第2話 副業×老婆の霊(1-2)
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前回の続きです。
トキコは和馬の胸ぐらを掴み、壁に押し付けている。
「あの子は女と遊ぶ金が欲しくて、私に店の経営がうまくいかないって嘘をついて金を騙し取ったんだ!!!くっそぉぉぉ!!ふざけるなぁぁ!!私が貯めてきた金をどこの馬の骨かも分からない女に使うなんて!!!!俊彦――!!!!成仏なんてするもんかね!!!俊彦を呪い殺すまで成仏なんてしないよ!!!!」
「待て待て!!呪い殺すってなんだよ!?そんなことしたら俺の依頼料が入らないだろうが!!今月家賃支払わないと追い出されるんだよ!こっちは!」
「あたしの知ったことかい!!」
トキコは和馬を再び天井近くまで持ち上げる。
「さっさと俊彦の居場所を教えな!!さもないと、あんたを呪い殺すよ!!」
「高田トキコ!!落ち着け!!」
和馬は再度トキコの名前を叫ぶも、トキコは般若の形相を崩さない。
「同じ手は効かないよ!俊彦はどこだい!!」
一度怨霊から元に戻ったにも関わらず、再び怨霊になるとは、余程の恨みに違いない。このまま成仏する気配はなさそうだ。
「分かった…!教えるから…一回落ち着いてくれ!!まずは俺を下に下ろせ!」
トキコは胸ぐらを掴んでいた手を放し、和馬は天井付近から落とされ、床に転げ落ちた。
「ありがとよ、下ろしてくれて…。」
床に転がったまま和馬は言った。
「約束は守ったよ!さあ、俊彦の居場所を教えな!」
「陽炎町にあるBar ボンボンにいる。」
「ひゃひゃひゃひゃ!!俊彦!あたしにした仕打ちを後悔させてやるからねー!」
ヒステリックに笑いながらトキコはものすごいスピードで部屋の壁に消えていった。
が、すぐに消えていった壁とは反対側の壁から再び姿を現した。
トキコは驚いた表情をしたが、すぐに最初に消えた壁に再び突進して消えていく。
が、さっきと同じく反対側の壁から出てきてしまった。
「どうなってるんだい!?あんたの仕業かい!?」
トキコは和馬に詰め寄る。
「俺のせいじゃないって。あんた、やっぱり呪縛霊なんだな。」
「呪縛霊…?」
「呪縛霊は、簡単に言うと強い未練が残る場所に鎖で繋がれている存在だ。あんたにとってこの家がその場所だ。そして、あんたの移動範囲は家の中だけみたいだな。」
「じゃあ、あたしは俊彦を呪い殺すこともできず、ずっとここに犬みたいに繋がれているってことかい。」
「そういうことだ。」
自分の状況を初めて理解し、トキコは愕然とした。
このままここで、永遠に孫を恨みながら、誰からも救われず、ただそこにいるだけの存在になる。眼球のない恐ろしい顔であってもトキコがどれほどの絶望感に襲われているかが見て取れる。
強い未練が残る場所…。
トキコは家の中を見渡した。
この家は結婚を機に、両親と同居するために立て直した。
いい思い出も悲しい思い出もたくさんある。
大事にしていた家具や食器、初めて挑戦したかぎ編みで作ったブランケットも。
そう思い返すトキコは生前の姿に戻っていた。
でも、今はその大事にしていた物たちがほこりを被り、カビを生やして、少しずつ、少しずつ、朽ちていっている。
やがて土にかえる物と何も変わらず、ここに存在している自分。
自分の心も大事な物と一緒に朽ちていき、孫に対する恨みだけが残る。
そんな未来は望んでいない。
では、孫を許すのか。
店の経営がうまくいかないという孫の話は全部嘘だった。
これまで孫に注いだ愛情はなんだったのか。
嘘までつかれて、お金を取られて…
-許せない。
でも孫が来ない限り、自分にはどうすることもできない。
誰も救ってはくれない…。
怨霊の姿になったトキコは俯いた。
「ただし、俺が連れ出すことはできるぜ。」
トキコは和馬の顔を見上げた。
「できるのかい!?」
「できる。でも条件がある。」
「条件?」
「あんたは孫を呪い殺したいと思うほど恨んでいる。でも殺されてしまっては俺に依頼料が入らない。そこで、折衷案と行こうじゃないか。これなら俺にも依頼料が入るし、あんたも恨みを晴らして成仏することができる。どうだ、乗るか。」
トキコは迷った。
孫を呪い殺せないのなら、行ったところで仕方がない。
かといって、ここにいても俊彦が来るとは思えない。
「…乗った。折衷案とやらを聞かせな。」
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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