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#2-18 戦友

 ――― 

 ―ガガガッ、ガシャ…


 一寸先すら見えない煙霧迷漫の中、歪な機械音が鳴り響く。


 『マスター、左です!』

 「そっちか」


 大王蟲ギガオームは煙から飛び出し、大きな片手盾と片手を変形トランスフォームさせた機甲螺旋槍を構えたフルブースト突撃が今まさに飛竜リンドヴルムに肉迫しようとしていた。

 間一髪で飛竜リンドヴルムは大剣で、槍を捌き、むりやりな態勢で大王蟲ギガオームを蹴り飛ばす。

 だが多脚型タイプの魔竜ドラグーン相手には、それはかなりの悪手。

 蹴り飛ばされるはずだった大王蟲ギガオームは蹴り飛ばされるどころか、多脚のバランス安定釘アンカーを地面に打ち込み、即座に防御態勢を取る。

 そして蹴った反動で今度は飛竜リンドヴルムが機体バランスを大きく崩す。


 「クッソ!」


 アキラは機転を利かし、ブーストの後部バーニアをフル点火しそのまま飛び上がり、補助翼を使い空への退避を試みるが、その目論見はすでに読まれ、大王蟲ギガオームはその盾と見まごうほどの手で、飛び上がろうとしていた飛竜の足を掴み、地面へ叩きつけ、地面へと縛り付けた。


 『判断ミスですよ、マスター』

 「わーてるて!くっそ、いちいち言わんでいい!」


 状況が悪くなり、焦りからアリスに悪態をつくがそれでどうにかなるとはアキラ本人も思ってはいない。

 地面へ叩きつけられ、神経接続のフィードバックでわずかに視界がぐらつく、さらに衝撃で地面の砂塵などが舞い上がり、依然煙と霧が舞うフィールドをさらに視界を悪くし、最悪の環境へと変えていく。

 だがうかうかしては居られない、大王蟲ギガオームの多脚が倒れ込んでいる飛竜リンドヴルムへと襲い掛かる。


 「マズッ!」 


 叩き込まれる脚を2本掴み叩き込まれるのを防ぐが、アキラは一番の負けの禁じ手を次の瞬間に理解してしまったのだ

 叩きつけられた、両手で大王蟲ギガオーム脚釘レッグアンカーで塞がれてしまった。

 見下ろす大王蟲ギガオームの爛欄と輝く禍ッの緑目モノアイ、それは飛竜に終わりを告げる最後の合図。

 

 -ギュゥゥゥゥイン!!!ギギギギッギッ!


 振り下ろされる大王蟲ギガオームの螺旋槍がアキラのココ(・・)で見る最後の映像だった。




 ―――


 「うおぉぉ!!」


 大王蟲ギガオームの槍が振り下ろされ、俺はゲームオーバーを告げられた。

 ベットからビクンと、心臓マッサージかといわんばかりの電撃をくらったみたいに飛び上がった。

 全身脂汗で、先ほどの電子空間マトリックスの訓練の余韻に体がまだ抜けきっていないほど全身の筋肉が緊張し、硬直していた。


 「はぁ…はぁ…」

 『5戦5敗です、マスターまだやりますか?試算ではいまのマスターでは勝ち目は極めて低いです、確率でいうなら7%弱』

 「すこしは数字を盛ってくれよ、俺を元気づけるていうプログラムはないのかお前は?」

 『んじゃ、80%に改定します』

 「盛りすぎだ、ポンコツ!嫌味か!」

 『ポンコツにポンコツ言われたくないのですが』

 「ぐっ・・・」


 たしかに俺は戦闘のポンコツだった…。

 件の地下エリアからピュティの屋敷に帰還した、夜は食事のあと部屋で休憩がてら、今後のことを見据えて飛竜の戦闘訓練をしていたのだが…。

 

 『やはり、マスターこの訓練メニューには無茶がありますよ』

 「ああ、わかってるさ、でも現状これからのことを考えれば、今後は俺一人で飛竜リンドヴルムを動かさないといけなくなる」

 『理解してます、これ以上ピュティに頼らない方針は私も賛成です』


 そう、俺とアリスは一つの結論を出した、ピュティありきの魔法による対魔竜ドラグーンの戦闘に頼らない事だ。

 俺たちは三日後、この国の次期女王の指名式典が終わり次第、この国を出る、そして地下で会ったジェラルドのエルフ武装部隊たちと合流する。

 EXEエグゼにこそ会えなかったが、それでも俺が目指す最終目的地は分かったのだ。


 月面の旧人類オールドメンが投棄し、まだ稼働がされている月面防衛基地、その地を目指すのにいくつも障壁があり、ジェラルドたちのΛ(ラムダ)騎士団と俺たちで共同で模索して月面の防衛圏を取っ払うことになる。

 そのうえ、月面への旅行キップには期限がある、猶予はあまりないのだ。

 そのため、彼女、ピュティ・ドリアドネを俺たちの旅に連れていくことはできない、いやもとよりピュティは曲がりなりにもお姫様の一人。

 そしてなによりこれは俺の旅であり、ピュティには関係ない俺の物語だ、どれだけ戦力として頼りになるとしても、これ以上彼女に頼りきりっにはできない。

 そのため、俺はピュティ抜きで飛竜を動かし、ダミーで作られた大王蟲ギガオームと模擬戦をしていたのだが…。


 『もとより、マスターは訓練を受けた正規の兵士でもありませんし、飛竜リンドヴルムとて多少カスタマイズしましたが、あくまで元は最低限の自衛手段しかない量産型の機体スレイブ惑星破滅派カタストロフィ・ノヴァ戦闘機械バスターマキナに勝つどころか、五分にすら持ってけないのが現状です』

 「はぁ…いままで2機も倒したてのに、これもすべてピュティの手柄てことだな、ほんとよく生き残れてきたな」

 『まさに、彼女ピュティはマスターのウサギの幸運足ラビットフットて訳ですね』


 ベットにどさと脱力し倒れ天井を眺める。


 「なぁ、…アリス、お前は人類がスキか?」

 『はい、スキです、第三原則アシモフルールに従い、私たちの創造主を尊敬し、愛します、そしてなによりマスターである速水晶はやみあきらを心から信頼していますよ』

 「そうゆうことじゃないんだが…ほんとにそれはお前の意思か?」

 『はい?疑いの余地はありませんよ、どうしたのですか?』

 「…まるで呪いだな」

 『?』

 「いや、なんでもない」


 身をベットから起し、先ほどから小椅子に座り脚をぶらぶらとさせているアリスの幻影ビジョンに向き合う


 「それで軍師アリスさんは、何かいい案はないか?ピュティ抜きでもこの先やれそうな案」

 『ふむ…』 

 

 アリスは電脳を駆使し計算をしてるのか、思案するしぐさをし、すぐに答えが返ってきた。


 『ピュティの幽霊ゴーストをつくるてのはどうでしょう?』

 「幽霊?」

 『彼女の一部思考アルゴリズムを深層学習ディープラーニングし、戦闘用の疑似人格ゴーストを作る、無論本物よりかは各段に劣りますし、そもそも私の得意分野でもありません、ピュティみたいな即座な応用性は期待できません』

 「そうだな・・・いちお、ピュティに許可取ってみるか」

 『いやいや、バレない様にしますよ?』

 「お前常識ないのかよ、そうゆうのは本人の許可がないと、んなっ知らないとこで俺の疑似人格なんてもんで来てたら、俺でも気分悪いわ」

 『マスターは真面目ですね~』

 「頭が固いだけさ」


 とりあえずアリスの提案をすこし念頭に、明日あたりピュティに説明して、許可取ってみよう…。

 しかしピュティにどう説明すればいいのだ?

 

 『それはそうと、マスター、今日のことをピュティに言わなくてよかったのですか?』

 「ん?あぁ、地下の一件か…」


 屋敷に戻り、何度かピュティと顔を合わせては、いろいろと聞かれたが、王国の地下で出会ったエルフの部隊は伏せておいた。

 正味ピュティにはもう式典が終わって、王女候補からただの貴族になれば、カーティラの領地に戻るなり、この王都に留まってもそれなりに安全だとは思う。

 それゆえに、事が終わり次第彼女の元から俺たちは離れる予定だ、いちおレズリーやティファにはその事を伝えて、残念ながらピュティ本人には黙って離れるつもりだ。

 悲しそうなピュティの顔が容易に想像できるが、下手に言ったら俺たちについてきそうなのが目に見えてる。

 そのことはもう俺とアリスの中では決定事項として進めていたのだ。


 『…しかし、なんて申し上げればいいんでしょ、お友達と離れるのはおつらい感じですか?』

 「友達ねぇ…」


 思えば、俺とピュティの関係は変な出会いではあった。

 ピュティは間抜けなポカをやらかして、困ってたとこをたまたま通りかかった俺が助けただけ。

 そのあとはカーティラの街が王蟲オームの機械群に襲われ、俺が手を貸し、さらに地下のアンバーの防衛施設をピュティとともに探索をした。

 そのあとの大王蟲ギガオーム戦ではピュティがいなかったら俺はくたばっていただろうし。

 

 「そうだな…戦友だ」

 『つまりお友達てことですか?』

 「いやいや、全然違うぞ、アリス、覚えておけ」

 『はい?』

 「友達てのは仲が良い対等な存在、戦友てのは互いの命を預けられる存在だ」

 『ふむ…なるほど』


 そう、すくなくとも俺とピュティは互いに命を2度も預けた仲ではある、だからこそ俺たちが黙って去るのは彼女にたいして【義】ではないが…これは、ピュティの安全。


 「ふぁぁ…」


 飯を食い、模擬戦をし、今日はいろいろあった…眠くなってきた…。

 

 「…ふぅ」


 意識が途切れる、ふかふかのベットに身を預け、最後に眺めた窓の外、明るく月が夜を照らしていた。


 (月……あそこに…舞が…)




 『やれやれマスター、寝るなら布団ぐらいかけないと、お腹を冷めますよ、人は脆いのですから』





 ―こんこん


 「…」


 ―ギギギっ…




 「…」

 『ん?あなたは』




 睡魔により意識がレムの深層に落ちたらアキラ、それをやれやれとアリスはため息をつく。

 そしてそれて入れ替わる様に、アキラの部屋のドアがノックされる、無論電脳であるアリスは、電子錠が備え付けられてるわけでもない、ただの通常のゴシック調のドアを開いてドアの向こうの気配に応対することはできない。 

 返事がないせいか、その気配はおそるおそるとドアが控え目に開けられたのだ。


 ―――


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