第40話 邪悪な気配
転生したら人工知能AI幼女になっていた。って話です。 こちらは続編、第2部となっております。
<a href="https://ncode.syosetu.com/n9155ge/">こちらが前作になります</a>
ヒッポちゃんは、あっという間にエネルギーボールを作り上げた。
「はっ、早い」
以前はもう少し時間がかかってたのに……。
振り向くと、エデュランの方も準備が整っていた。
今回は最初から全力でいくようだ。全身に魔法を纏わせている。
エデュランは、顔で進路を開けろと指示する。
「ちゃんと、口で言え!」チョイチョイ、ムカつく奴である。
だけど、彼がこちらの最大戦力だ素直に従っておこう。
しかも、どちらの攻撃も喰らいたくないしね。
「言われなくても避けるわあ!」
エデュランは、雄叫びを上げて突撃した。早い!
魔法を纏った。エデュランとヒッポちゃんのエネルギーボールが激突した。
魔法と魔法の衝突により、爆風が巻き起こった。
離れているこちらに迄余波が来た。
体が煽られる。その爆風を突き抜ける影が見えた。
「エデュラン!」
前回と同じ辺りに剣先が進む。ヒッポちゃんが悲鳴を上げて仰け反った。そして、クルリと身をひるがえした。胸に傷はなかった。
しかし、ヒッポちゃんは体力を削られた様で大きく息をしていた。
怒りのヒッポちゃんの視線は、エデュランに向っていた。バッチリ目的は達成だ。
だが、エデュランも肩で息をしていた。
あたしは、そのエデュランに向けて親指を立てて見せた。すると、こちらに向けて爽やかな笑みをこぼした。なんかドキッとしたので目をそらす。そのまま、マリアちゃんの方へ視線を移した。そろそろ封印の術式が完成する頃合いだ。
すり鉢状で静止していた鳥かごが回転を始め、魔法陣の中に沈み込んだ。
魔法陣の回転が激しくなる。さらに振動までし始めた。回転にあわせ光の粒子が飛び散る。
激しく回転する魔法陣から八本程の光の槍が飛び出した。先端は槍だが途切れない、ロープのようになっている。これは網だ。開いた鳥かごか?
その魔法の網がヒッポちゃんを囲い込んだ。縮んで押し込めていく。ヒッポちゃんは雄叫びをあげた。
「よし、やったぞ! マリアちゃん頑張れ!」
後はマリアちゃんに頑張って貰うしかない。見守るしかない。
見守るあたしの側に、闇の使徒が現れた。
「あ! こないだのヤツ!」
闇の使途はこちらに向けて不敵な笑みを浮かべた。
あたしは、瞬間的にハンマーを振り回した。
闇の使徒は軽くそれを避けると、自らの手の上に何かを出現させた。
あたしの視線は闇の使徒の手の上へいく。判別しようと頭脳が回転する。それはクリスタルに見えた。色は紫で禍々しい。
「この状況を待ってたんだよ。まあ所詮は封印の獣だな、でも十分役立ってくれたよ」
そう言って、手からクリスタルを落とした。手から離れるとクリスタルは輝きだした。
落下と共に輝きが大きくなる。禍々しい輝きの中から触手が飛び出てきた。2本3本と触手を伸ばす。
「なんだ? タコか? イカか?」
とにかく触手系の魔物で間違いないだろう。
「今日はそいつと遊んでな」
っと言って、闇の使徒は姿を消した。
「あっ! くそー! どこへ行った!」
触手の魔獣はマリアちゃんへ向って行く。
エデュランも向かおうとするが、大きな力を使ったためか反応が遅れた。
さいわい、魔獣の動きはそれほど早くない。
あたしは全力飛行で、マリアちゃんと魔獣の間に割り込んだ。
触手が向かってくる。気持ち悪い。触りたくない。
あたしはとっさに、マリアちゃんに教えてもらった魔法障壁を発生させた。
巨大で強力な魔法障壁が展開される。この体の魔力は強大なのだ。ここから先は通さない。絶対に素手では触れたくない。
「マリアちゃん! みんな! 計画通りヒッポちゃんの封印をすすめて。こいつはあたしが何とかするよ」
頷くマリアちゃんが見えた。任せてとは言ったものの、どうすれば……。
魔法障壁の向こうでうねうねする。粘液が飛び散り、そして垂れる。き、気持ち悪い……。触手はどこか通り抜ける所がないか探しているようだ。
エデュランがあたしの側へやってきた。
「何度見ても見事な魔法障壁だな」
「見てないでなんとかしてよ。そうだ、エデュラン。さっきのやつもう一回いける?」
「コトコは人使いが荒いなあ」っと言って苦笑いを浮かべた。
「これがあたしです。婚約断念ですか?!」
ニヤリと笑う。
「余も相当魔力を使った。コトコがご褒美くれたら頑張れるかもしれん」
「え!? ちょ!? こんな時に」
うねうね、ウネウネ、うねうね……。気持ち悪い見てられない。もうダメ見てられない。目をつむって必死に魔法障壁を維持する。
「お願い! 倒したらご褒美あげるから!」
「承りました。マイレディ」
サッと身をひるがえし、魔獣へ間合いを取った。
ひるがえる瞬間ニヤリとするのが見えた。
「あっ、あのやろう」
エデュランが再び詠唱を始めた。彼の背後に魔法陣が現れる。そして、空中から魔力を集めた。
なんだったっけ、精霊から分けてもらってるんだっけ? 経験は少ないが知識はアップした。ディープラーニングの成果だ。
「あいつは倒しちゃっていいからね」
「了解!」
魔獣を魔法障壁で抑えてはいるが、暴れ回るので周辺の建物に被害が出ている。
「あっ、また学院の建物が……。ああもう、腹立つなあ。エデュランまだなの?」
エデュランの方を見ると……。
なんじゃありゃ!
エデュランが全身に魔法を纏わせている。
纏う風が今までの比じゃない、今まで一応手加減してたのか。恐ろしいやつ。
ちょっとまて。魔力が少ないって言ってたのにまだまだあるじゃないか……。あっ、あいつめぇえ! まあいい、それより触手の化け物だ。エデュランの準備が整ったようだ。あたしの方を見ている。
「じゃあエデュラン、やっちゃって!」
エデュランは周囲の無機物を巻き込みながら、闇の魔物に向けて加速を始めた。
闇の魔物は突進してくるエデュランに気づきもしないで、あたしの魔法障壁を破ろうと暴れている。
この闇の魔物、無茶苦茶暴れるだけだよ。アホだよ。
エデュランの攻撃が闇の魔物を貫いた。うめき声をあげて真っ二つになる闇の魔物。
弱いなあ。何のために出したんだよ。
あたしの隣に再び闇の使徒が現れた。
「アホで悪かったな! まあ、時間稼ぎに出しただけだからな。十分役立ったよ」
そう言って、闇の使徒は図書館を見つめていた。
あたしは、闇の使徒の視線が気になり、同じ方角を見つめた。
その時図書館の地面から紫のオーラが染み出してきた。そして一つの形を成した。
そのオーラが邪悪な笑みを浮かべた気がした。オーラは上空へと昇っていった。いつの間に発生したのか、空に裂け目ができていた。オーラはその中に消えていった。
アメリア学院の封印から何か邪悪なものが抜け出していったのだと理解した。
あたしは周囲に目を向けた。誰もその事に気づいて居ない様子だ。
もう一度空に目を向けると、裂け目は綺麗に無くなっていた。
エデュランが、あたしの側の闇の使徒に気づき向かってきた。
「コトコ離れろ!」
あたしはエデュランの言葉に反応し、闇の使徒から遠ざかる。
エデュランの風の刃が飛ぶ。
闇の使徒はそれをかわし「じゃあな。あばよ!」っと言って姿を消した。
「あっ! ちょ!」
また、何もできなかった……。呆然としているあたしにエデュランが声を掛けた。
「気を取り直せ。今は封印が先決だ!」
「うん、そうだね」
マリアちゃんの方を見ると。ヒッポちゃんは、どんどん、どんどん、圧縮されていた。ヒッポちゃんの目の色がもとに戻ってきた。
あたしと目が合うとキュピーと可愛く一泣きした。よかった。ヒッポちゃんは大丈夫そうだ。
ヒッポちゃんは、初めてあった頃の見た目に戻っていた。羽毛はモフモフ、体も丸っこい。
マリアちゃんは詠唱を続けた。
ヒッポちゃんは、魔法陣の中に光の籠ごと吸い込まれていった。これで封印は完了したようだ。
なんか釈然としないが無事封印は完了した。
なんだったんだよあれは……。
やり遂げた安堵からか、マリアチャンがよろめいた。それをクリスティちゃんが支えた。そのまま、お姫様抱っこへ。
おおー、なんかカッコイイけど、大きさが逆だから違和感が。
パワードスーツを着てなかったら無理だもんね。そのまま救護車へ駆けていった。
マリアちゃんの元気が少し回復したので、グランディア城へ戻った。
そして、謁見の間に案内された。女王陛下は玉座に腰掛けておられた。
「女王陛下お体は大丈夫なのですか?」
「大丈夫です寝てばっかりもいられませんからね。無事封印は完了したようですね」
「はい完了しました。母様。どうしてわかったのですか?」
「魔力の流れで分かりますよ」
そしてあたしたちに向けて微笑みを浮かべた。
その時だったファンファーレが鳴り響いた。
あわわ、またこれか?!
「ただいまより勲章の授与を行います。コトコ・ペンデルトン。ヒナオニール。エドナ・クリスティ。前へ」
クリスティちゃん、ヒナちゃんはキョロキョロと落ち着きがない。あたしは2度目ともなると落ち着いたものである。
あたしは、まずクリスティちゃんを女王陛下の前へエスコートした。
女王陛下は、クリスティちゃんに勲章を付けた。パワードスーツのせいで付ける所に苦労されたが、無事取り付けられた。
次にヒナちゃんもエスコートする。
女王陛下はヒナちゃんの側でお礼の言葉を述べると勲章をつけた。
あたしの番がやってきた。女王陛下の前に歩みでる。
女王陛下はあたしを側に寄せると、囁くように話しだした。
「コトコさん、ご苦労様でした。マリアだけでは封印できなかったでしょう。本当にありがとうございます」
「女王陛下、封印のことなんですが。封印の最中に何かが……、邪悪なものが抜け出たように感じたのです」
「やはりそうでしたか、魔力の質が少し変化したのはそれが原因だったのですね」
「感づいておられたのですか?」
女王陛下は頭を立てに振った。
「結果的に封印を破られたのかもしれません。闇の者たちの計算通りといったところでしょうか。あの封印に封じられていたものは、ヒッポグリフでは無かったのかも知れませんね」
「封印されているものについて、王家の記憶には記録されていないのですか?」
女王陛下は、頷いた。
「古の魔女と同様に、神話の時代に封印されたものなのでしょう。とにかく、何か好ましくない事態が始まっているようですね」
「あのー、そういうことなのでこれは……」
っと言って、あたしは女王陛下の手にある勲章を見た。
「それはそれ。ヒッポグリフをそのままにしておけなかったのも事実です。ですので、勲章は受け取って下さい」
そして、美しい眼差しで見つめられた。
さらに肩書が付くのは勘弁なんだけど断れそうにない。その気持ちを表に出さないように、爽やかな笑顔を作って言った。
「わかりました。では、有り難く頂戴します」
女王陛下は、あたしの胸に勲章を貼り付けてくれた。古の魔女の装備は傷付かないのだから、貼り付けるしかないのだ。
この勲章ならクリスティちゃんのパワードスーツにも簡単に付いたのでは……。
あたしが玉座から下がると。瞳をキラキラさせているマリアちゃんが見えた。
「あのー、母様。僕の勲章は?」
女王陛下は、渋い表情になった。イシス様がマリアちゃんをたしなめている。
「えっ? そうなんですか? お姉様?! エデュラン様にもないんですか?」
あたしは、そんなやり取りをぼんやり見ていた。
神様の言ってた通りだった。当分は心からのんびりできなくなりそうだ。
あたしは周囲を見渡し、皆がマリアちゃんに注目しているのを確認すると、目立たないように大きなため息をついたのであった。
お楽しみ頂けたら幸いです。まだ続きます。気に入ったら次話もよろしくお願いします。




