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第84話 解放の時

 ユークは封印の中心へと歩みを進めた。刻印の書が淡く輝き、彼の手の中で脈打つように鼓動する。


「本当に……封印を解けるのね?」

 セリナが不安そうに尋ねる。


「大丈夫だ」

 ユークは静かに頷いた。


 精神世界での試練を乗り越えた今、彼は確信している。万能適応はさらに進化し、あらゆる魔法・術式の本質を瞬時に理解し、それを操る力を得た。


「行くぞ」


 ユークは刻印の書を高く掲げる。


 瞬間、書のページがひとりでに開き、無数の魔法陣が空間に浮かび上がった。それは封印を構成する術式と完璧に一致し、相互に共鳴する。


「っ……! すごい……!」

 セリナが息を呑む。


 封印の光が激しく揺れ、ユークの掌に吸い込まれていく。


「これは……封印の力を取り込んでいるのか?」

 グランが驚愕する。


 ユークは眉を寄せる。


(これは……ただ封印を解くだけじゃない。術式そのものを理解し、俺の力に変換している……!)


 やがて、最後の魔法陣が消滅しーー


 ーーゴゴゴゴゴ……


 大地が揺れ、封印されていた扉が軋む音を立てて開き始めた。


「……やった! ついに封印が……!」


 セリナが歓喜するが、次の瞬間ーー


 ヒュンッ!!


 突如、漆黒の刃がユークの頬をかすめた。


「っ!?」


 ユークはすぐに飛び退く。


 開かれた扉の向こうから、異様な気配が溢れ出していた。


「まさか……!」


 グランが身構える。


 扉の奥から現れたのは、黒いローブをまとった男だった。その目は深淵の闇を宿し、静かにユークを見つめている。


「……ようやく解かれたか。この忌々しい封印が」


 その声は低く、まるで地の底から響いてくるかのようだった。


 ユークは剣を抜き、警戒する。


「お前は……何者だ?」


 男はわずかに笑みを浮かべ、静かに答えた。


「私は“災厄の継承者”……そして、お前にとって最大の試練となる者だ」


 空間が歪み、黒い瘴気が辺りを覆っていくーー。


読んでいただきありがとうごさいます!

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