五十七話「一難去ってまた一難」
前回のあらすじ
紅月は強い(確信)
「よっと。」
「お兄様!、大丈夫?!」
「ちょ、大丈夫だから。あんまりひっつくな、」
お嬢様は一仕事を終えた紅月様を見るなりすぐに飛んでいった。私はその風景を見ながら立ち上がり、かろうじて保たれてあった半壊状態の家から身を出した。
思わず手で隠したくなるような日が目を襲い。私は空を自然と見た、
「晴れている。」
先ほどまで霧が立ち込める暗雲だったはずだが、何かから解放されたような雰囲気が今の空には広がっている。ポチッと気のままにステータスを開くと、
「呪いが。お二人様、呪いが解かれてます。」
『え゛』
食い気味に反応した紅月様とお嬢様はステータス画面をほぼ同時に開き、真実かどうかを確認する。
「ほんとだ!やったー!。」
「これでここからも出られるってことだよな。」
「はい、間違いないかと!。」
私たちは晴れた空の下、喜んだ。とてもジメジメしていて、居るだけでテンションが下がっていた私たちにとってはこの快晴と難解であった呪いの解呪は手放しで喜べるほどに嬉しいものだった。
そこそこ喜んだ後、また呪いにかかるのはごめんなので街の出口に向かって私達は歩き始めた。
「、また呪われたらどうしよう。」
「流石に縁起でもないなそりゃ。」
「ですね。正直もう御免です。」
軽く冗談を言える程度には心も晴れており、本当にあったらどう足掻いも面倒で取り返しのつかない事実であっても今の私たちには言えた。
生きているという感じが今は最高にしている気がする。
「それにしても、かっこよかったなー。お兄様、」
「うん?、お前ルルカ見てたっけ?。」
「いや見てたよ。お兄様の勇姿を見ないとかありえないじゃん。」
「おう、そっか、、。」
お嬢様は今までしたことがないようなすごい真顔で紅月様へそう言った。それは私はもちろん紅月様が怯んでしまうくらいの可愛げのない顔だった、、
「それにしても紅月様はすごいですね。私達二人がかりで倒せなかったあの、泥?みたいな物を容易に倒すなんて。」
「そうそう!あいつ物理も聞かなきゃ魔法も効かなかったのに!。お兄様はもしかして何か秘密の機能とかあるの?。」
例えそんな物ないと次の瞬間帰ってきたとしてもあの泥を倒したことはとても大きいことだ。教えてもらうつもりなんかは3割くらいだが、是非とも倒した感想をっというぐらい聞きたくなるほど今の私達は熱かった。
「あ、あー。まぁコツがあるんだ、ああいうのは、もしかしたらオートマタとの相性が良かった勝ちかもしれないしな。だからそんな物欲しそうな目で見ないでくれ、」
「これは失礼しました。でもコツですか?、、。」
ハッと我に帰る私は改めて冷静に聞く。コツというからには何かしら狙っている物があるということ、もしこれで『勘』とか回答されたら一巻の終わりですが。
「ぁー。うん〜…勘とかか?。」
あ、これ紅月様特有のやつですね。
「えぇ、もう少し具体的なのないの?。」
「…えっとそうだな。」
ナイスお嬢様、これならまだマシな回答が聞けそうです。
「こう、そこっ!ていうか。こう、、見えるっ!とか、、。そのすっごいうまく説明できないんだけど、とにかくすごい。」
『…。』
あぁ、紅月様は教え方も下手くそでしたね。
「ま、まぁでも練度を積めば誰でもできるようになると思うぞ、」
紅月様はまるで熟練プレイヤーのような、遠慮がちな雰囲気を出しつつそう言った。それに対して私たちは唖然するしかなかった、、。
(まさか自分よりキャリアが低い人にこう言われる日が来るとは、、)
紅月様が泥を討伐して、私達はほとんど何もできなかった。それは事実なわけだが、こんなにも適当、ゲフンゲフン。
こんなにもわかりにくい説明をされたら正直どんな顔をしたらいいのかわからない、
「もういいや、お兄様の教えじゃ理解できないって。覚えておくべきだったね。」
ハァー、っとため息を吐き辛辣に言うお嬢様は側から見ればかなり酷い人のように見える。私はそんなふうに言うように育てた記憶はないのですが、、。
「うん、ほんとすまん。」
そして辛辣な評価であるのにも関わらず紅月様は申し訳なさそうな顔で答える。お嬢様に弱いというか自分の欠点をわかっているというか、なんとも紅月様らしい回答で先程の意味不明な表現がまるで幻のように見えてきた。
「まぁ、とにかく脅威は去ったのです。あとはプロイシーに向かって進むのみですよ。」
私がそう言ったタイミングでちょうど、街の門を出た。私達は過ぎ去っていく門をただじーっと見ていた、、
「よし、ループしてないよな。」
「うん、ループしてないね。」
「はい、間違いなくループしてないです。」
それを確認すると、門を過ぎたものとして真っ直ぐ前を見る。ちょっと先には街道が広がっており、本当に進んでいるのだと実感できる…
「というか、休むことなんてなかったな。」
「だね、早ければもう着いている頃だったけど。」
画面の時計をスライドさせてお嬢様はそう言った。
「では、今回はここまでにします?。」
「んー、だね。ほんとは疲れも吹っ飛ぶほどの出来事だったけど、こまめの休憩は大事だってよくいうし。」
「俺はそんなことなくどっと疲れた気しかしないんだが。」
お嬢様が休む予定であったのにも関わらず、紅月様はかなり疲労していた、まぁ戦闘面での話かもしれませんが、、あそこまで複雑な軌道をとっていたのにも関わらず『疲れた』程度で済むということは逆に言えばすごいものだ。私だったらきっとダウンしている、。
「スペックの違いじゃない?お兄様普段から運動しないし、」
お嬢様も運動してないですよね?。
「いや、。〜。そうかもな、、」
紅月様は皮肉の一つでもいいそうな雰囲気でしたが本当に疲れているからか、言おうとした言葉を濁し、めんどくさそうな顔でそう言いました。
「では、開始時間は後ほど。」
「あぁ、じゃあお先に。」
電子音がなると共に紅月様は消えていった。
「ウミ、今日の夜ご飯何?。」
「さぁ?なんでしょう。」
私はお嬢様にそう返し、少し逃げ腰でログアウトした。後のことはお分かりの通りお嬢様は喜んで夕食をお食べになりまさにご満悦の表情だった。
──次の日──
いつも通りに出勤した私はお嬢様を起こしに寝室へと向かう。ちなみに今の時間は午前7時30分、8時から紅月様とやる予定だ、。
こんなに早いのは昨日お嬢様が、「やるなら早くやろう」理論を提唱した結果に出された時間だ。もっとも本人は30分前でも起きないが、、
「お嬢様、起きてください。もうすぐ時間ですよ、」
「ぅぅん、後25分。」
(ね?、寝てるのでしょうかこれは?。)
あまりに正確な時間指定をしてきたので一瞬びっくりした、しかしそう言って危なかったことが過去にあったためここで引くわけにはいかない、私はお嬢様に再度声をかける。
「お嬢様…、。お嬢様、紅月様が直に来るようで『本当っ?!』」
[ゴッ!]
「〜〜〜〜っ、。」
「あ、ナミ。」
お嬢様が声をあげて飛び起きた瞬間、予期せぬおでこが私の顔面を直撃した。確かに嘘をついたことは悪いことだ、だからといってソレハナイデショウ。
「ご、ごめん!大丈夫だった。」
「だ、大丈夫です。むしろ因果応報とも、、」
未だ私の顔は痛い、がお嬢様に責任を押し付けるのは筋違いであるし、なんせ今回はソレハナイトしても私が悪い。
「?、とりあえずお兄様が来るんだよね。私着替えるね。」
「ぁ!、くぅ〜〜〜〜っ。」
顔を動かしただけでかなり痛い、なぜお嬢様ら痛くないのだろうと考えながら、急いでクローゼットを開け、着替え始めるお嬢様に真実を伝えて、(ちょっと怒られたりしていたら)いつのまにか時間が過ぎていた。
──【SAMONN】プロイシー国境内──
「お、二人ともおはよう。」
「おはよー。お兄様、」
「おはようございます。」
朝早かったのにも関わらず、紅月様はいつもと変わらずの様子であった。普段から早起きする生活でもしているのだろうかと疑いたくなるレベルで、、
「それじゃあ、プロイシーまであと少しなので頑張っていきましょうか。」
『おー!。』
紅月様とお嬢様は片腕をあげ、気合を入れたご様子で答えた。二人の動きがシンクロする様を見ていると本当の兄妹のようにみえる。
「ふぁぁ。」
歩き始めるとすぐにお嬢様は大きなあくびをした。
「眠そうだな。」
お嬢様の大きなあくびに反応して紅月様は状態を気にかけながら聞く、
「うーん。、、お兄様、眠くないの?。」
大丈夫と目をこす流ことで伝え、お嬢様は全く眠気を感じていないように見える紅月様に疑問を漏らした。
「まぁ、寝てないからな。」
「え゛」
「ね、寝てないのですか?。」
「まぁ、昨日は他に(プラモデルのチェック、プラモデルの塗装、食事、身支度、etc)やることあったし、それにあんまり寝るタイプじゃないしな俺。」
苦笑いしながらこちらの様子を伺う感じで紅月様は言った。その後の言葉も喋れるけど若干濁したような感じで無理やり話を終わらせた。
「それは知ってたけど、お兄様寝た方がいいよ。」
「や、そうだな。今日はしっかり夜寝るよ。」
わかっているようなわかっていないような態度でお嬢様の忠告を紅月様は流した。紅月様のことなのでしっかりわかっているつもりだと、信じたい気持ちはあるのですが、私としては今すぐにでも寝かしつけたいくらいのレベルなのでなんとも言えない気持ちになった。
ここは紅月様を信じた方が良さそうだなっと思い、口を閉じた。
それからしばらく、街道を通っていたので敵とのエンカウトはほぼ無に等しかった。順調な道のりのまま私達はついにプロイシーの目の前にまできた。
「あの丘を越えればに見えるはずだよー!」
先程目を擦っていた姿が嘘のように笑いながらお嬢様は丘のてっぺんを目指すように早歩きをし始めた。私達はその姿を追いつつも静かに達観していた、
「プロイシーって海の中に本国があるって言ってましたけど、結構浅瀬なんですか?。」
紅月様は不思議そうに私に質問してきた。おそらく、海底ではなく海に浸かっている街のような印象を抱いていると思い私は言葉を頭の中で練りながら話し出す。
「えーと、聞いた情報によると本国自体はこの地点からまだ先にあるみたいです、なので海底にあるっという認識で違いないかと、、」
「なるほど、」
「でもまぁ、今回の依頼は『調査』案件で、尚且つ外部にも出せるくらいなので地上の周辺調査くらいで終わると思いますよ。たぶん」
「でしょうね。じゃなきゃ外の人に依頼なんて出しませんからね、もし潜るならあの依頼書に必須道具とか書くはずですから。」
それはそうだ、私たちが受け取った依頼書の中には海へ潜るなどの条件が書いていない、あくまで『調査』持ってきたかったらどうぞ程度なのだろう。故に今回は海に潜るための道具は持ってきていない(海で遊ぶ道具は持ってきている。)
「二人ともー!早くー!」
「お嬢様が呼んでます。いきましょうか。」
「ですね。」
私達は待っているお嬢様のために少し歩く速度を早めながら丘をどんどん登っていく。
「ここを超えたら綺麗な海なんだろうなー、」
「そこそこの長旅でしたね。」
「まぁ、これからだろ。」
それぞれ期待と感想を気持ちに私達は一斉に丘を登り切った。日の出に照らされた大地がその姿を見せる。
はずだった…、
「…。」
「…、。」
「…、、。」
そこに広がっていたのは海を埋め尽くすほどの泥で汚く、、汚染された大地であった。
──プロイシー国境内・本海岸──
『topic』
プロイシーはだんだんと『泥』の汚染が広がり、最近では地上にまで広がってきている。




