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第12話 無言の鉄槌


 無事にレベル3(三歳)へと到達し、私は新たなステージへと足を踏み入れた。幼稚園への進学である。


 優秀な勇者である兄は小学校へと上がり、私は「ひよこ組」という初期マップへ配属されることとなった。幼稚園の制服という真新しい上位装備に身を包んだ私は、なんだか少し大人になったような万能感に浸りながら、意気揚々と新たなダンジョン(幼稚園)へと乗り込んだのである。


 しかし、いつの時代も平和なコミュニティには厄介なモンスターが湧くものだ。ひよこ組には、まるで某国民的アニメの「ジャイアンとスネ夫」を彷彿とさせる、女子をいじめるのが大好きな二人組の男児が存在していた。


 彼らの得意技は「スカート捲り」という極めて低俗な奇襲攻撃だった。入園からしばらくして、クラスの多くの女子がこの攻撃の餌食となり、泣かされていた。


 当然、私のところへもその攻撃は飛んできたのだが……私にその手は通用しない。精神防壁の厚さが違うのだ。

 バサッとスカートを捲られたところで、私は微動だにせず彼らを冷ややかに見下ろした。


(布切れの一枚パンツを見て、一体何が面白いのだ? まったく意味が分からん……)


 泣いて恥ずかしがるどころか、ただただゴミを見るような目で一瞥してくる私に対し、彼らはひどく拍子抜けしたらしかった。不満げな顔をしたジャイアンたちは、私に向かって「男女おとこおんな!」とからかってきたが、そんな低レベルな語彙力の挑発など、女王の心には痛くも痒くもなかった。


 だが、事件はある日突然起こった。


 私は同じ幼稚園で「一つ上のクラス」に通っている一つ年上の幼馴染、歩美ちゃんと談笑していた。あのかつて池ポチャの死線を共に潜り抜け、強固な同盟を結んだ私の大切な戦友である。


 そこへ、あのジャイアンとスネ夫の二人組がやってきたのだ。彼らはニヤニヤとバカにしたような笑いを浮かべ、事もあろうに年上である歩美ちゃんにまでスカート捲りを仕掛けた。


 不意打ちを受けた驚きと恥ずかしさで、歩美ちゃんの目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。


 それを見た瞬間、私の脳内で何かが冷たく弾けた。

 私の同盟国(友)が、あんな低俗な輩に理不尽に傷つけられ、泣かされた。

 私は怒鳴ることも、喚くこともなかった。ただ無言のまま、スッとジャイアンに距離を詰め――その顔面に向かって、渾身の右ストレート(顔パン)を叩き込んだ。


「……ッ!?」


 突然の顔パンを食らったジャイアンは、一瞬何が起きたのか分からないというように呆然と私を見つめた。しかし次の瞬間、鼻からタラーッと鼻血が流れていることに気づき、火のついたように大声で泣き喚き始めたのである。討伐完了だ。


 当然のごとく、この流血騒ぎは園で大きな問題となった。

 慌てて飛んできた先生たちは、鼻血を出して泣くジャイアンと、無表情で立ち尽くす私を見て顔を青くした。そして、「仁覚ちゃん、ごめんなさいしなさい!」と、私に無理やり謝罪を要求してきたのだ。


 しかし、私は頑として首を縦に振らなかった。口を真一文字に結び、一切の謝罪を拒否したのである。

 今思えば手を出した私が悪いのは明白なのだが、当時の私は本気でこう思っていた。


(先に手を出して私の友を泣かせた『悪』を、私が討伐したのだ。正当な報復を行ったこの私が、なぜ謝らなければならないのか?)


 自らの正義を信じて疑わず、絶対に謝ろうとしない鋼の意志を持った女王(三歳児)。

 そのあまりに堂々とした立てこもりっぷりに、先生たちはすっかり頭を抱え、ひどく困り果てることとなったのである。



ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

私の人生録が、少しでもあなたの心に触れたり、「この先どうなるんだ」と興味を持っていただけたなら幸いです。

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何卒、よろしくお願いいたします。

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