【番外編】★口だけ正義は寿司のネタ★
【注意】
完全にギャグ回です。本編とは一切関係ありません。
サクッと笑って読んでいただければ幸いです
士官学校の講堂は、朝から妙な熱気に包まれていた。
討論会と銘打たれた集会──だが、議論の場というより、ある二人の独壇場である。
「──だから言っただろう! 未成年が耳にしたらどうする!? 国の未来を担う若者が!」
壇上に立って喚き散らすのは、ゼグマ=フェルシア。
声ばかり大きい、細身の男。正義を語るというより、正義を盾にして悦に浸っているタイプだ。
「まぁまぁゼグマ殿、そこまで言わずとも……。ですが確かに謝罪は必要ですなぁ」
隣で頷くのは、ワズシ。
寿司職人でもないのに寿司みたいな名前を持つ男で、本人は仲裁役を気取っている。
だが実際にはゼグマの言葉を補強するだけで、場の空気をさらに重くしているだけだ。
講堂に集められた新入生たちは、うんざりした表情で彼らを見ていた。
建設的な意見交換など望むべくもなく、ただ延々と「マナーだの偏見だの謝罪だの」と繰り返されるばかり。
後方に座っていたジェイドは、小さくため息をついた。
「……また始まったのか」
討論会──少なくともその看板に偽りはない。
だが実際に討論されているのは、ゼグマとワズシの声の大きさとしつこさだけだった。
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ある生徒が、おずおずと手を挙げた。
「……その、私は英雄叙事詩で流れたあの曲が好きでして。勇気をもらえるといいますか──」
次の瞬間、ゼグマが机を叩いて立ち上がった。
「不適切だッ!」
講堂に大声が響き、生徒がびくりと肩を震わせる。
「未成年が耳にしたらどうなる! 想像力を歪め、価値観を損なう! マナー違反も甚だしい!」
「そうそう、ゼグマ殿のおっしゃる通りですなぁ」
横からワズシがうんうんと頷く。
「叙事詩だの曲だの、空気が乱れますぞ。謝罪が先決ですなぁ」
矢継ぎ早に浴びせられる言葉に、生徒の顔はみるみる青ざめていく。
「……っ、ご、ごめんなさい。配慮が足りませんでした……」
小さな声でそう告げ、深々と頭を下げる。
だがゼグマは満足せず、さらに言葉を重ねる。
「もっとはっきり謝れ! 誠意が足りん! “自分が間違っていた”と明言しろ!」
「そうですなぁ、ここで土下座の一つもしていただければ場も丸く収まるでしょうに」
生徒は唇を噛み、涙目で俯いた。
その光景に、講堂全体がしんと静まり返る。
ジェイドは頭をかきながら、ゆっくりと立ち上がった。
「……なぁ、ちょっといいか」
講堂の空気は、謝罪の言葉でいったん静まり返っていた。
だがゼグマは、それでも満足しなかった。
「もっとはっきり謝れ! 誠意が足りん! “自分が間違っていた”と明言しろ!」
「そうですなぁ、ここで土下座の一つもしていただければ場も丸く収まるでしょうに」
ワズシも相槌を打ちながら、さらに場を重苦しくする。
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ジェイドは一歩だけ前に出て、静かに言った。
「……お前らさ。本人はもう“配慮が足りなかった”って認めてる。謝罪もした。
それ以上、何を望むんだ? 屈服か? 土下座か? そこまでしないと気が済まないのか?」
ゼグマが言葉を詰まらせる。
「そ、それは……!」
ワズシも慌てて口を挟む。
「ま、まぁまぁ! しかしですなぁ──」
ジェイドの瞳が鋭く細められる。
「謝罪を求めるなら一度で足りる。二度、三度と掘り返すのは謝罪じゃない。支配だ。
──“自分が正しい”と証明したいだけ。それを偏見って言うんだ」
その言葉に、講堂の空気が一変した。
観衆の間から「確かに」「言えてる」という声が漏れ、笑いと同意が混じったざわめきが広がる。
アイリスが小さく呟いた。
「……論理も形も、崩れてしまいましたね」
ゼグマは赤面し、ワズシは口をぱくぱくさせるだけ。
二人の威勢は完全に削がれ、ただ冷たい視線に晒されるばかりだった。
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講堂のざわめきを切り裂くように、冷たい声が響いた。
「──ここまでだ」
壇上に進み出たのはユミナ。ロータス直属の近衛であり、立ち会い人としての権限を持つ。
「討論が討論でなくなった以上、名誉裁決で決着をつける」
ゼグマとワズシが青ざめた。
「な、名誉裁決だと!? そんな……!」
「ま、待ちたまえ! これは言葉の問題であって──」
ユミナは容赦なく宣告する。
「剣を取れ。潔白を示すなら行動で示せ」
しぶしぶ武器を取る二人。観衆は固唾をのんで見守った。
だが結果はあまりにもあっけなかった。
ゼグマが一合打ち込むや否や、ジェイドの一振りで木剣は吹き飛ばされ、体勢ごと転がされる。
「ひ、ひぃっ……!」
続いてワズシ。足がもつれて、まともに構えることすらできない。
「ま、ま、待ち……ぐえっ!」
自分の足でつまずき、派手に床へ転倒。
講堂にどっと笑いが広がる。
「なんだあれ……」「寿司がひっくり返ったみたいだな」
アイリスが小さく呟いた。
「……ワズシ様、もう“ネタ切れ”です」
その一言で爆笑は決定的なものとなった。
ゼグマとワズシは顔を真っ赤にしながら、二度と立ち上がることができなかった。
【あとがき】
はい、完全にギャグ回でした。
実はこれ、オンラインチャットで本当にあったやりとりをネタにした復讐編です。
あまりに腹立ったので、そのまま作品に落とし込みました(笑)
半年ほど経過したら、証拠スクショも黒塗り加工して公開予定です。
「本当にあった話」がどこまで笑いに昇華できるか──
それもまた、この作品の楽しみ方のひとつかもしれません。
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