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二回目の土下座回

 僕らが迷宮主の居室に入ると……。今度は先頭の女の子が土下座するのに合わせ、一斉に後ろの人達も頭を下げる。一層豪奢な服装である女の子以外は全員鎧を着た人達だ。僕、この光景が二度目な気がするのですがそれは? 後ろの女性陣に問うても答えはなく、視線を逸らされて終わった。

 時間だけが過ぎる冷たい空間。我慢ができなくなった僕が、とりあえず目の前の人達の素性を問う。

 それに答えたのは豪奢な服装の女の子の隣、豪華な鎧の女性剣士だった。うん。これまでの僕の運も考えると凄いエンカウント率だね。この人達はどうも、ラザーク王国の王女派閥だったのだ。呆れ果てたツェーヴェとヴュッカ。訳が分からず、エリアナと会話しているスルト。僕はとりあえず、一番偉い子の隣に居た近衛騎士らしい女性と会話をする。別に僕らには特に害意はなく、隣接する魔境と迷宮の主の関係者であることを告げる。するとその話にめちゃくちゃ食いついたのは、隣の偉い女の子の方だった。外のことに凄く興味があるらしい。

 あ~、一応この子王女様だっけか……。なら、ここはエリアナに出てもらう方がいいね。アイコンタクトをすると、エリアナが僕の隣に座る。清々しい笑顔だ。


「お初にお目にかかります。公になってはおりませんが私は迷宮領の領主、エリアナ・ファンテールと申します」

「め、迷宮領……そんなものが……」

「……」


 それよりも、エリアナが目の前の王女様を見ながら、僕の左腕を抱いているのは何とかならないのだろうか? 何とか僕はどうにかしようとしたのだけど……。隣の自治領の主と王女様はバチバチと視線で火花を散らしている。対面のお姫様もおおよそ15歳程、このくらいの子達は皆こうなのだろうか?

 お隣に居る近衛のお姉さんにどうにかしてもらいたくて視線を向けると……。ダメだこの人も。隣のお姫様?が成長したことに感無量って感じだ。

 話にならないので、さらに隣に居た近衛騎士の副官らしい女性と会話をし始める。どうもエギルのやり方に不満のある良識派がこちらに集まっているとのことで、ここを拠点に遊撃戦を展開しながらどうにか食料確保の手法を探っていたらしいのだ。次男のトオネルという男が握っているのは、交易路だけではなくその通商権まで持っている。この二点がある上で、勢力が大きい分だけこのお姫様の軍は食料も必要になる。ただでさえ国中が食料不足に悩ませられ始めている中で、民衆から食料を徴収する様では施政者としては落第点。どうにか規模を上げないように突破口を探していたという。

 そこにエリアナを無視してツェーヴェが口を出した。まぁ、この状況ではダメだな。エリアナには珍しく、完全に攻撃的な反応だから。ツェーヴェの発案は本来、相手からは受け入れられないような物だった。それは完全に相手を下に見たいい口で、馬鹿にしているとしか取れない口ぶりだったからだ。


「それなら~……。いい方法があるわよ~?」

「い、一体どのような方法でしょうか?」

「それはね~? そこのエリアナの領地に従属すればいいのよ」


 後ろに居た男性の武官数人がいきり立つが、それら男性の武官は柄頭に手を近づける前に異変に気付いただろう。皆さん青ざめて身震いしている。ツェーヴェの放つ濃い魔素に……。それはさすがに視線で戦っていた2人の少女にも、激しい恐怖を与える物だった。ツェーヴェはエリアナに向けてちょっとした威圧込みの声色で抑えにかかる。それと同時に、隣国の一勢力とは言えどもお姫様に対して『小娘』と宣う。

 ツェーヴェは見るからにイライラしていた。エリアナはやっとこさ気づいて、後ずさりし交渉権をツェーヴェに譲る。ヴュッカもツェーヴェには逆らわない。スルトはそもそもこういう話し合いに興味がなく、ジオゼルグを抱いてすやすや寝ている。ツェーヴェが何をイライラしているのかは知らないが、今のツェーヴェに反論はしない方がいい。……なのに、お姫様は果敢にもツェーヴェに食ってかかった。

 ……勝負は一瞬。目力で一撃粉砕された。ツェーヴェの圧勝。

 ツェーヴェがイライラしていたのは『小娘』こと、『カナンカ姫』の僕に対する態度だった。……え? ツェーヴェまで僕を狙ってんの? マジで?


「ふふふ、貴女達には生きるか死ぬかの二択しかないわ……。この蛟、ツェーヴェの怒りを買ったのだからね~。小娘」

「ひぃっ!!」

「……こらこら、ツェーヴェ。やめなよ、大人げない。それから国は要らないけど、迷宮は欲しい。あと、このオアシスの魔境も」

「へっ?」


 カナンカ姫の目の前で、僕が小さくなる。ツェーヴェの掌の上で手を上げておいた。まだ15㎝くらいだからね。後ろの方に居る武官は見えてないだろう。だから訳が解らない感じだったけど、カナンカ姫と隣の近衛のお姉さんも解ったはずだ。僕も『魔人』であると。

 途端にカナンカ姫が床に物凄い音を立てながら頭を打ち付けた。そして、凄く覚悟のこもった声で『自分の身を差し出すので、他の者の命はどうか助けて欲しい』……と言い出す。さすがの僕も額に手を当て、怒りが完全に呆れにすり替わったツェーヴェも、盛大な…ホントに大きなため息をついた。なんせ、ここに居る攻略者メンバー5人の内の4人が魔人か魔物。エリアナだけが普通の人種だ。

 そこからの交渉は簡単だったけども。

 ツェーヴェが威圧したこともあり、カナンカ姫の勢力は完全にこちらに従属するとその場で宣言。魔物ならまだしも魔人と戦って勝てると思うのは、生粋の戦闘狂かただのアホだけ。……つまりファンテール国王のリックスはただのアホだったわけか。まぁ、それはいいけど。とりあえずラザーク王国の最大勢力を迷宮攻略で調略してしまった。どうしたもんかね……これ。


 ~=~


 その頃、ワーテルロー騎士団とゲンブにより敗走せざるをえなかったエギル軍はと言うと……。

 蛇魔人の斥候達に追いかけまわされ酷い目に遭っていた。蛇魔人は夜目が効き、音に敏感で嗅覚も数千倍に薄められた臭いでも嗅ぎ分けられる精密さをもっている。蛇魔人の女性達はとある条件でゲンブから出撃を依頼されていた。ゲンブは蛇魔人の女性達を煽り、調子のいい約束を結んだ上で主が見ていないことをいい事に、徹底的にエギル達をフルボッコにして遊んでいるのだ。

 ゲンブは常に奥ゆかしい態度をしてはいるが、彼女の本性は極み付きのドSだ。一部の人物は知っている。彼女の部隊員やエリアナ領の正規軍人、捕虜に限られるみたい。

 その作戦中に、ゲンブへエリアナから念話が届き、新迷宮と魔境を譲渡されたことを伝え、今から同時に調略したカナンカ王女の勢力で全面攻勢に出るので、エギル軍とトオネル軍を叩き潰すために受け止める防衛陣を敷けとの連絡だ。

 その時のゲンブは複数の疑問が脳内に流れたが、その時の彼女は完全に脳内から考えるという選択肢を排除した。この時のゲンブは……考えることを止めたのではない。

 エリアナから飛んできた『およそまともとは思えない連絡』に、考える以前の段階……。聞いたままを受け止めるだけに留めたのだ。考えたところで答えが出る訳でもない。それなら、最初からそういう前提で動いた方がいい。ゲンブは蛇神神殿内に居る全戦力に通達を出し、自身も巨大な盾を魔法の袋から取り出した。ゲンブは時折こういう時があるので非常に危険な少女である。カミツキガメの少女は……噛みつくことが大好きなのだから。


「ふふふふふふッ!!!! やったッ!! ようやっと私の本領発揮ですわーッ!! 全軍、全軍出撃ぃッ!!!!!! さぁ、さぁさぁさぁさぁさぁさぁ!!!!!! この世に必要ない愚物を葬り去るのですッ!! 行きますよッ!! 皆さん!!」

「「「「「「「Yes!!!! Mam!!!!!!」」」」」」」


 この時のこの軍事行動はノエ・エリアナ女王国の国史を語る上で必ず語られることとなる。とある女将軍の暴走により、本軍到達前に敵対勢力の全てが追い詰められていた。迫りくるカミツキガメの脅威にさらされており、戦意どころかプライドすら叩き潰された後だった……と。


 ~=~


 明朝、日の出と共に僕らが見たのは敵兵の可哀そうな姿。男性からすると…惨状だった。同じ男性としては凄く哀れだが、何やらゲンブを激昂させる様な事をしていたらしい。エギルとトオネルは蛇神神殿迷宮都市の前、不自然に砂漠と湿原が切れる切れ目に磔にされていた。しかも、かなり念入りに股間を潰された様で、その周りだけ血塗れで白目を剥き、泡を口から噴いていた。

 その磔にされている自称国王と次期国王だった男の前には、ズラリと縛り上げられた兵卒が並べられていた。綺麗に砂漠側に……。付き従っていた兵卒は男女関係なく、衣服はボロ布以下でまるで以前の獣人農奴達の扱い方の様だ。

 僕らエリアナ領陣営と、カナンカ元王女の陣営が到着した時には既に事は決していた。

 些かどころか、完全にやりすぎだけど、めちゃくちゃツヤツヤした肌のゲンブが嬉しそうに僕に一礼。ここまでやって1人も殺していないと言うのだから逆に凄い。カナンカ元王女はドン引きしているし、周囲の武門出身の男性たちは若干前のめりになっている。うん。痛そうだよね。僕も先頭でゲンブの報告を聞く役割さえなければ、同じ体制で股間を抑えて居たかった。……だって、痛そうだものマジで。


「それにしても、……まさか本当に王女派を調略していたんですね……。どのような手を使ったんですか?」


 そういわれても僕にはよくわからない。言ってしまえば、エリアナの時の件に似ている。もともとあの黄金の遺跡はラザーク王家の王墓の扱いで、秘所だった。そこに入れるのは選ばれた王家の人間だけという事で、エギルもトオネルも選ばれなかったという。その中でカナンカ元王女が選ばれてしまったことが、この三勢力分裂の直接的な原因。まぁ、人徳的な問題では次期王はカナンカ元王女一択だったらしいけど。

 カナンカ元王女はこの国の男尊女卑の関係から、王位継承権はない。この国では家督継承などでは女性は継承権がないにも関わらず、エギルが王の座を簒奪した直後にこれだ。国が割れてもおかしくない。エギルはもちろん憤慨したが、その時にはカナンカ元王女に手出しはできなかった。単純な兵力さが10倍近い差が既にあり、弟のトオネルは七光りとは言え、父親からの権利関係のほとんどを奪取した。エギルに残されたのは自身のスキルと野盗紛いの部下のみ。……半ば自暴自棄の攻撃だったのか? 迷惑なことだ。


 ~=~


・成長記録→経過

クロ

オス 生後100日~105日

主人 エリアナ・ファンテール

身長120㎝

全長15㎝……身長8.5㎝


 ~=~


・記録

カナンカ・ホルス=ラザーク

女性 16歳

ラザーク王女

取得称号

・不遇の姫 ・苦労人 ・国家の良心 ・王墓の管理者

身長150㎝

人族

取得スキル

+事務作業効率化 +政策反映 +礼儀作法 +舞踏

 ラザーク王国の王女。兄2人に現れなかった国王の資格を発露させた賢い姫。内政特化で経済方面に関しては特に強い。商売人でもあり、損得勘定がとてもうまい。魔人ツェーヴェに叩き潰され、国ごとエリアナの領地へ加わる。クロに一目惚れし、属領化することでクロの妻へ昇格、文官として登用、食糧難になりつつあった領地も問題が改善。国ごと嫁入りしていいことずくめ?


 ~=~


・記録

ゼビオラ・サテン

女性 20歳

ラザーク王女付き近衛兵長

取得称号

・女性近衛の脳筋担当 ・姫の剣 ・計算は得意 ・国母の姉役

身長175㎝

人族

取得スキル

+曲刀術 +ラクダ騎乗 +家事全般 +整理作業効率化 +脳筋的超越術

 カナンカの幼馴染でもあり、近衛騎士の家系に生まれた女性。騎士であるとともに傍仕えもしていることから基本的になんでもこなす。少々、抜けているが悪い人ではない。騎士ではあるがどちらかと言うと脳筋。事務経理も何故かそのやり方でできている。



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