六十三話「沼れた『世界』」
前回のあらすじ
『霧江の入り口』を占拠したウミさんたちは『水純のサファイヤ』を入手、船の取り付けが完了し、いよいよ大海原へ出発する。
霧江の入り口を出航して、私たちは船に揺れ揺られながらプロイシーの方向へ移動していた。
船での旅は意外に快適で…
「う、うおぇ〜。」
…『水純のサファイヤ』の影響か、普通では海の足場として存在しておる『泥』も、船の周りだけは浄化状態になっており、何一つ障害がないような快適な船の旅を、、
「うっ、。ぉぉぉ。」
となっているはずですが。
「お嬢様、大丈夫ですか?。」
「大じょばな、、ウップ。」
お嬢様の顔色は真っ青になっており、口に手を当ててリバースを防ごうとしている。
はい、船酔いです。
「最悪、海にリバースしてもいいわよ。」
「無理、羞恥心で、、。ウッ!!。」
そしてそのまま、お嬢様は規制のかかった虹のエフェクトを口から出しながら海にリバースした。私たちはお嬢様を責めることなんてできなかった、これからも続いていく船旅にただ耐えてほしいっと願い込めつつ、お嬢様を労り介護した。
お嬢様の具合は悪くなる一方であったため、一旦船内へ戻り、お嬢様を休める場所に移動した。
「酔い止めほしぃ〜。」
長椅子に横になったお嬢様は依然として顔色は悪く、そう呟いた。
「ルルカって乗り物だめなんだっけ?、」
レナ様が心配そうな声で私に問いかけてきた。
「いえ、基本的に大丈夫です。車の中で本を読む程度には、、」
「じゃあ、完全に船がダメってことか、。多分なったのがこれが初めてでしょうね。」
お嬢様が船酔いするとは思わなかった。車の中で何をしていても基本的に酔うことがないお嬢様を見ているとなんでも大丈夫に見えてしまうほどに、、
「うぅ。」
しかし現実は船酔いでダウンしたお嬢様が椅子に横になっている。意識せずとも何かしてあげたいという気持ちでいっぱいになっていく。
「ルルカには少し休んでもらいましょう。今の私たちには何もできないようだし。」
「そうですね。」
「ウミさん、少し話しましょう、情報交換がしたいわ。」
そう言いながら、レナ様はお嬢様を後にして部屋を出た。私も続けて部屋を出ようとするが、お嬢様のことが気がかりになり一旦足を止める、、
「ウミ、行ってきていいよ。ぅっ。」
お嬢様からそう言われてはいくしかない。私は心配になる気持ちを一旦飲み込み部屋を出て、レナ様の後を追った。
「さて、アイツみたいな気まずい雰囲気のまま会話を始めるのは好きじゃないから、テキパキいくわよ。」
「はい。」
「まず、ルルカから大雑把に情報はもらったわ、紅月が泥の海に落っこちたこと、アンタたちがなぜここにきたのかってこと、どう助けようとしているかってこと、とか。まぁそんなところ、」
「はい。」
「で、質問いくわよ。、まず暗殺者について、、どこまで知ってる?。」
私は襲ってきた暗殺者について簡潔にまとめながらも情報を渡した。私が話を始め、質問の答えとして終わりかけてきた頃、レナ様の顔は間違いなく険しくなっていた。
「なるほど、依頼主は分からずじまい、そして『アラハバキ』か。」
レナは悩むように、目を細め何かを考えている。
「なぜ紅月様を暗殺しようとしたのですかね、?。」
私はレナ様の意見を聞こうと質問する。
「そうね。まぁあるところにはオートマタが日の目を見るのを嫌う連中がいるってところじゃないかしら?。」
「…なるほど。」
私は少し残念な気持ちになりながらレナ様の言葉を受け取った。
【SAMONN】内における種族間でのいざこざは珍しい話ではない、オートマタであってもそれは例外ではなく起こることである。
しかしプレイヤーである紅月様を暗殺して一体なんのメリットがあるのだろうか?
「気にする必要はないわ、馬頭卯らしい話でもないでしょ?誰かが誰かを勝手に恨むなんて、、」
レナ様は少し悲しそうな声でそういった。まるでそれは仕方のない自然災害を目にしてしまった、察しがいい女性を相手にしている気分っだった。
「、それはそうですけど。やっぱり信じたくはないですね。」
私はその納得したような顔が本心でないことを知っている。レナ様は確かに物分かり自体はいいが、何かに臆するような人ではない…故に私はそお意見を丸み飲み込むのではなく、あえて受け流すかのように言葉を話す。
「、湿っぽくなったわね、次の質問よウミさんはこの泥についてどう思う?。」
「どう?ですか??。」
「えぇ、あなたの率直な感想を聞かせてちょうだい、ウミさん。」
もちろんレナ様が言っている言葉が理解できないわけではない、ただどういうふうな捉え方として見ていいのか、っと少し疑問に思っただけだ。
例えば人によってはこの『泥』を自然災害と捉える、台風や地震のようにいつかは過ぎるものという扱いをする
そしてある人はこれをゲームの新しいイベントだと捉える。【SAMONN】の他のゲームにはないリアリティ溢れた世界観であればこの悔いの現象はプレイヤーにとっては新鮮に違いないだろう。
そして、ある人は
「私はイレギュラーだと捉えますね。」
【SAMONN】はゲームの進行、形成をプレイヤー側に完全に委ねている。今存在する大国もほとんどはリリース当初、そこまで栄えている場所ではなかった。故に今の【SAMONN】の地盤を築いているのはプレイヤーだ、運営は新要素を追加するだけ、しかもそれがまるでプレイヤー達の進行に合わせえるかのように実装されていく、
最初から、「ここまできたらこの要素を追加する」っとプログラムされているようにも感じとれる。
つまり何を意味するかというと【SAMONN】というゲームにどんなことが起きようとも運営からの返事はない。
まるで最初からそんなものは存在していなかったように、これは本当にあった世界であり管理者は存在しない、っと定められているような、、そんな感じだ。
そして、明らかにゲームの仕組みを超えた世界現象を総称して私たち【SAMONN】プレイヤーはそれを『イレギュラー』と呼んでいる。
【SAMONN】では様々なゲーム性を楽しむことができたり、縛りプレイ専用のゲームモードも実際に存在する。しかしそれらから群を抜いており、なおかつプレイヤーの要求範囲を逸脱した存在、それこそがイレギュラーが『イレギュラー』たる所以だ。
故に『イレギュラー』の裁定基準はかなりあやふやだ。公式からの声明を聞けない以上それを判断するのはプレイヤー達本人だ。しかし仮に『イレギュラー』が発生したと知ればおそらくそれはプレイヤー全てを持ってして迎え撃つべき存在だろう。
いわばレギオンと同じ、『世界の敵』と評される存在だ。
しかし難易度で言えばレギオンの方がはるかに戦いやすい、『イレギュラー』はレギオンのように明確な消滅目標が定まっていないため、あらゆるパターンを試しながら消す必要がある、。そして『イレギュラー』は毎回形が変わっているため、対策しようがない。
同じ『世界の敵』と認識されているとしても、こちらはまさに自然災害に近い。
レギオンが宇宙の侵略者なら、『イレギュラー』はまるでどこから来るか分からない巨大隕石のようなものだ。
「そうよね。そうなるわよね、、」
レナ様は私に背をむけ、泥に侵された海をじっと見る。
「、私はただ武器を売って、ロマンに過ごしたいのに。どうしてこうなったのかしら、、」
「、。紅月様のせいかも知れませんね。」
「かしらね、もしもの時にはアイツに責任とってもらわないと。」
レナ様がそう言いながら笑い出すと私も釣られて笑ってしまった。
紅月様ならこの現象をどうにかできるかも知れない、いや多分どうにかできるのだろう、っと確信、しそれでいてこんな状況でも何不自由なく生きているかも知れない、そんな可能性を考えてしまったら笑いが出てしまうのだ、彼には…。
「はぁ、。これから間違いなく忙しくなるわね、、」
「はい。そうですね、」
私たちは染まりきっている海を見ながらそう呟く。
そうしてしばらく経った後船は何事もなく順調に進んで行き、紅月様が落ちたポイントに到達した。ガシャンという音と共に碇は降ろされ、海の中へ沈んでいく、、私たちもこれからその海の底へ潜ると考えるとなんとも言えない気分になってくる。
「うぅ。ついたー?」
お嬢様は顔色が悪いまま甲板に来た。誰も釣れていないところを見ると体調が悪いのに一人できたということがわかる。
「お嬢様、体調が悪いのでしたら、」
「私が行かなかったら、お兄様に顔向できないでしょ?。」
お嬢様はハァっとため息をつき、そう言った。お嬢様は責任を感じている。っとそれだけ理解すると私は何も言わずに、、ただ。
「そうですね。」
っと一言言った。
「アリスから連絡よ、ずっと止まることはできないって、いいとこ10分が限界らしいわ。」
レナ様が甲板を踏む音と共にそう言いながら現れた。準備はすでに完了しているようで、先ほど見た時より装備が増強されている。
「10分ですか。」
「彼女曰く、10分以上いることは安全を保証しかねるらしいわ。」
(止まっていたら狙われるということでしょうか?。)
私は少し考える。いくら浄化装置があるとしても、海の中に潜るというのはいわば敵陣に突っ込むということと同義、電撃的に動かなくては、すぐに捕捉されると言った意味だろう。
逆に短期間でこの機能を作れたのだ、私たちはこのチャンスに感謝しなければいけない。
「、行こっか。」
お嬢様は私たちに聞こえる声で言った。それは覚悟を決めるのに十分な言葉だった、激励の言葉よりも深く、軽い言葉よりもはるかに重かった。
少しして船は碇に引き摺り込まれるように下へと潜水していった。甲板には空気の膜が張られ、海の世界が広がる、、はずだった。
実際に見えるものは濁りにの濁りきった泥水、。今からでも押し寄せてくる泥水を膜が受け止めている惨状だった、改めて思う。
ここは本当に青い海であったのだろうか?っと、そう思ってしまうくらいその海は海といえずまるで別の世界の泥水溜まり、私たちはその中に潜っている。っと解釈しても差し支えなかった。
「、、見つかるかしらね、、。」
レナ様は声を低くしてそう言う。私もそう言いたかったところだ、ここまでの視界不良を起こしていると逆に先程お嬢様に頂いた言葉が、揺らいでしまう。
上がった士気が落とされるほどの気持ち悪い感覚、それをこの海、いや泥海は体現している。
「見つけるよ絶対。」
お嬢様はレナ様の独り言に対して、はっきり返す。その目は船酔いの時には決してしなかった絶対的な目、硬い意志が一瞬にして伝わってくる。そんな目に私も、うかうかしていられないと思い不安を飲み込む。
『ドズン』
音と共に船は動きを止める。どうやら底へついたようだ、経った数秒の出来事であったのにも関わらずなぜだかとても長い思いをした気がする。それほどまでに泥の海は衝撃的であり、私たちの認識を上書きするに十分だったというわけだろう、
「いくわよ!。」
レナ様は勢いよく、泡の膜を抜けて泥水の中へと飛び込む。手から届かないくらいのところまで離れるとレナ様の姿は煙のように漂っている泥と同化した。
私たちも傍観してはいられない、後に続いて私も飛び込む。飛び込んだ先は茶色一色であり、とても観測できたものではない、しかしレナ様がいるということが彼女のライトを通して伝わる。
後ろを見たらお嬢様がバタバタしながら私の手を掴もうとしていた。私はそれを掴み、そのまま水中の重力に任せて着地する、、
(、、。)
私たちは互いに目を見合わせる。海の水が目に染みてきているのを感じていたらお嬢様が動きづらそうに杖を軽く振るう。
そうすると目には保護膜のようなものが貼られ
自然と開いた口にも空気が存在していた。
「これで目にも染みないし会話もできるよ。」
お嬢様は手本を見せるかのように私に向かってそう喋る。私は慌てて膨らませた頬から空気を抜き、軽く口でパクパクしてみる。
「、ありがとうございますお嬢様。」
考えていなかったわけじゃないが、これで水中の活動がかなり楽になるものだ。
「流石にこれくらいないとねー。」
っと言いながらお嬢様はまた魔法を使い明かりを杖先から出す。光の弾はほぼ暗闇に近かった水中を照らし気分はまるで深海探索だ。
「レナ様はあそこですね、合流しましょう。」
私はレナ様はがいるであろうライトがあちらこちらに向く方面へ指を指す。お嬢様は頷くと、歩き始め、私もそれに続いていく。
この暗闇の世界では集団行動が大事だと無意識にでもわかる、なんせ統治国内と言ってもイレギュラーだ。油断はできない。
そうしてレナ様がいる地点まで歩くとそこには何かを地面に細工をしている人影が見えた。間違いなくレナ様なのだが、何か集中している様子だった。
「何してるの?。」
「ソナーで見つからないから、地中レーダーのアンカーを刺してるところ。」
「ソ、なー?、レーダー?。」
「簡単にいえば海中レーダーで今発見できないから地中レーダーで発見しようとしているってことよ。」
レナ様がカチャっと機械を地面に取り付け、側部にある小さいボタンを押す。すると機械は地面にドズンっと何か杭を打ち込むかのような素振りを見せた。
レナ様は機械と繋がっている細い線を首に付け、目を閉じ、耳を両手で塞ぎ真剣に取り組んでいる様子だった、こちらから見ればどういうわけなのかいまだにはっきりはわからないが…
「。。。」
「、れ、レナ?」
そうお嬢様が聞いた瞬間、レナ様はしゃがみ込んでいた体を起き上がらせる。ある方向を見る、
「見つけた。」
「え?」
「いくわよ!!」
レナ様は獲物を見つけた狩人の如く、首に繋がれた細い線を少し乱暴に取り、機械を力技で抜き取りスラスターを利用して走り出した。
咄嗟の行動であったが、私たちも1秒経てばレナ様が何を見つけたかわかった。
「行きましょう。」
「うん!。」
レナ様が私たちとは違うスピードで行っている中私たちは重い体を動かし、レナ様の後を追う。見失わないようにしっかりとレナ様をフォーカスして追い続ける。
水の中では汗はかかない。通常じゃありえない口周りの熱の感覚が冷えた体との差でバグる。まるで水の中で動いているのではなくて重力がおかしい地上で動いている感覚だ。
レナ様との距離が遠いのか近いのか、彼女から見えるライトの明かりでは正確に測れない、そのためただ全速力で追い続けるしかないのだ。
しばらくの全速力の後、レナ様のライトは止まったように見えた。今の現在彼女の背中を追っている最中からか、はたまた遠すぎる故の差なのかはわからない。
しかしそれも少しの時間の後、わかることだった。レナ様との距離が近くなっていることを察し始めると私の心臓はまるで火をつけたように熱くなった。
走った熱が後から来たのではない、それとは別の動悸が私の胸を焼く。
(求めていないのに、求めている。)
ふと頭に浮かんだのはその言葉だ。?っと反応しても差し支えないその言葉の意味を私はいつの間にか理解していた。
レナ様が止まったということはそこにいるのは紅月様であるということ、しかし彼女はまるで追っている途中のものを捕まえたような感じはない。つまり…
、、そういうことなのかもしれない。そう考えるだけで熱がむせるような炎に変わっていく、情緒が今にも不安定になり壊れそう。
しかし少しの希望を込めて私は残りの数センチメートルを必死に踏み込み、進んだ。
私たちはレナ様の姿を見た。まるで何かに対してしゃがんでいるような感じだ、そこにあるものを私は知っているだろう、見たことあるだろう、だけれども不思議とレナ様の姿勢や何も言わない態度が私をそれから拒絶させる。
「レナ、、。」
お嬢様ははぁはぁっと息の切れた中レナ様にそう言った。その言葉は呼吸に紛れながら芯が通っていた、とっくに覚悟はできていたのだ、、。
レナ様は止まったまま、体を動かすそぶりを見せた。まるで何かを拾い上げるような、、しかしそれは人型を持ち上げるというよりは何か小道具を持ち上げるほど簡易的なものだった。
それに対して私は息を止めた。
「、、。」
レナ様は、ゆっくりとこちらを振り向き、手に持っているものをあらわにさせた。
「。」
そこにあったのは配線が千切れ、装甲はボロボロで水中の劣化を今にも受けながらも形をギリギリ保っていた、金属の右腕であった。
「…っ。」
私は息を吸えなくなった。中途半端に残されたその腕はまるで遺品を見せつけられているような気がしてならなかったからだ、、。
「お兄、様。」
お嬢様はその場で固まった。私は何か、何かこの時一言言えばよかった、とてもポジティブでまだ捨て切れない可能性の、考えられる言葉を全て出してでも。
しかし言えなかった。お嬢様の感情と私の心はすでに同じであり、再起動するにはあまりにも時間が必要だったからだ、、
大人であり、少しはそういうことを言えただろうと、まるで見えない壁に向かって手を叩きつけ続ける、そんなイメージが私の中で容易に構築された。
「、そろそろ時間よ。もう戻らないと、」
レナ様は大きく息を吸って、見せた腕を一旦しまった。彼女はこの状況を絶望だと思わないのだろうか、と。私は正直思った、、それは一瞬の怒りだった、まるで自分の主人が大切に扱われていないような気がしてたまらなかった。
感情のままに任せて言葉を発する。その寸前まで来た時、私は彼女の顔をやっと見たのだった。
「」
彼女はなんとも言えない顔をしていた。、まるですでに絶望を乗り切っていたかのような、それとも顔に出さず感情を無理やり押さえ込んでいるような、はたまた、食いしばった顔がまるで全てに納得ができていないことを表しているような、、絶妙な顔だった。
そんな顔を見てしまうと、怒りなんてものは些細なものとなってしまう。だってそんな顔をしていたら私は誰も怒れない…私の大人でありながら短気な性格が、まるで馬鹿みたいに見えてしまうから、、。
レナ様はそのままぎこちない足取りで来た方向へ進んで行った。私たちは二人取り残され、少し後に彼女の後を追った、、
誰も走ろうとはしなかった。気力がないのか、レナ様の場合はスラスターがオーバーヒートを起こしているのか、、今の私たちの中でそれはすでに暗黙の領海であった。
その後のことは覚えていない、ネガティブなことを考えて進んでいったらいつの間にか私は船に乗っていた。他に乗っている人は私たちを見向きもしなかった、まるでその場から消えていると誤認しているが如く。
レナ様が向こう側でアリスさんと話している様子が少し写ったりしたが、今の私にはそんなことどうでもいい。
ただ、ただ、ただ。この空っぽに空いた穴に何を入れようかとひたすら考えるだけだ…
なんとなくでしか覚えていないが、船はその後浮上して、進み始めた。船酔いでダウンしているはずであろうお嬢様は、私の腕に顔を埋めたまま動かない。
(今吐かれたら面倒だなぁ。)
上の空のような安い感情が生み出した言葉を心の中で言う。しかし彼女を離す気にはなれなかった、全てがどうでもよくなったような気がしたからだ…。
「ウミさん。」
アリスさんが私の前に立ち、名前を呼んだ。これ以上動かない体が、自然と拒絶反応でため息を出し、私の心はさらに暗くなっていく…
「なんの用ですか?」
「、もしかしたらプロイシーなら紅月さんの場所がー」
「それで?。」
私は酷い大人だ。自分の役割も忘れ、なんの罪もないアリスさんはこれから八つ当たりを開始するのだから。
「、プロイシーに、いきませー『断ります。』」
「なんで、いく必要があるんですか?。どうしてわざわざ危険を犯さないといけないのですか?。」
私はもう片方の腕で、お嬢様と自分を守るかのように腕を回した。
「」
沈黙ー。
「、。あなたにとって主人とは。なんですか?」
「…。」
「あなたにとって、主人とは守るべき存在でー!」
その言葉を聞いた瞬間、全てがどうでも良くなったように、私は立ち上がった。腕の感触を気にする必要はもうないと心に勢いに躍動に乗った。
「わかったように話さないでください!あなたに何がわかるんですかっ!!」
私は目の前のアリスさんへそう怒鳴った。奥にいる他の乗組員のことを眼中に入れず、思いついた感情の言葉を続ける。
「いきなり!主人について、、なんの回答を待っているんですか?!」
「っ、私は!」
反発するアリスさんに私の感情はさらに加速する。
「私は!紅月様のことが心配で!紅月様のために協力したんです!!。それでいいじゃないですか!それなのに何故!望んでもない物のために命を賭けなきゃいけないんですかっ!!」
ただわがままが暴発し続ける、本来出るはずのないおかしな本音で、誰の目にもくれずに私はただただ表せない感情を吐き出し続ける。
「私は紅月様を失ったのですよ!!、生きる意味を失ったも同然です!!それなのにあなたは!!、」
「ありきたりで!必ず答えられるであろう当たり前の質問をして!!、私を説得するつもりですか?!!、あなたに、あなたに!私の何がわかるっていうんですかッッ?!!!」
「あなたに私を!、、。紅月様の何がわかるっていうんですかッ?!」
あぁ、言ってしまった。
そう思ったのは私の言葉でアリスさんが謝罪をして、その場をさり、再度椅子に座った瞬間だった。
周りから聞こえる小声はまるで耳に届かない、どうせいっていることが同じでありきたりで、馬鹿げているから。
そしてそんな変な状況で私は取り残された感情がいっぱいになったのか、俯きながら少し涙した。
以前誰かが「俺は泣くわけにはいかない」っといっていた気がする。
その言葉を聞いた瞬間、私も泣いてはダメだと不思議と思い、決めたことを思い出す。
誰がいっていたんですっけ?
「ぁぁぁ。、、っ。」
彼、でしたね。
揺れる船で私は啜り泣いた。一人の大人が馬鹿みたいに、泣き始めたのだ。最初は少しの涙で収まっていた手はいつの間にか水滴の数を増やし、だんだんと止まらなくなっていった。
『topic』
暗殺対象 『鉄血の死神』
可能であれば『全知の魔女』も排除




