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六十四話「ネクスト暗殺者ヒント!」

前回のあらすじ


メンタルブレイカー!!



、、。


揺れる船が、、止まった感じがした。

ガシャンという音が次の瞬間には聞こえる、どうやら目的地にはついたようだ。


『霧江入り口』からプロイシー本国の入り口、『海正道』へ向かうことが本来の目的だった。

あの寄り道がなければもしかしたら私も心を痛める羽目にならなかったのではないかと?っと思ってしまう。


『海正道』は海中の中に存在する空気で満たされた幻想的な道だ、ガラスのように磨かれた光沢を放つ道は全体に泡の膜が貼られており、他の種族でも十分に利用可能なルートとして、また海の中の神殿と勘違いするほどに美しいと言われる。


他種族に積極性を見せないプロイシーの中ではある種異質とも取れるこの道だが、実際のところ魔法国が海中して整備を担当したとも言われている、この船と本質的には似ているのかもしれない。


 「、、。」


しかし私はそれを見る資格も見る気力もない。


心は完全に上の空で、目頭にはヒリヒリと涙の跡が伝わってくる。思わず指で取りたくなるような感覚で不愉快だが、それを行う気力も私には湧いてこない。


全てがどうでも良くなって、全てがまるで無意味で、全てが、夏の夜の夢だったかのように、、私の心は虚空へ置いていかれた。


この感覚は、本当に懐かしいと思う。

『あの人』を亡くした瞬間もこのような感覚で心が覆われ、まるで暗闇に体全身が浸らせられているような感覚だった。


泣いた涙も数知れず、その暗闇に飲まれ。どこまでいってもその暗黒が私の半身をまるでそうであったように粘着させ…もし体を起き上がらせようというのなら体の半分は確実にその暗黒への生贄となる。


進むことも、逃げることも、果てには動くことも叶わない。


そんな金縛りよりもタチの悪い状態に昔は、今はなっている。



 そんな浸りきった感情を前に私の耳は一つの足音を感じ取っていた。


 木製の床でありながらその足音はまるで金属を叩いているかのような音であった。音はなんの迷いもなく大きくなっていく、こちらに近づいてきているということだ。


 「、、。」


それに対して私はなんの反応も示さない、何か反応をしたところで次の瞬間は変わらない、いやまずその気力が最初から無い。


私の沈みきった心にはー


 [ガシッ!ガバ。]


私は胸ぐらを掴まれ今までに味わったことのないくらいの引力で上半身を上に持ち上げられた。


 考えている途中のことを無理矢理にでも引き剥がされ、その者の顔を見る。


真顔だった。それが目と鼻の先にあり私は恐ろしいと感じたのだろう、いくら見知った顔であったとしても彼女が私にこんな顔を見せたのは初めてのはずだ、もっとも自分の記憶が正確だったらという前提条件が必ず入るのだが…


そして感想と同時に私は彼女という存在を意識した。


 (レナ…様)


 「──あなたは…何をしてるの?。」


その者は眉ひとつ動かぬ顔でそう言った。何も考えていない私の頭は先ほどの言い争いについて謝罪してこいとでもいうのだろうか?っと大人気なく達観的だった。


 「、、。。」


私は傍観者が如く何も言わない、この人が問いを出しているのに対して私は不明確な答えを書くわけにはいかない。いや言い訳だ、正確には本当にそんな気が起きないだけであり、ただただ面倒くさいからだ、


 「チッ、何か言いなさいよ。」


その人の顔は変わりまるで全てに納得していないようだった。理不尽をこれでもかと詰め込まれ、なおかつそんな中で息をせず、ただただ従っているだけの人形のような、いやもう少し違う。


そんな人形になってしまった全ての境遇をまるで今からでもその鉄の拳で潰したい。そんな意思を人間味のある赤くなった目から読み取れる。


 「あんた、紅月の何を知ってるの?。」


その言葉は、気がない私に対してなぜか特攻を持ったように刺さりきった。ほっといたら取れるであろう、という鱗片すら見せないその傷、その言葉は私の心を動かす理由、根拠の一つとなった。


 「私は…」


口が開いた、まるで熱い鍋に触れたら反射的に離してしまうあの現象によく似ている。

しかし言葉にはなんの意味もない、これから先に続く言葉や、これから先にあるであろう意思も、何も、。


それはまるでからのないカタツムリのような、。肉がないピーマンの肉詰めのような、。もしくは私の心を具現化したようなそんな気でいっぱいになった。


そして話を続けないきゃと何かに囚われるかのように頭で考え始める。しかしその直後、


 「貴方は紅月の、結局何も知らない。」


胸ぐらを掴む力が強くなり、その人は辛辣にも私にそう言った。言葉には続きがあると、まるで想定しておらず、最初からその程度だったと早めに見切りをつけて捨てる。


捨てられる。、そんな短気と表現されてもおかしくない行動に私は妙な不順感、怒りを覚えた。


 「──何が、っ。」


私の口は感情の波に揺られながらその言葉を口にした。その人の顔は依然として変わらない、

せっかく口を開いてやったのに、これとは、、だんだん腹が立ってくるものだ。


 「─私が彼を知らないと…?。」


 「そうよ、」


 「なぜ──?」


私の落ちていた心は反攻の意思と共に、そう口にした。まるで人格がさっきとは違うような、変な高揚感が私を纏った。怒りとも読み取れるが、それとは何か根本的に違うと心の底から思う。

しかしその正体を今考えている暇はない。


 「───貴方が、アイツの従者じゃないからよ。」


 「…本気で言っています?。」


少しだまり私はそう口にした。確かに言っていることに正当性や現実性は帯びている、しかし貴方はそんなことが分かりない人間ではない、ならなぜそんなひどいことを言うのだろうか?。最後の確認と評して私は彼女に言った。


 「えぇ、もしアイツの従者なら。諦めないもの、」


 「、、。。」


おかしい口が開かない。どんな言葉で来られてもしっかり答え、自分の意思を伝えようと覚悟していた。しかし彼女は変に優しく、変に冷たくなく、まるでさっきの言葉はこの言葉を繋げるためだけに用意した虚実のような気がした。私の心の中に宿るジレンマをちょうどよく刺激されたような感覚、もう少しわかりやすく言えば想定外の弱点が自分にもあったのだとその時理解したような、感じだ。


確かに彼の従者なら決して諦めないだろう。お嬢様が私、紅月様が、誰か。そんな世界があったのなら…。

私がお嬢様に影響された。という事実を考えれば、この経緯にたどり着くのは容易だ。


彼の姿を見ていれば、彼の、、何かを諦めるような人ではないような姿を見ていれば、影響されないことはまずあり得ないだろう。


そしてそんなことを考えると、。胸の奥が死ぬほど辛くなる。


どうして、どうしてだろう?この話は事実でそれ以上でもなくて、私と紅月様の接点と言ったら、たったのそれだけなのに…。なぜ変に痛くて、心が痛くてたまらないのだろう。


 「私、は、、。」


勢いが削がれ心がまたボロボロになっていくのを感じる。

そうかも、そうかも知れない。、、私は本当は彼の何もわかっていないのかも知れない、でも、それでも。


悪あがきのように何かを求め、切り捨てられず、結局私は、、何がしたかったのか?っという結論に辿り着く。


 「……ウミさん。」


 彼女が私の名前を呼ぶ。私はその時、目から流れる液体に気がつく。さらに悲しみが心の底から込み上げてくるのを自覚する。


 あぁぁぁ、そっか。私は結局彼に影響されていて、彼の従者の一人だと思っていたのか。彼がそんなこと望んでいるかも理解していないのに、私はお嬢様の従者であるのにも関わらず、私はでしゃばったのだ。


 彼のことも理解していると、主人と従者ならそのような関係であると、心の底にある固定概念が悪さして、、。

でも実際には私は彼の従者ではない、なぜなら主人を守ると誓っていたのに、守れなくて、なおかつ確定していないのにでしゃばって諦めて。私は他人以上従者以下だった。


もし彼の従者がいたのなら、今も意思を決して失っていなかっただろう。


 あれだけ、盛大に言った分際で。最初から最後まで、間違っていたのは自分だったのだ。


 「何よ。思っていた以上に、、脆いじゃない。」


彼女は私の胸ぐらを離し頭に手を置いた。そしてそのまま胸に私の頭を預けた。


 「っ、、っ。。」


 「こっちがバカみたいじゃないのよ、、」


そのまま私はまた泣いた。

彼女の胸はとても冷たかったが、すぐに暖かくなった。

今思い出してみれば彼女の顔は最後、とても悲しそうだった。


 「落ち着いた?。」


 「はい、すみません。」


目の周りをゴシゴシと擦り、面と向かってレナ様にそう言う。

船の静けさが、変に気になった私は心を落ち着かせる時間稼ぎに質問する。


 「皆さんは?」


 「行ったわ。、私もこれからよ、」


 「、、。」


なぜレナ様は私のことを置いていかなかったのだろう。っとふと思った。


 「どうして、私を置いていかなかったのか?みたいな顔しているわね、」


また見透かされた。っと思っていても仕方ないので素直に返事をしよう。


 「はい。」


 「簡単よ、アリスに私がウミさんを連れてから行くって言った。ただそれだけよ、」


それだけ言うとレナ様は歩き始めた。私の頭の中にはお嬢様の姿がスッと写り、異様に気になった。


 「お嬢様は、、?。」


 「さぁ?、私の専門外よ。でもまぁ従者が主人を諭すのもありきたりなんじゃないかしら?。」


本当に、この方は。少し笑いが溢れてしまう、一体どこまで織り込み済みだったのだろうか?、もしも私で詰んでいたらどうなっていたのだろう?、そんな適当なことを頭で考えながら私はレナ様を追い越して部屋へ向かう。記憶が正しければ、お嬢様は部屋に向かって進んでいったはずだ。


そしてあのお嬢様のことだ、沈んでいるときは私や紅月様でなければテコでも動かない。それすなわち


 (まだ部屋の中にいるはず。)


そう確信して迷わず向かう。部屋への道はすでに覚えている、お嬢様が気持ち悪くなって一度運んだというインパクトが強い記憶はそうそう忘れられるものではない、涙の跡が走っている時の風にあたりヒリヒリとしている中、私は長くも短くとも取れる時間で部屋へ到着した。


 「はぁはぁ。」


息を切らし、木製の扉の前で言葉を考える。落ち着くまもなく私は言葉を口にする。


 「、お嬢様。、聞こえていますか?」


扉の向こうからは何も聞こえてこない、息を切らしていて、音に集中できていないのが原因かも知れない。しかしそんなことを気にする自分ではない、ただただいまは言葉を扉に話しつずけよう。


 「今から紅月様を迎えに行きます。」


そう口にするとゴソっという音が扉の向こう側から聞こえてきた。心のどこかにあった少しの不安が取り除かれたことを胸の奥で感じ、私は言葉を続ける。


 「私もチャンスがあるなら諦めたくないと思いまして。」


扉から帰ってくるのはまたもや静かなものとなっていた。


 「プロイシーに行けば、もしかしたら紅月様がいるかっも知れないので。」


…。


 『ウミも、行くの?。』


扉の向こう側から弱々しくも、意思のこもった言葉が飛んでくる。

私はその言葉に耳を傾けながら言葉の意味を考えた。


 『、、なんで私より先に行くの…?。』


扉の向こうでお嬢様がどんな顔をしているか、想像することはいくらでもできる。が、いずれもいつものお嬢様からイメージすることが困難な姿であることには変わりは無かった。

弱々しく、元気なイメージが一切湧かない。従者である私だから言葉だけでそれだけわかるのだ、、


 「お嬢様、、」


 『。私が悪いの?、私がいつもわがままで、騒がしくて。不甲斐ないから。』


、しっかり自覚していたのですね。っと言うのは御法度だな、っと私は思う。そして今の気持ちをお嬢様に伝える。


 「私はお嬢様が、そんな人だと思っていません。お嬢様は確かに少し自重して欲しいところはあります、ですが心の底はとても優しい方で、新しいことになんでも挑戦して、私にとって眩しい方だと思っています。」


 『、私はそんなに強い人じゃない、、!。』


静かで、それでいて悔しそうで、背負いきれない責任の悲痛をそのまま言葉にした声が向こう側から聞こえた。

続けて言う言葉に私は息を呑みながらしっかりと聞き入れる。


 『私の周りにいる人、みんな強くて、何かを乗り越えていて、なのに私だけ。私だけ置いてけぼり、』


 『あの寒い日も、、私は、お兄様に会わなかったら。今頃こんなふうにずっとこもって、目を背けて、弱くて、みんなが知っているような人じゃなかった。』


 「、、。」


 『なんで頑張ったんだろ、。』


 「、、もう一度言います。私はお嬢様をとても尊敬しています、故に。」


私は扉に背を向けて、船の出口に向かって歩き始めた。


 「待っています、私が愛してやまないお嬢様を。」


私は従者だ。できることもすることにも主人を信じなくては何も始まらない、、だから待つのだ。例えその選択が正解じゃなくても、これはルルカお嬢様のメイドウミが選んだ選択。

主人を待つことで、助ける選択を選んだメイドの決意だ。


 

 「、きたわね。」


 「お待たせしました。」


 「いいわよ、私が好きで待っていたんですから。」


私はレナ様と一回目を合わせて頷く。足並みを揃えて歩き始め、そのスピードを少しずつ上げる。


 「行きます!。」


私は走り出し、隣のレナ様も人型から形を変え飛行機のような形になる。一瞬ノータイムの変形に驚きつつも、私は足に力を入れ続ける。


 「乗って!。」


スピードを合わせるレナ様の上に乗る。小舟に乗った時のような少しの揺れが私の体に響く、しっかり体を低くして上手く乗れたことをレナ様が確認すると、一気にスピードをあげ真っ直ぐ直進する。


 「掴まっててねウミさん!」


 [バヒュンー!]


服が体に張り付き、強風が体をこわばらさせる。、走るのとは違う圧倒的風圧が体を全面的に押し出そうとしてくる。掴まっている手が一瞬離れるかと思うほどの速さ、私は思った絶対これは生身の人間が乗るタイプのものではないと、、


そしてスピードに慣れてきたところで目を開ける、するとそこには幻想的な世界が広がっていた。


 (海正道だ。)


それは水中トンネルという言葉だけでは表現できないほどに美しかった。現実では決してお目にかかれない光景、水中の中を通っているのではない、しかし気分は水中を突っ切っているような感覚。風をきり、水分を含んだ空気を肌で感じながら心地がいい感じが続く。海の神殿と話されても差し支えないほどに、


そして私はその光景を眺めながら、道を進んでいく。

どこまで続いているか見当がつかないが、おそらくこのペースならば数分あれば辿り着けるだろう。


 「ん?」


 「どうしました?。」


 「いや、なんか変だと思って。」


レナ様はそう言うと少しスピードをあげた。私は前後左右を確認して、レナ様の嫌な感覚に警戒を向ける。


 「、、ウミさん。」


 「は、はい。」


 「飛んで、。」


え?。


 [ボガァァァァーーーーンッッッッ!!]


、レナ様がそういった次の瞬間目の前は炎の渦で包まれた。私は世界が回った感じがした、体が空中に放り投げられ、そして地面へと激突した。


 「ぐっ!!。」


ゴロゴロと転がりながら整えられた、地面を滑る、、。そして反射的に受け身を取り、体制を整える。すると、ボンボンボンッっとすぐ近くで連鎖的な爆発が起きた。いずれも自身に当たることはなかったが、混乱した状況の中これは仕組まれていることに気がついた。


 「ちぃっ!」


レナ様はバランスを崩した状態で、爆発から押し出され、地面を急ブレーキかのように削る音とともに着地した。


 「レナ様!。」


 「くそっ、やられたわ。」


悔しそうな声と共にレナ様は顔を武装で本格的に覆う。つまりは爆発だけで終わらないということだ、、


 「ほぉう。こっちは対爆機構をつけてきたか、それにしても的外れがいいところだ。」


 「攻撃命令を出したのはアンタなんだからぁ〜、こっちのせいにすんのやめてくんない?。」


爆発によって渦巻いていた煙から人影が現れ、次には煙を抜けてこちらに姿を現した。


 「アラハバキ…!。」


 「、、。」


アラハバキ、それとネルと呼ばれていた二人が今ここで現れた。

一体何をしに、っと思ったが暗殺者がみすみす何かを逃すような真似はしない。、しかし口封じではダメだったのか、、?っと他にも疑問が浮かぶ、。


 「ごめんなさい、レーダーに引っ掛からなかったわ。」


レナ様が小声でこちらに言ってきた。私はその言葉を聞くとネルと呼ばれていた金髪少女の携帯端末を見た。

おそらくあれの影響だろう、不可視の攻撃、トラップ。高度のジャミングがあったとしてもおかしくはない、、


 「何しにきたのよ、話じゃ紅月を倒したらしいじゃない?。まだ何かあるわけ?。」


レナ様がガシャンっと背部に搭載されていたガトリングをスライドし装備。戦闘体制になりつつも発砲は抑えているようだった、


 「なに、もう一人殺す奴を思い出しただけだ。ここにはいないがな、」


ここにはいない、つまり目標は


 (お嬢様?!)


どうしてお嬢様まで!っと言おうと思ったが、落ち着け私。二の舞になるな、慎重に物事を見極めて、今はこいつらを止めなければ。


腕に力を入れ、戦闘体制を強くする。


 「にしてもまさか引っかかるなんてねー、あの鉄血のなんとかよりよっぽど頭が悪いのかもw、、」


…。あっそれは地雷です。


 「っ、へぇ〜。それはご大層な比較じゃないノ。いいわ確実に潰してあげる。」


怒りが溢れ出ないように抑えていながら怒りが溢れ出ているレナ様が鋼鉄の脚をガンッと地面に叩きつけ言った。


レナ様は紅月様との比較をコンプレックスに持っている。理由はライバルだからというのも含むでしょう、しかし根本性では『あの』紅月様と比較するということが本人にとってどれだけの屈辱なのか、、私には正確に測る術がないのと同時にその深すぎる怒りに心底畏れを感じるというものだ。


絶対にレナ様の前で紅月様を比べたりしないようにしよう。っと私の無意識の中でルールが確立された瞬間だった。


 「ウミさん、あの金髪はやらせてちょうだい。いややるわ、アラハバキをお願い。」


そして今の私に「格上と戦えっていうんですか?!無茶ですよ!!」とはいう度胸もなかった。理由は前述した通りレナ様の殺気が並大抵のものではないからだ。


 「はい。なるべく早く加勢してきてください、、」


 「了解ぃーっ!!」


レナ様はスラスターを吹かせ、ネルに向けて一直線に飛んでいく。瞬きをする間にはレナ様とネルの距離は目と鼻の先程度になっていた。


 「ちよっーっ!?ぎゃぁ!!!」


そしてその推力のままに押し出し、向こう側へと飛んでいった。わずが3秒程度の出来事である。


 「ハァ、どうしてアイツは、、。」


アラハバキは何かに頭を悩ませられるように頭に手を置いた。随分の余裕そうな見た目につい力が入ってしまい、私は飛び出す。


 「おっと、危ねぇ。」


 [ドグゥン!!]


ガラスのように綺麗な地面にアラハバキを狙った私の拳が正面から激突する。

ガラスは拳を中心にヒビを出し、細かい傷と連動するかの如く、広がっていった。


しかし崩れる気配はない、さすがといったところ。


 「速戦即決、っていうのは分かるんですがねぇ。不意打ちってのはないんじゃないですか?。」


 「アラハバキ、あなたがそれを言いますか?。」


私は拳を地面からゆっくりあげ、構えを作った。ひねくれた言葉使いが気に入らないのか、はたまたつもりに積もった恨みなのか、心の中に埋もれていた一時の怒りが、もしくはそれに近いものが再熱された気がする。


今度こそは、


 「今度こそ、あなたを倒します。」


 「出たな、、!。来い!!」


私の拳が体と同化しているとでもいうべきか、考えて1秒も立たず放った拳はアラハバキの斧に真正面から直撃を見せた。


受け止められつつも、距離を取ろうとするアラハバキにもう片方の拳をぶつけに行く。


ガン!っと初撃よりも威力が増している攻撃が、受けとめられる。


 アラハバキはその攻撃を受け切ると、ニッと何かを思いついたかのように笑い、ガードに回していた斧を自分の腕で払い、感性を乗せつつ私へ振り下ろす。


 当たったらタダでは済まなさそうな斧に私は真横から蹴りを入れ、軌道をずらす。

髪の毛が紙一重で切られ、私の緊張感はさらに増す。後ろに構えていた拳を足が地面につく瞬間に送り出す。


 「甘ェ!」


 「ッ!」


私の拳はもう片方の手に掴まれ、向こう側に引き摺り込まれる。視界が一直線になる中、私は斧が次の瞬間には飛んでくると予感した。


地面に刺さった音はない、逆に持ち上がった音もないただの憶測だが、明確な殺意ともいうべきものが私の神経を無意識に刺激させた。


掴まれた腕は咄嗟に技が出ない。使えるとするなら左だ、、地面に叩きつけるまでの間に1秒は最低でもかかる、相手の斧が今どの地点にあるかによるがどちらにせよ、早くしなければ私は魚市場にだされ今から尻尾を切られる魚のようになってしまうことは目に見える事実だ。


唾を飲み。私は拳に熱を灯す。


 「『炎焼放裂フレイムバースト』っ!!」 


地面と拳がぶつかる直前に火花が弾け、爆発へと変わった。

目の前が白くなり、顔に熱が飛ぶ。

ひよっている暇はない、私は掴まれた手が少し緩んだことをかんじるとそれを振り解き、体制を整え。全力で回避行動を行う。


 煙を丸々かき消すような斬撃が次の瞬間には間近に飛んできた。目と鼻の先程度に近づいていた斬撃は、一瞬切られたと誤認するほど危うかった。


自分が生きていることを呼吸で必死に確認しつつ、晴れた残煙に映るアラハバキから距離をとった。


爆発の残煙が視界を遮るはずだが、おそらく手を振りきった時に位置を逆察知されたのだろう。


 (どうしたものでしょうか、隙がありません、、!。)


赤い斬撃線がノータイムで飛んでくる。切らしていた息を無理して吸い込み、避ける。相手は距離をとりつつ、斧を振り回しながらあるとあらゆる角度の斬撃を私に向けて飛ばしてくる。

おそらく近づかれたら不利と判断されたのだろう。


しかしこちらにも手段がないわけではない、


 「『炎射フレイムストライク』!!」


火炎放射のように放出される炎の渦は斬撃にも負けない程広がり、アラハバキへと打ち込む。

しかし相手は相手でこれを難なく回避、結果的に相手の追撃阻止程度にしかなってい。

が、こちらはワンテンポで発射できる、しかし相手はわざわざあの重々しい斧を振るわなくてはならないのだ、。


つまり攻撃頻度でいえばこちらが上だ、相手の攻撃がしつこいのであればその隙を与えなければいい。

しかしそうなると相手ががやる行動は一つだ、。


接近戦、そう思った時には斧を担ぎこちらへ接近するアラハバキの姿が見えた。

2〜3秒経てば攻撃圏内に入る、その前に迎え撃たなければならない、こちらに攻めの姿勢がないとわかると一方的に攻撃してくることが目に見えてわかる。


こちらも迎え撃つため、アラハバキに向かって突き進む。


 「ハァッー!!。」


相手が斧を振り上げる素振りを見せた瞬間その攻撃に合わせるように私も拳を突きつける。

普通に見れば相手はそのまま斧を振り下ろす、私の拳は斧の重しに耐えきれず切られる、っと腕を吹き飛ばしかねない、自殺行為に等しい行動であることには変わりないが、。

私には考えがあった、通常の行動でアラハバキを追い詰めることはかなり難しい、ならどうすれば一泡吹かせることができるのか、私なりに考えてみた結果がこれだ!。


 「っ放裂バースト


 「遅い!!。」


 [ボガガン!!。]


相手はまたもやチャンスをものにしたような顔をしてこちらに攻撃を仕掛けてくる。、しかしその瞬間が命取りだ。相手が振るより早く、私の攻撃はアラハバキの背後を確実に取っていた。

理由不明な爆発に驚くアラハバキは、バランスを崩して私の突きに顔を落とす、


 「なっ?!?」


 [ドバァァン!!]



まるで炎が弾け、物を破裂させたような爆発音がアラハバキを殴った拳から聞こえてくる。

アラハバキは拳の感性に身を乗せながら吹っ飛ばされ、地面に転がっていく。


 「っガァ」


 「よし!!。」


私の作戦は決まった。

最初に炎射を打っていたのはただ単に相手を誘き寄せるためだけではない、この空間上に火の粉を散布させるためだ。、私は先ほど仕組みに気づいた、アラハバキの攻撃を回避する目眩しとして『炎焼放裂フレイムバースト』を放った時、ほぼノータイムでの発動であったため、本来攻撃に転用できるレベルではなかった、それなのにも関わらず、『炎焼放裂フレイムバースト』の威力はそこまで落ちておらず、爆発具合も悪くはなかった。

そこで気づいたのだ、『炎焼放裂フレイムバースト』のチャージによって強化されるのは、基本的爆発範囲と本体から放出される直接射程距離であることを、、火の粉を爆発に変えるこの技は『炎拳フレイムフィスト』の流れを確実に組んでいる。つまり下位の攻撃との連鎖性を期待できる。


故に一つの技を思いつた。放出したまだ現存する火の粉は、『炎焼放裂フレイムバースト』の影響を受けるのではないのだろうか、?っと。


そしてたった今証明され成功した、アラハバキに微量に付着していた炎の粉は私の掛け声とともに爆発と変わり、アラハバキですら予測できないトラップとなり相手に多い一撃を喰らわせることに成功した。。


 「くそ、一体どこから、、?!。」


そしてこの攻撃はこれで終わるわけではない。


 「-『放裂バースト』。」


 [バババババボカァーン!!!!!]


空中に舞っていた火の粉一つ一つが、一斉に光だし爆発に変わる。

そこら中がまるで空襲を受けたかのように爆発の海となり、空気中にるもの全てを破壊尽くす。

無論私も巻き込まれる対象であるため、防御体制をとり。状況を確保する、、


 「とーーーりゃ!!!!。」


 [ドドド、、バガバガバ!!!!]


すぐ隣で、聞き覚えのある声が聞こえてきた。私はその方へ迷いなく走り出す。


 煙が他より開けている部分でレナ様を発見した、空中からガトリングを掃射して。目の前にいるネルに攻撃し続けていた。


 「ちょ、っと卑怯でしょソレ!!。」


 「知ったことじゃないわね!もう一度空の旅をしたいのなら手伝ってあげるけど、ッ!!」


高速移動をしながら、相手に攻撃の隙を見せず。ネルを圧倒している、


 「これも追加よ!!。」


巡航形態に変わり、高速でUターンを決めながらマイクロミサイルをネルへと放っていった。


 「くっ!ちょ。」


数多のミサイルがネルを中心に爆撃する、爆発に飲まれたネルは煙で姿が見えなくなった。防戦一方といったところか…

加勢しようにも、っと思っていた時、『炎焼放裂フレイムバースト』で起こした。煙の向こう側から音が聞こえ、私はすぐさま音が聞こえた方向にフォーカスしつつ、離れながら『炎射フレイムストライク』を撃つ。


 [シュイィィン!!!]


赤く、何物をも受け付けないような巨大な斬撃が煙を掻き切りながら現れた。放った『炎射フレイムストライク』が斬撃でちょうど分けられた時、私は応戦ではなく真っ先に回避を選択した。。


結果は正しかったようで、斬撃が通った後は地面が綺麗に削れ、泡を貫通。

海正道に水が一気に押し寄せてきた、、


 「くっ、水が。」


水の勢いは止まるところを知らない、しかしまるでバケツに穴が空いたような感じなのでこの街道を覆っている泡が丸々なくなったわけではなかった。

そこが唯一の幸いであると同時に、アラハバキの攻撃の威力を体感した感じだ。


 「はぁ〜、、。」


アラハバキは全身爆発の跡だらけであり、真っ黒の服には識別可能なくらいの焦げが目立っていた。


 「面倒なことをしてくれたなぁメイド。いいぜ、少しやる気が出てきた。」


そう言いながらアラハバキは、斧を見せてくる。斧にくくりつけてある鎖はそれぞれが意思を持ったかのように動き出し、


 「コイツを、見せてやろう。」


斧は鎖から放たれ、刃は斬撃を放った時と同じような色に変色する。黒の刃が赤に染まる時、恐怖に似た緊張感が全身を刺激する。


 (今のやつもそうでしたが、『塵掃除』が発生しなかった。つまりはあの斬撃はおそらくただの斬撃ではない。)


※『塵掃除』、遠距離攻撃が無力化される。遠隔攻撃が無力化されるわけではないので注意


まるで今から化け物と戦うような感覚、手加減を知らず、こちらに本物の殺気をあたりまえの如く当てててくる


 [ザッ-ドガァァァァッ!!!]


地面をわり、ガラスのような道全体には日々が一斉に広がる、一瞬地震かのように思えるその一撃は攻撃の手を出せない無敵状態のようなそんな雰囲気を纏っていた。


 ソレはまるで


 「なぜ俺がソウ呼ばれているか教えてやる。」


底が見えない正体不明アラハバキであった。



『topic』


・アラハバキと呼ばれる所以

正体不明の神と知られるアラハバキからもじった名前。

ほとんどの情報が謎に包まれており、なおかつ神のような強さがあるとかないとかで『アキ』の二つ名となった。


正確な力を測る方法は彼が暗殺者ゆえにほぼ不可能に近い。


ちなみにネルは『ア』ラハバ『キ』でアキを伸ばした名前だと思っている。

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