五十六話「相変わらずの紅月」
前回のあらすじ
いつのまにか閉じ込められた3人は各々の高火力技で一時抜け出す。合流を図ろうとするとウミはルルカの偽物に出会った、騙される寸前のところで本物がドロップキックで蹴り飛ばす。泥とルルカとウミとの交戦でウミは深傷を負ってしまい、死を覚悟する。
。私を最後まで守っていたお嬢様の魔法は無数の針を受け、砕けた。
次にくる光景は目を開けたくない。
抑えられていた水が一気に下流へ流れるが如く、私は無数の針の山をその身に受けるのだろう。この腕に刺さっている痛みが無数、そう考えるだけで発狂しそうになる…
今日で二回目のスロータイムだ。あの時は状況把握だけで特に何もしなかった。いや、正確には何かしようとしたが最終的にお嬢様を信じていた。
というなんともふざけた結果だ。従者が主人の重りになるなどと笑われても言い返せないほど滑稽だ。私はあの時、あの瞬間はお嬢様をただただゲームを一緒にやる友達として見ていた、きっと今と違って頭の中はそんなに争ってないだろう…メイドとしての自分を確立させるか主人の意見を聞くかという…今になって思えば私は片方しか選べないタチであった。
お嬢様がいつかの日私にいってくれた言葉は形と見方は別という理論であった。
私はメイドとして振る舞うことが正しいと考え、それに準ずるように自分を構成した、その先に地獄が待っていようとも。
それはこの振る舞いが自分最後の砦であり、自分の最大の武器であるから…。
しかし当の主人は、、そう一言で言えば変人だった。私がメイドとして接するのもなぜかと変に思い、私をまるで一人の友達のように扱う。向こうもバカではないのか、今のこの距離感を縮めようとも引き離そうとも考えていないように、私たちの毎日は進んで行った。
そのことがどうしても私を狂わした。どちらか一つしか、いや。絶対の一しか選べない私にお嬢様は選択肢を与える…
(なんでそんなことするんですか?!ッ)
っと怒鳴りたい気持ちになった。私に残された道は「メイドになって従えるべき主人に使えること、。」そのためだけに自分を作ったのだ、絶対君主のメイドであるナミを。
お嬢様は主人だ、主人の言うことは守らなければいけない、それがいかなる理由であっても、たとえ自分の身を四肢切断の勢いであったとしても
《しかしあなたはどうしてそうなのですか?。》
主人なら命令してください、私に。
友達など、たかが人間関係の一環、世界に順応するための一つの処世術。
なのに、どうして…、。
私はメイドが好きだ。私の『メイド』は天職であり、天命であり、今まで努力してきた最高峰だ。、、なのに
(今こうして苦しまなければならないのですか?!)
私はあなたが命令を下さなかったから、壊れたのです。責任をとってください、私にあり方を示してください、幼いあなたにこんな願いを押し付け、こんなエゴまみれなメイドになってしまって、ごめんなさい。
でもそうじゃないと、私は私を壊さないといけない。
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!!!
そんなのいやだ!!もう一回壊すなんていやだ!!
あの苦しみを味わうなんていやだ!!。
(主人に残されたメイドは、、)
ねぇ!助けて。なんで誰も助けてくれないの?!
なんで誰も私の苦しみを知ってくれないの?!
なんで…なんでみんなそんなに自分を見つけられるの?。
いやだ、置いていかないでよ、、。
(主人を恨んでしまうほどに、、)
私だけひとりぼっちなんて、いやだ。仮初の私のままで終わるなんていやだ!!
いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
(重く、苦しく、辛く、そしておかしくなってしまう。なぜなら『メイド』という形だから。)
…、。なんで誰も命令してくれないの?私がこの時代の作り物だから?。私が本心を話さなかったから?誰も私の気持ちを知ろうとしたくなかったから?。
。。。
(でも、いいや、この針が落ちたら本当に終わりだ。変に壊れた自分のまま生きるより、何かケジメがあれば、ちょっとは。ましかな?。)
無気力になった、この一瞬で考えることが多すぎる。気づいた時には針は目の前だし、今度のスロータイムも、また何もできなかった。
こんなこと考えたってどうせ数秒後には忘れて飛び起きてるし、。
(【SAMONN】の死って、現実と何が違うんだろう。)
上げていったらキリがない、しかし今はその材料が知りたいわけじゃない。これは苦痛なんかで表現できない、私の死への概念だ。
[]
音が聞こえた。何かがすごい音を出しながらこちらに向かってくる音が、なんの音だろう?。
もしかしてお嬢様?、
となると、私はもう死んだ?リスポーンしてお嬢様が走ってくるとか?でもなんで目を閉じているんだろう、開けないと、ちっとも見れない。
…私は目を開けた。しかしそこにあったのはリスポーンした私を向かい入れようとするお嬢様でもなく、無数の降り注ぐ泥地獄でもなく、
ただ鉄の肉体?表現は十分におかしい、が私に見える光景で判断できる材料はたったのそれだけ、そして。
[ドサァァッ!!!!!!]
近くの家が壊れる音が聞こえたと思ったら私の体は軽々しくその鉄の肉体に抱かれ、中を待った。そして次には壊れた水分をたっぷりと含み湿った香りを出す木の匂いと、懐かしい『人』の匂いがした。
「くっ、ちち、。やっぱり最大で吹かすものじゃないな。」
「あ、。」
聞いたことのある声、すぐにわかったことだが、その鉄の肉体はまるで風が通り抜けるような速さで感性のまま私を抱えて家に突撃した。
明らかに私を助けるための行動、そうでなくては今の一連の流れという流れは一体なんのためにあったのか?、私の都合のいい解釈かもしれないが、そんな解釈でも問題ないと言わんばかりの目でその人は見つめていた。
「ウミさん、大丈夫?。結構勢いよく突っ込んだから、、腕が悪化してたらごめん。」
「あ、いえ。ありがとうございます。」
脳が働かないまま、私は決められた呪文を喋るように言った。体が覚えた言葉を再度繰り返したような無気力な声だった、命の恩人になんて態度だことだ、、
「、、あいつを倒せば、治りそうですね。ちょっと待っててください、、」
その人は私の腕を見ると何かを決めたように振り返り、開放的になった家のから見える針山のようになった外を見ながらそう言った。
何をこの人がなそうとしたかわかった気がする。止めた方がいい、絶対いい、この人でもあれは勝てない。絶対に…!。
「紅月様、」
「ん?。」
「勝ってください。」
時に人は思ってもないことをいうものだ、天邪鬼とも言うかもしれない、だが私は思う。
ついていい嘘があるようにこの世にも、言っていい天邪鬼の一つや二つくらいあるのだということを。
「、任された!。」
その人は背中に力を入れたと思ったら青白い光を出しながら家を飛び出していった。戦闘機が滑走路をいや、そんなものすらいえないところから飛び立った。実際に見たことはないがその表現が正しいように私は思った。
「ウミっ!!」
「お嬢様。」
今から起こる戦争のような戦いから避難するようにこちらへ走ってくる。正直勝手に詰め込みすぎたせいでどんな顔をすればいいかわからない。
「っ、もう!。」
お嬢様は私の顔を見て何かを察したように、抱きついた。そのあとは特に何も言い合わず、私は目の前の戦闘風景をただただ見ているだけであった。お嬢様を抱きしめながら…
「ずいぶんおっきいな。」
紅月様がそう呟くと泥はそれに応えるように溢れ出ていた噴水のような形態から段々と足なしの怪物のような形へと変わっていく。家を丸々飲み込むほどに泥の侵食は早く、急成長という単語が非常によく似合うほど大きくもなっている。
そうして紅月様と泥は睨み合う。泥についている二つの赤い点が眼という認識でよろしいのならそのような構図がいま目の前で広がっている。
「行かないなら、こちらから。」
紅月様は手に持っている槍を両手で持ち、エネルギーを溜めているようにバチバチと音を立たせながらスラスターを出し突撃。
[グヅグヅグヅ!!]
泥はそれに反応し、手のひらのようなものを紅月様に見せながら泥の塊を発射した。連射力には欠けるようで放たれたのはわずか五発、しかしその範囲というものかなり広い。なおかつ互いに隙間があるようでない、
「っ!!」
紅月様がチャージしきった槍をまるで鈍器のように向かってくる泥へ叩きつける。
[バゴーーンッ!!]
目の前で大爆発、紅月様は無事なのかと思う次の瞬間、
[カチン]
そう音が聞こえる。黒煙と炎が広がった空間に青白い刃のようなものが光る、いくら視界が不良だとしてもその光は対照的によく見える。
そしてその刃は注目していたにもかかわらず、ありえないほどの軌道で。
[ザシュッ!!!]
泥の手のような形をした部位を切り伏せていた。一体いつ切ったのか、先ほどの爆発が煙幕のように高密度で視界不良を起こしていたというのに、なぜまるでそこにあるものを切ったかのように動けるのか?。、色々聞きたいことがたくさんある中、紅月様は泥へ蹴りを入れた。
それはダメですっ!と口で言おうとした時には蹴り終わっており、泥の腕はまるで反発物質を持ったかのように弾かれていった。
次に確認したのは紅月様の足だった、、しかし彼の足は全くもって泥の絡まりを受けているようには見えなかった。整えられた装甲面には黒い点一つ残らないくらい綺麗で、そして疑問的だった。
紅月様は追撃を入れようと、槍を間近で頭に刺そうとするが、もう片方の腕が近付いていたことを悟っていたからか、バク宙のような軌道をスラスターで行い、地面へと着地した。
「せめてよろけてくれないかな?。」
小声であったが良く通る声、怒りも悔しさも苛立ちさえも感じないその声は戦闘の中で発せられるものではまるでないように感じた。小声と同時に冷やし終えたスラスターを再点火し、低空であり正確な飛行をし、泥に向かって行く。
泥は弾かれた腕を変形させ針鉄球のような形へと変える。弾いた位置から腕の勢いと軌道を駆使して紅月様へ叩きつける。
[ドンッッ!!!]
地面がガタンと揺れるほどのその一撃は静かであったが確かに重しを感じた。だが当たったと断言する材料には決してなり得ない。すでに回避を行なっていた、紅月様は腕を駆け上がるように顔と思われる部分へ近づく、
[ッ!バゴーーン!!!]
爆発が起こったということは当たったということなのだろう。しかしそれが直撃という理屈にはつながらない、空き腕から分岐した一針の泥が紅月様のもとへと鋭く突きにいく。
灰色の爆煙幕があまりの速さに貫かれ、晴れる。紅月様は腕の装甲を針に押し当てながら直撃を回避した、鋭い音を出しながらも装甲を確実に貫けていない感じがするに、水圧に耐えられるようにかなり固く作られていることがわかる。
しかし針が装甲を削っている音はわずかながら聞こえる、魔法すら貫く針を一装甲が防げたことがどれだけすごいことか。
そして当の紅月様はというと、この攻撃を回避できなかった理由が槍先にある。泥が頭部への直撃を避けるようにヘドロのように槍へ張り付き直接的に爆発を防いでいたのだ、、そしてそのおかげで紅月様は回避運動にたりえる身動きが取りづらく、軽傷をあってしまったことがわかる。
お陰で泥の損害はほぼゼロに等しく、なおかつ相手にとって早く動き回る紅月様を拘束できたのはチャンスだ。
「邪魔だ。」
しかし紅月様はまたもやへばりつき離そうとしなくなった泥へ蹴りを入れ振り切った。一流の武闘家が出す衝撃波のような勢いの蹴りは泥を引き剥がすのには十分だった。装甲に削りを入れた泥は今にも腕にへばりつきそうな勢いであったが、瞬間の内に取り出したビームナイフのようなもので付着されるよりも早く切断した。そして去り際に槍の先を泥に向けて、いつのまにかチャージされた電磁砲を泥へ叩き込む。
[バッーン!バッーン!!バッーン!!!]
爆発が三回、泥は少しうなされた様子を見せながら頭部をすぐに守りにいった。このまま攻撃されるのではないかと警戒したからだ、しかし人間味を帯びた行動を紅月様ざ許すとは到底思えない。
紅月様は槍を胴体部へ薙ぎ払いながらニ、三回叩き込み、最後にビームナイフを足先に、蹴りを入れ、そのまま刺さったビームナイフを傷口を裂くように下へとスラスターを噴射させながら腕で切り裂いた。
[ーーーッ!!]
言葉にならない泥の言葉が周囲に響く、咆哮のようにも悲鳴のようにも聞こえるそれは確かにダメージが通っていることがわかる。私たちが攻撃を加えたとしてもビクともせず、なおかつ傷すらつけられなかった泥には体の中央を分けるような大きな見えずらい跡が存在している。
紅月様は泥の反撃を危惧してから一度離れる。泥は退く紅月様を捕まえようと手を伸ばすがギリギリ届かない、こうしてみると意外に大きいということがよくわかる。
そして泥の中央の傷は再生する兆しを見せない、自己増殖によって無限に増える泥にとってはあのくらいの傷はおそらくすぐに治せる範囲のものと今までの動きからわかる。しかし泥は切れた部分から形状を保てない体液、この場合泥なのだが、それを垂れ流しにしている。
(紅月様が攻撃すれば、)
泥は基本的に再生ができない?、または再生速度が低下する?。という理論が私の中で確立された、。
そんな理屈を勝手に思い浮かべている中でも紅月様は依然として交戦中であった。泥は危機感を覚えたのか紅月様と距離を置くために遠距離攻撃で牽制状態を維持している。そして無数の針を紅月様は得意の高速移動で避け、接近を試みるしかしまだその時ではないのか、こちらも牽制程度で止めているように見える。
両者の心理戦状態となりつつも確実に一手を狙う機会を待っている。狩るものと狩るものと同士の読み合い、見た目は派手だがこれほど拮抗したものはない。
「!」
何かを見つけたように紅月様は急加速、泥へ向かって一直線に進む。
泥はそれにすぐに気がつき、針、腕、泥弾といった無数の弾幕を展開する。さらに泥は両腕からさらに身を派生させ、手のようなものを複数従える。まるで一つの核爆弾を本体を晒さずに確実に仕留めようとするその様である。
しかしその無数の弾幕を視界だけに頼らず、全て読みどうりであったかのように、紅月様は華麗に避ける。針のが穴をスススと縫われて行くような綺麗な軌道で、空中で二回三回もバレルロールをし前に進み勢いを全く殺さずに確実に接近する。。
さらには自分の体から2m以内にあるものが全てわかっているように、背後から唐突にくる針を槍で上手く叩き、爆風を推力に変えてさらに加速する。
使えるものは全て使う。紅月様らしい戦い方といえばそうなのだが、一人間が果たしてここまでの領域に到達するものなのだろうか?っと驚愕してしまう。
彼に恐れはないのか?、いわばこれはハイリスクハイリターン、仮に阻止されて仕舞えば一巻の終わりともいえるこの行動、なぜだか短期決戦に持ち込もうとする気がまくられる思考の中で浮かぶ。
[フッォーン!!]
紅月様はある程度の距離へ詰めたと思ったらチャージが済んだ槍を前方へと投げる。この行動も動きが高速であったためかモーション性が一切感じられない、まさに不意打ちに近い形だった。
[グズッン!!]
泥はわざと体に穴を開け、槍を体の向こう側に通した。おそらくそのまま閉じれば紅月様にあるのはビームナイフのみ、槍を取りに行こうにもここまで接近して仕舞えば後戻りはできない。手数が減った分捕まえやすくするためだろう、泥の知能指数が上がっていることがよくわかる。
紅月様はもしかしたらこれ以上知性を上げさせないために短期で済ませようとしているのではないかと思った。泥の成長性と紅月様の心理性、私は二つに恐れをいった。
[ガシンッ!!]
紅月様は空いて閉じる瞬間であった泥の穴に腕に装着されたあったワイヤーを通して向こう側にある槍を捕まえる。
しかしそんなことはさせないと泥はすぐに体の穴を塞ごうとする。
そして泥の穴が今にも防がれそうな時、紅月様は体についていた加速と腕部の捻りを効かせた強力なパワーでワイヤーを鞭のように思いっきり振るう。ワイヤーは鞭のように扱う設計がなされていないながらも紅月様の無理な動きにワイヤーが繋がっていた発射口をキリキリキリっと金切り音を立てながら必死に動きについていった。
鞭というより一種の波に近いその軌道は高速から繰り出され、波は泥の塞ぎつつあった体の穴を容易に弾け飛ばした。そして、追撃と言わんばかりに下に向かって振ったワイヤーを今度はバク宙する勢いで紅月様は回避を織り交ぜながら上へ振った。
[ボバァーーーンッ!!]
ワイヤーの金切り音が再度なったと認識した頃には泥は内部から爆発した。上下に無理を効かせた振りをしたことにより、本来当たるかわからない槍を無理矢理にでも泥に押し付け、当てたのだ。槍にいつチャージが溜まっていたかわからなかったが、今の一連の流れはまさに攻撃として完璧だ。紅月様が仮にここまで読んでいるとしたら、泥に勝ち目はほとんどないだろう。
軽々しく上がった槍を手に取り、上から再度泥へ向かって叩き込む。チャージは済んでいなかったようでただの打撃音、いやされど打撃音と言ったところか、風圧がこちらまでくるような耳に痛い打撃音がその場に響いた。
紅月様は追撃を開始する、相手の中核がどこに存在するのか探すようにビームナイフをズタボロになりつつある泥に刻み込み、本体から部分的に引き剥がす。
しかし切り刻み続けるのにも限界がある。紅月様は追撃を切り替え、チャージが済んだ槍を泥の懐に刺し、離脱する。
[ボッ!バッ!ボッ!バッボーーーンッ!!!]
何発もの爆発が泥をはじけ飛ばし、形を壊していく。まるで暴れる散弾銃のように豪快な槍はその後きっちりと紅月様の手で回収され、攻撃の手は再度始まる。
紙一重で人型のような形状を保っている泥はその接続部を高速で切られ、胴体形が完全に失われた。頭部と見られる泥の塊は自由落下し、そのまま真下へ落ちる。が落ちる際に紅月様がかまいたちのような速度で泥の瞳をまたナイフで切り伏せた。
そして紅月様は崩れかけの泥の状態を瞬時に確認すると、上空へと上がる。槍にエネルギーをこれでもかと集中する、遠くからでもわかるエネルギー量、特徴的なエフェクトがバタバタとだんだん大きく聞こえてくる。
泥はすぐにでも再生を始められる状況であったが、切られ、離れた部分が多すぎたからか形を形成するまでにはたらなかった。
なぜなら次の瞬間には雷撃のよう思い一撃が泥を一瞬で蒸発させ、その存在を消したからだ。
「『最光出力電雷爆破槍』」
感情が乗っていないような淡々とした言葉が槍を放った。重力の加速とエネルギーと、紅月様のオートマタならではの人を超えた腕力的スピードから出されるまっすぐな投擲は着弾地点を一瞬の雷で包んだ。
天井に広がる悪雲の中にある電気を全てその場で落としたようなとてつもない電撃、これまで聞いた中で一番恐ろしいと解釈できる雷が鳴り響いたようだった。
泥は叫ぶタイミングを失ったかのように電撃の中に飲まれ、その存在を消失した。
雷が鳴ってから気絶したのだろうか?私がハッと気がついた時に空がいつのまにか晴れており、雲ひとつない快晴となっていた。
立ち込めていた霧はその面影をなくし、全てが終わった後のような惨状には槍を静かに引き抜いた紅月様が立っていた。
(やっぱり紅月様は変わりません。)
どうしようもなくまっすぐで、自分が何をすべきなのか全てわかっていて、私はそれがとても羨ましかった。
『topic』
紅月の槍はレールクローガン、短剣はレーザーコンバットナイフという名前。
レールクローガンは叩きつけても大丈夫なように装甲と同じ素材を使用して、近距離での爆発ですらものともしない耐久性を誇っている。
レーザーコンバットナイフは取り回しの良さや、斬撃武器、ワイヤーとの組み合わせがかなりいい。




