでは新鮮な魚は普通に食べられるので、干物などだけではなく内臓もちゃんと美味しく食べられる。ケイラが特に気に入ったらしいのは明太子。特に辛子明太子。時期物なので、他にもあるけどね。


「ふぁ~……」

「うひ~、ひっ、あ、あはッ、な、なんすか、これッ!!」

「お、王侯のような贅沢がこのようにできるのか?」


 まぁ、ここは『リゾートスパ』。お金としては普通よりお高めに取られますけども……。それでも普通にお小遣い貯めれば子供でも来れるくらいには緩いリゾート施設だ。ちなみに、隣にはプールリゾートがある。今はナイトタイムで子供の入っていい時間を過ぎているので、今日は屋内のお風呂エリアだけ。

 最初に呑気な声を上げたのはおそらくミアー。次がキティ、最後に生唾飲んでから声を震わせているのがアルマだろう。

 3人の会話からミアーが入っているのはジャグジーバス。ジャグジーゾーンはいろいろあるけど、風系の魔道具と金属パーツで気泡を放出する画期的なマッサージ風呂。カレッサが考案した。アイツも7日に一度はここに来るらしいし。マッサージ効果と風系の魔道具に炭酸ガスとかいう物を付与したらしくて、水自体もしゅわしゅわする。僕は体が溶ける感じがしてあんまり好きじゃない。ヨハネスさんはとろけてるけど。

 で、キティが艶おある声で喘いでいるのはたぶん電気風呂。これも特殊な水質を作ってあるのでバチバチはならないけど、それなりに高い電圧がかかっているらしい。これは雷系の魔道具と水の質を変える魔道具を開発した妖精族とエルフ族の合作。設置はカレッサ。これもカレッサにはお好みらしく、リゾートスパが好きらしい。

 最後のアルマだけど、距離的に一番近いからミルク風呂だろう。このミルク風呂は……なんというか、セリアナさんのわがままでできた。お隣の蛇神神殿で生産されるミルクの成分をエルフの薬師が調整して入浴剤として使っている。あそこだけそれが使われてるから凄くお金がかかってるらしい。あれに入るとお肌が10歳分くらい若返り、胸が成長した気になれるとのこと。後半は完全にセリアナさんの願望だけど。ちなみに、男性の方にはこれはない。その代わりにゴードンさんのわがままで酒風呂なる物がある。どんな風呂化は知らないけど……。僕はずっとサウナに入ってるから。


「す、すごい……これ、王室のベッドより上質じゃないっすか?」

「うむ、この手触り、間違いない」

「それを1人一台? 私達、今日だけで凄い贅沢してますよね?」


 リゾートスパから直通で宿泊施設、高級ホテルへも行ける。今日はここにお泊り。ここは上級身分の人専用でエリアナやセリアナさん、僕などは顔パス。リリアやハーマさん、ヨハネスさんもだけどね。娘達はあまり興味ないようでここには来ない。リゾートスパまではゲンブやヴュッカは来ているらしいけど。

 このホテルの設備は確かに王侯の物よりも高価だと思うよ。絨毯にしろ、椅子や机、ティーセットにしろ、ベッドにしろね。サービスも行き届いている。ここは大部屋ばかりある階層だ。外でのスイートルームと呼ばれる王侯待遇の人々が使うサイズの部屋が並んでいる。ルームサービスも完備だし、呼べばマッサージもしてもらえる。18禁サービス以外は基本的に用意されているってイレーヌから聞いた。ちなみにそういうホテル街もちょっと中心から外れた場所に別区画として用意されている。

 セキュリティも凄く充実しているから、僕は凄く安心している。僕の寝室は本当なら誰も入れないはずなのに、夜になると誰かしらが必ず待ち構えているからね……。ここは魔素識別紋によるオートロックなので、チェックイン中の当人か同時入室の人以外は入れない。なので防御は完璧。ふふふ。


「で、お前達は振りきられたと?」

「はい……面目ないっす」

「あれは無理です。あの速度で走られると私達ではとても」

「まぁまぁ、大丈夫ですよ。ここはゲンブちゃんの暗部が居ますから。あの子達だって親の目が無いところで羽を伸ばしたくもなりますでしょうし」


 鷹揚なのか無責任なのかセリアナさんは基本的に放任主義だと思う。見るべきところはちゃんと見ているから、この人は外観以外はちゃんと母親している。

 キティとミアーはエリアナとケイラの護衛としてつけられたのに、ガヴトヴォンを爆走させたエリアナに一瞬で引き離され、見失ったとのこと。たぶん、意図的にではない。エリアナは物凄いスピードジャンキーだから。アレが通常運転だよ。ここはゲンブの手の者の目があるから、2人で歩かせても安全だから問題ない。僕らも歩きながらセリアナさんの案内で蛇神神殿を歩く。基本は食事処と甘味処を回りながら主要な施設を巡る。主要施設と言ってもこの人達が関わることはないと思うけど。軍関係なんて来ることないだろうから、神殿くらいじゃない?

 うん。ここに居る女性5人も菓子に舌鼓を打ちつつ、今後のことについてを話している。特に仕事に就いてだな。セリアナさんとしても、政治的な知識や獣人としての統治の知識があるセラさんなどは、ぜひ取り込みたい存在だろう。……雲行きが怪しい。セリアナさんが四人を集めて何やらゴニョゴニョ言い出した……。僕は途中の施設でそれとなく姿を消した。ヨハネスさんにだけ理由を告げて。いろいろ面倒なことになりそうな気配を感じたので。

 セラさん、ケイラ、アルマ、キティ、ミアー。ここではこういう勘で逃げるスキルは絶対に必要になるから。頑張って習得することを勧める。じゃないと悪魔に巻かれて大変な目に遭いますから。 


 ~=~

NEW

アルマ・ベルン

女性 35歳

主人 セラ・ゼラード=グランデール

取得称号

・元近衛騎士 ・元冒険者 ・お転婆 ・苦労人 ・お局ポジション ・婚活騎士

獣人族

身長175㎝

取得スキル

+剣術 +盾術 +格闘術 +騎馬術 +交渉術

 元獣王国の近衛騎士団長。獣人国は近衛騎士が男性女性と別れており、その女性騎士団長。仕事にかまけて婚期を逃した35歳独身、婿募集中。幼馴染で親戚のセラ王妃が情勢不安を利用して監視を掻い潜り脱出するのに協力。魔境で魔物に襲撃され辛くも撃退。しかし、重傷を負う。ヨルムンガンドにエリクサーを処方され、その効果であらゆる外傷や古傷、内傷が回復し、10歳若返った。男日照りの呪いも祓われた?


 ~=~

NEW

キティ

女性 15歳

取得称号

主人 ケイラ・ゼラード=グランデール

・元近衛騎士 ・平民出の星 ・ケイラのお気に入り ・アルマのお気に入り

獣人族

身長155㎝

取得スキル

+拳闘術 +爪手甲術 +総合格闘術 +隠密 

 元近衛騎士。主人であるケイラとその母である王女が国を脱出する際について来た信用されている近衛の少女。今年入隊した有望株で戦闘力や学力ともに突出している。獣人としては小柄で可愛らしいが、その力は獣人の中でもトップクラス。ケイラと共にエリアナ領へ移入し、生活を始める。文官業は嫌いなため、護衛は継続。


 ~=~

NEW

ミアー・フィンク

女性 15歳

主人 ケイラ・ゼラード=グランデール

取得称号

・元近衛騎士 ・没落令嬢 ・ケイラのお気に入り ・アルマのお気に入り

獣人族

身長165㎝

取得スキル

+剣術 +槍術 +斧術 +舞踏 +絵画 +音楽

 元近衛騎士の少女。実は没落令嬢だった。奴隷として売られそうになる直前にケイラに助けられたという過去を持つ。幼いころから王級で衛士見習いとして過ごし、有望視され近衛に入隊。情勢不安の中を持ち前の器用さでケイラを城から脱出させることに貢献。武術よりも内政や芸術に秀でているが、獣人である為、基本的な身体機能はとても高い。


 ~=~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ