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大人として歳を重ねることについて話をしよう

「長く生きていると、色々な事があるわね」

「歳を重ねれば麻痺が生まれる。自分の痛みにさえ鈍感になる」

「苦味が美味しいだなんて、20年前の私は信じたかしら?」

「苦味が美味しいと感じるのも、年を重ねた結果だって言うのかい?」

「何もかもを年のせいにするつもりはないわ。でも、年のせいにでもしないと野暮なこともあるじゃない」

「鈍感なものは永遠に鈍感なままだよ。知らなくて良い事は知らない方が良いこともある」

「詩的で、それでいて捨てるほど使い古された言葉ね。あなた、これ以上どうやって年を重ねるつもり?」

「もちろん、命は有限だ。いつまでも老い続ける事はなく、必ず終わりは来る。マスターも知っているだろう?」

「知ったような口を聞くこと。。。例えその先に麻痺が生まれても?」

「心が麻痺する事を不孝だとは思わないよ。それはきっと、その分いろんな経験を積んで磨耗した結果だと思うから」

「悲しいほどに真実ね」

「年を重ねれば自ずと理解できる事さ。目を逸らさずにもいられなくなる」

「自分を追い込む癖は治らないのね。ほんと、損な生き方だわ」

「善人ぶるつもりはないよ。今だって、この話を聞いていれる理解者がいることに感謝をしているくらいだ」

「下手なお世辞ね。それとも本心なのかしら?」

「受け取り手の気持ちは受け取り手次第だ。マスターのお気に召すがままに」

「口が減らないところだけは変わらないのね。ケーキのおかわりは?」

「商売でなければ頂きたいね」


「誕生日のお祝いくらい素直に受け取りなさいな。はい、苦味によく合うシフォンケーキよ」

「覚えていてくれたことに感謝するべきか。それとも、覚えられていたその商売魂に感服するべきか」

「何よ、嬉しくないの?」

「嬉しいさ。でも、それこそ言葉にすれば野暮なんじゃないかい?」

「聞いた私が馬鹿だったわ。いいからさっさと食べなさい」

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