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ラザーク王国の今後について

 どうも僕です。クロです。

 僕の予想とは違い、長い目で見て行かなくちゃいけないと思っていたラザーク王国の件は、一気に片付いた。正確にはまだすべては片付いていないけど、ある程度の目途が立ったので、あとは相談が残るのみだ。正直、今の迷宮領は人手が足りない。うん。ちょっと語弊があるね。正確には中枢で文官仕事ができる高位の執政官が足りないのだ。

 なのでラザーク王国にはこのまま存続してもらえる方が、僕らとしては楽なのである。その代わり、力の差や今回のエギルやトオネル討伐の事もあるので、ラザーク王国はエリアナの迷宮領の傘下に入ることとなる。別に何の変化もないし、税徴収も必要ない。食料が足りないならば貿易と言う形で支援もできる。出稼ぎに蛇神神殿へ来るのも良し。僕らには迷宮と魔境の所有権さえあればいい。

 それより問題なのは、なんでか女性の近衛兵の皆さんとカナンカ元王女は国へ帰ろうとしない。

 僕が疑問符を頭上に満載状態で困惑しているとツェーヴェから助け船?が来た。今回はラザーク王国からの人質扱いでカナンカ元王女を引き取るべき……とのこと。いつの間にこの女蛇は人間文化を学んだんだ? 


「面倒だけど、この子は受け取っておいて。ラザークとしては人質。逆らったらこの子が死ぬ。大切な人質を死なせるようなことはしない。逆らいませんよ……って言いたいのだから」

「え……。別に」

「必要なことよ。そうでもしないと、ラザーク安寧の保証にはならないの。私やクロが居る現状、ラザークが私達の上に立つことはあり得ないのだから」


 本当に人間の文化は面倒だ。別に人質なんていらないからさ。逆らった段階でサクッと潰せるほうが僕としては……。そうか、カナンカ元王女としては故国を潰してほしくない訳ね?

 そういう訳で、別れを惜しんだ忠臣の皆さんと別れ、カナンカはこちらに来ることになった。この若いながら元王女のカナンカ、実は事務仕事のプロフェッショナルであり、セリアナさんの仕事量がかなり楽になるというおまけまでついて来た。ついでに、彼女について来た近衛兵の女性達も事務仕事や雑務は完璧で、結果的には即戦力として重宝したのは言うまでもない。

 それにカナンカは何でか人質扱いではなく、食料支援の名目でこちらに嫁いだ形にされていたらしい。その方が波風立たないし、実際に食料支援はしている。迷宮を通じてどんどん運び込まれる食料や、ゲンブがオアシスの水場を拡張して水問題も改善。ラザークとしては悪いことは一切なく、無理な徴収や開拓のための奴隷狩りまでなくなったのだからいいことづくめ。

 これまでエギルやトオネルと繋がっていた連中を除いてね。いろいろ報復してきてくれたおかげで、僕や蛇魔人の斥候部隊にはいいカモだった。カモがネギを背負ってきた感覚である。


「そう、面倒なことになったわね~」

「ま、相手から何かしてくる事さえなければ手を出す気はないよ。めんどくさいし。これまでは小勢力や魔物だったけど、一国家との戦争ともなればこちらも損耗は避けられない」

「それもそうね。最悪はゲンブや私が薙ぎ払えばいいわ。貴方は気楽に構えて居ればいいのよ。ふふふ」

「そうだね……」


 うん。そういう事だ。

 ラザークのことは完全にラザークの役人やカナンカに丸投げ。それどころかカナンカはこっちの差しさわりの無い事務作業もこなしてくれてるからね。結果的にはこちらの方に益があったと考えるべきだ。ラザーク関連から浮上した新たな問題としてはグランデール獣人国の問題だろう。こちらから相手と関わり合いになることは一切ない。しかし、いずれは関わり合いになる可能性が高く、無視もできないというのが実情だ。

 グランデール獣人国はいろいろな呼ばれ方をし、『獣人国』とか『グランデール』とかいろいろね。立地としてはファンテール王国と魔の森を挟み、近隣の魔境を境に南東側にある。最も国境が隣接しているのはラザーク王国。オアシスの増える南東側に隣接し、奴隷の件で険悪な国交。いつ戦端が開かれてもおかしくない関係が100年近く続いている。あと、わずかではあるけど、南西側をアルジャレド通商連合国とも隣接し、グランデールも塩を輸入している。

 グランデール獣人国は獣人の間では『獅子王国』と呼ばれ、代々の王は必ずモデルがライオンの獣人しかなれない決まり。種族ごとに細かく身分が法で定められており、以前から閉塞感があることで国外へ出る獣人族も多い。人族やそれに近い種族を蔑視しており、グランデールはグランデールで人を奴隷として扱う事を推奨している雰囲気もある。


「本当に八つ当たりの応酬ね。なんて肝っ玉の小さい国なのかしら」

「マウンティングは野生動物でも人間でも重要ってことでしょ? それの解決方法がこういう胸糞悪い方法ってだけで」


 あとこれは裏側の問題でもあるんだけど、実はラザークの奴隷商に獣人を売っていたのはグランデール獣人国の獣人奴隷商だったんだ。なんとエギルに繋がる奴隷商のことを蛇魔人の斥候さんに調査を依頼したら、ボロボロゴロゴロ出ましたとも。ついでにエギルの資金確保方法も奴隷狩り。人間を愛玩奴隷用に集め、グランデール獣人国の特権階級用に売っていたらしい。本当に胸糞悪い。まぁ、そのエギルは今は弟と仲良く砂漠で晒しものになっているからね。もう何もできない。あのまま衰弱死させる刑という運びだ。

 ツェーヴェの言うめんどくさいと言う発言の通り、問題をいくつも起こさないで欲しいものだ。

 僕ら自身が動くようにはなっていないけど、ラザーク王国が獣人を買わなくなったので国庫が圧迫され、資金繰りが厳しいとのこと。つまり、財務関係、もしくは国家ぐるみで奴隷売買を財政の当てにしていた可能性がある。その上で、ファンテール王国でも似たような事が言えるのだけど、魔境の素材って言うのはいい商売材料になる。現在、ごく狭い範囲で隣接する魔の森南端側で、獣人の冒険者が数多く侵入して問題になっているのだ。

 大暴走とまではいかないけど、スルトがピリピリするくらいには危ないとツェーヴェが言っている。最近はツェーヴェは僕の秘書業務みたいなこともしているから、他の魔境の管理情報はツェーヴェを介して僕に報告が来るのだ。僕は『魔人衆』の代表だからね。


「一難去ってまた一難と言うか。……ねぇ、カナンカ? なんで君はここに居るの?」

「は、はい。先日ツェーヴェ様からも許可をいただけたので、わ、私も皆様のようにクロ様の……その妻の1人として……」


 本当に一難去ってまた一難だよ。セリアナさんがやらかしてくれたからね。現在の僕の夜には自由はない。自室の寝室に行くと、絶対誰かしら女性が待ち構えているのだ。僕は入室の許可などしたことはない……。セリアナさんが統治に必要と言うので、僕は渋々受け入れているけど、ちょっと理解に苦しむ。何度も言うけど、僕は元が魔物。そこから魔人となった。魔人は広い意味での人間種や妖精種など、幅広い種族と交配可能なことも伝承で伝わっている。それを利用し、畏怖の御旗であり、この国の祖…力の象徴として僕や魔人を利用することにしたのだと思う。利用と言うと少し言い方が悪いね。大雑把に言ってしまえば『共生』だ。

 僕ら魔人は本来ならもっと生まれにくい種族。それに加え、土地の主である魔人が複数いる。それがここには僕、ツェーヴェ、スルト、タケミカヅチ、ゲンブ、ヴュッカ、エリーカと7人。まだ魔物ではあるけど、その予備戦力がジオゼルグとヨルムンガンドで2体。他にも力は劣るけど10人以上は蛇魔人の女性が居る。土地主ではない魔人が10人も居れば通常の国家が連合しても勝てない。それを抱え込んで、僕らは重用してもらいつつ縄張りの侵害を国家ぐるみで防衛してもらえる。どちらにもメリットはあるのだ。

 それを望んでいるのは魔人側にもいる。特に人とのかかわりが好きなツェーヴェや人魚と仲の良いヴュッカ。ドワーフと仲の良いスルトもそっち側だ。この前など、僕の寝室にキールを押し込んで去っていく始末。ゲンブに至っては以前から未亡人のお2人、クォアさんとリャエドさんを押し込んで来ることがままあった。魔人と掛け合わさった他種族の子は、とても強い力を備えて生まれてくる。それが魔人の中でも強い魔境の主であればなおのこと。


「勘弁してよ。……今昼だよ? それから、その辺りはセリアナさんに話を通してね」


 返事もなく一目散にカナンカは僕の部屋から出て行った。……この関係性のせいで最近ではラザーク王国とは呼ばれず、ラザークは『エリアナ国分領』と呼ばれている始末。それが相手の武官や文官さんから言い出していることだと言うから、……僕も何も言えない。

 本来、歴史ある国が歴史も何もないぽっと出の自治区の下につくなど異常その物。

 それが目の前で起こっているのだ。ラザークからの移入もあれば、ラザークへ帰る人も居る。渡航は自由にしたからね。ラザークも各地が安定してきていい事ではあるのだけど、やっぱり全てがいい事とは限らないんだよね~。主に魔境関連でやらかしてくれる『おバカさん』達の愚行である訳で。領地が大きくなればそれだけ問題も増えるしで……。僕は大忙しだよ。そろそろその辺りもちゃんとしなくちゃいけない気がする。

 ラザークの問題はまだまだ絶えない。さてさて、そろそろ新たに卵が孵りそうな気もするね。いつの間にかエリアナが増やした卵。それから最近ではジオゼルグ、ヨルムンガンドが生まれた。まだ人化できる程の力はないけど。ジオゼルグはそろそろかもしれない。ヨルムンガンドもスルトの手伝いで魔物を薙ぎ払いまわっているらしいから、相当強くなっている。


「で、クロはどうするの? 貴方の縄張りの保守管理は大丈夫そう?」

「大丈夫。前に行って解ったでしょ? 『黒鋼の森』はツェーヴェでも気を張らなきゃ危ない森。主級で危ない森は簡単に落とせない。それに、敵襲があれば判るし」

「ふふふ、そうね『本当に恐ろしい子。私の判断は間違っていなかったわね』」

「さぁ…てっと。ちょっと鍛冶場に行って来るよ。卵が孵化したみたい」

「あら? なら私も見に行くわ~。次はどんな子が生まれたのかしらね~」


 今回、新たに仲間になる個体を見た時、僕とツェーヴェは揃って亜然とした。うん。アレは驚く。誰が見ても……ね。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後100日~105日

主人 エリアナ・ファンテール

身長120㎝

全長15㎝……身長8.5㎝


 ~=~

 

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