退屈な日々とまだ見ぬ未来について話をしよう
「退屈ね、何か話しなさいな」
「また無茶な……そんな日もあっていいじゃないか。忙しい日々が幸福であるなんて保証はないよ」
「ならこのまま、ぼーっと過ごすのを受け入れろと言うの?」
「別に空虚に過ごせと言っているわけじゃない。ただ……」
「あるがままを受け入れて、その中で極わずかな幸せを感じ取る……かしら?」
「概ねその通りだけれど、少し達観しすぎかな。その言い方じゃあ、まるでマスターはご隠居様だ」
「ぶつわよ」
「あくまでも、まるでだよ。……まぁ、隠居後のマスターというのも興味はあるけれどね」
「そこまで長い付き合いになればいいわね。……その時縁側で飲むのは、やっぱり珈琲なのかしら?」
「微笑ましい空想だ。マスターの中で隠居後は縁側。本当に微笑ましい」
「何よ、その子供見るような目は……」
「そうむくれないで欲しいね。だって想像するだけでも楽しいじゃないか」
「お婆ちゃんになった自分なんて想像したくもないわ。何を意気揚々と人の神経を逆撫でしてくれるのかしら」
「見た目や外見の問題じゃないよ。僕が微笑ましいと思ったのは、マスターが想像したその在り方だ」
「……縁側でゆっくりして何が悪いのよ」
「何も悪くはないよ。寧ろそれは退屈の最高峰な時間だとも思える」
「退屈に最高も何も無いわ。のんびりするのは良いけれど、無空に過ごすのは耐えられませんもの」
「同感だね、その二つは似ているようでまるで違うものだ。だとしたら、この時間がこのまま続くと想像してみるのはどうだろう?」
「……ふふっ。ああ、確かにそれは悪くないわね。貴方も私も今とは別人」
「そう、そう在りながらも、それでも変わらず、こうしている未来を想像するのは、とても微笑ましい在り方じゃないか」
「ええ、そうね。そうなればきっと、退屈だなんて、思いもしないんでしょうね」




