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2話  魔王討伐の仲間


「静まれ!」


 王の一声により謁見の間は静まり返るが、兵士たちの色めきたった気配は隠しようがなかった。

「わかった、村人たちの同席を許そう」

「ありがとうござ――」

カインが頭をたれて感謝の意を口に出しているときだった。


「王様ぁ!」

村長が手をあげてカインの言葉をさえぎった。


 王の許しなく発言をすれば不敬罪で首を飛ばされてもおかしくはないが、勇者の機嫌を損ねたくなかった王は額に血管を浮かべながら村長の発言を許した。


「わしらの村は魔物の死体だらけで今は住めたモンじゃないんですわ。だから兵隊を派遣して掃除してもらえんですか?」

「国の兵士を村の掃除のために遣わせだと…」

王の額にいくつもの血管が浮かび上がり、玉座においた手がブルブルと震えている。


「だって魔物が来たときにな~んもしてくれんかったんじゃ。こんぐらいしてくれても罰はあたらんじゃろう?」


 ダンッッッ!!

王が玉座に拳をたたきつけた。

「―――――っ!!」

「わかりました! 小部隊を村に派遣いたしましょう!」


 王の横に控えていた宰相が、王が怒鳴るよりも早く前に出て叫んだ。


「やったぁ、これで楽ができるわぁ!」

のんきに喜ぶ村人たちを尻目に、宰相は王にそっと寄った。

「処刑して勇者にへそを曲げられたらまずいですって! 魔王を倒せるのは伝説の勇者しかいないのですよ!」

「ぐぬぬぬぬぬぬっ!!」


「さ、さぁ王様! 勇者の仲間となるものを紹介しましょうではありませんか!! さぁ、こちらへ!」

宰相の一声により、二人の人間が謁見の間に入ってきた。


 一人は特注の鎧に身を包んだ筋骨隆々とした2メートルはあろうかという大男。

岩のように厳つい顔にはところどころ傷がはしっている。

遠目から見たら熊のようだった。


 もう一人はドレスに身を包んだ可憐な少女だった。

絹糸のような金の髪を腰まで伸ばし、澄んだ瞳は空色で、ふっくらとした唇はたえず笑みのかたちを保っていた。

それは腕のよい細工師が、一生をかけて造り上げた極上の人形のようだった。


「これなる者は国一番の戦士、バオロール! そしてこちらの可憐なお方は、この国の麗しき姫君でありながら、攻撃魔法と回復魔法を使いこなされるソフィア-ナ様にございます!!」


 岩男は厳つく笑い、姫はドレスをつまんで微笑んでみせた。


「勇者よ、この二人があなたの魔王討伐を助け、ともに旅をしてくれます! 光栄に思いなさい!!」


 カイルは思った。

あの岩男の筋肉、あれは見せかけの筋肉でぜんぜん実用的じゃない。

見苦しいだけだ。

美しい筋肉ってのは、父さんのような肉体のことを言うんだ!


 後ろのほうで、父がガッツポーズをした。



 姫がやけにカイルにニコニコと笑いかける。

確かに綺麗だとは思うけど、僕はイサベルのほうが綺麗で可愛いと思う!


 後ろのほうで、イサベルがガッツポーズをした。



 岩男は思っていた。

この魔王討伐に行けば、この冴えない少年より自分のほうが英雄と呼ばれてモテるだろうと。


 姫は思っていた。

この魔王討伐に行けば、この冴えない少年より自分のほうが救国の英雄として国を掌握する力を得ることができると。


 そして、魔王討伐のパーティは組まれたのだった。





 一向は城門の前でこれから行く方向を話し合っていた。


「パストラ大陸の北の海上に突如、中規模の島が出現し、そこに魔王の城ができていると報告にあります。北を目指してまいりましょう。」

旅用の短く装飾品の少ないドレスに着替えたソフィアーナ姫が提案し、何もしらないカインはただその提案にうなずいた。

「はっはっはっはっは! なに、この国一番の戦士バオロールがいれば、何も心配することはございませんぞ!」

バオロールは無駄に胸筋をピクピクと動かしながら、ソフィアーナだけを見つめて笑った。


「まぁ、なんと頼もしいことでしょう!(うぜえよ、筋肉バカ)」

ソフィアーナはカインだけを見つめて笑った。


「ところで、あの方々はなにかしら?」

ソフィアーナはちらりと後方に群がる村人たちを見た。

その視線は虫けらでも見るような冷たい目だったが、カインと目を合わせるときには慈悲に満ちた王女にふさわしい笑みを浮かべていた。


「はい、僕の生まれ育った村の人々です。とても頼りになる人たちばかりなので、ついてきてもらっているんです!」

カインは人のよい笑顔を浮かべ、自慢げに話した。

「そうですの、それは楽しみですわね(なにコイツ、保護者についてきてもらってるのかよ! 見た目同様、頼りがいのないガキだな!)」


 そこで3人はにこやかに笑いあった。


「あの女、なんかカインに色目使ってないか?」

「カインのお嫁さんになるには役不足だと思うわ」

「う~ん、わしがもう少しわかければ、あのお姫様でもいけたかのう」

「こらジジィ!」

「かぁさん、俺とあの筋肉ダルマ、どちらの肉体が美しいと思う?」

「いやだ…あなたに決まってるでしょう…?」

「…かぁさん、今夜二人目でもつくるかい?」

「あなたの早漏がなおってからね」


 村人たちもとりあえず見守っていた。



「では参りましょう」

姫がにこりと笑って指を鳴らすと、どこからかわらわらと貴族の子息たちが輿のようなものを担いであらわれた。


「あの…この方たちは?」

カイルが指差して聞くと、姫は腰に乗りながら答えた。

「わたくしの親衛隊ですの。お気になさならいでくださいませ」

カイルは言葉どおりに気にしないようにした。


 村人たちでもう慣れた。




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