★【第23話】約束の刃、交わる影(心音システムリライトVer)★
──“立つ”ということは、孤独の中で己と向き合うこと。
階級、血統、未来すら決められたこの国で──
少年はただ“勝ちたい”と願った。
挑発、罵倒、優越──
それらすべてを剣と心で越えていく。
これは、“選ばれなかった者”が、選ばれる者たちに挑む物語。
そして今、彼の内なる鼓動が静寂を破り──
世界のシステムに抗う、たった一振りの刃となる。
──静寂が、闘技場を包んでいた。
魔力の余波は、地を這うように漂い、焦げた空気が肺を焼く。
割れた地面。砕けた石片。全てが「何かが起きた」ことを物語っていた。
ジェイドは膝をつきかけたまま、肩で息をしていた。
視界はぼやけ、耳鳴りがひどい。
それでも、その瞳だけは──まっすぐに、ただ前を向いていた。
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「……下層の分際が、僕を……!」
ライナルト=グロースの声が、苦々しさと混乱を孕み、張り詰めた空気に響く。
彼の顔には、初めて“焦り”がにじんでいた。
観客席に、奇妙な沈黙が落ちる。
──あの少年は、何をしたのか?
まだ、誰も答えを持たない。
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*【外界サポート:観客・嫁陣営】*
アイリスが胸元の魔石を握りしめ、声を震わせる。
「ジェイド様……お願い……負けないで……!」
実況席では、エス=ミュールが口元に指を当て、興奮混じりの声で呟く。
「うわ、これ……やばいんじゃないの? マジで“開花”してる……」
ユミナの視線が鋭く光る。
「彼は……魔力を“放った”だけじゃない。制御は未熟。でも……」
その言葉に、場の空気がわずかに震えた。
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*【心音システム 作動──】*
──ドクン。
……ドクン……ドクン……。
「対象術式《封氷牙》解析開始──」
「……解析完了」
「対応コード発行──**霧散**」
冷たい、無機質な声がジェイドの内的世界に響く。
(……なんだ、この声は……俺は……)
「認証完了。対象、ライナルト=グロース」
「反詠唱を実行してください──」
ジェイドは目を見開いた。
冷たく、凍えるような空気の中で、心臓の鼓動だけがやけに大きく響く。
──ドクン…ドクン…ドクン……!
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「我が血に刻まれし凍光の誓い──」
外界。ライナルトの詠唱が空間を震わせる。
「幾星霜を越えし声が、今も響く」
足元の魔法陣が青白い光を放ち、冷気が地を這う。
「絶対零度の刃よ──」
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*【反詠唱発動】*
ジェイドの瞳が燃える。
「……砕けろ」
「燃えろ、紅き衝動──全てを貫け!」
**応えろ、《紅炎牙・未式ブラッド・フェイザー》!!**
紅の光がほとばしり、ライナルトの**《封氷牙》**を真っ向から断ち切った。
氷の空間が砕け散り、宙に舞った結晶が陽光にきらめく。
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*【外界サポート:観客・嫁陣営】*
「ジェイド様……!」
アイリスの叫びが届くかのように、赤い光が一閃する。
実況席のエスが目を見開き、叫んだ。
「空間魔法を“切った”…!? 下層の子供が、どうして──」
ユミナが息を呑む。
「……勝者、ジェイド=レオンハルト」
その声は、審問庁にも観客にも確かに届いていた。
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*【審問庁・ヴィオラ視点】*
「No.134、覚醒反応、段階Ⅱ──」
ペン先がカチリと鳴る音だけが、冷たい記録室に響く。
「記録、継続」
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*【次回予告】*
──これは、ただの“勝利”ではない。
少年の覚醒に呼応し、学院という舞台は新たな火種を迎え入れる。
階級、派閥、陰謀──すべてが動き出す。
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*【次回予告】*
──これは、ただの“勝利”ではない。
少年の覚醒に呼応し、学院という舞台は新たな火種を迎え入れる。
階級、派閥、陰謀──すべてが動き出す。
【後書き(リライトVer)】*
この回は**外界の声援と内界の心音システム**が交差する覚醒回です。
ジェイドが孤独な心音領域で咆哮し、外界ではアイリス達が祈りで支える。
その二層構造が、より深い没入感を与えるよう意識しました。
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