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救われた世界、救われなかった村  作者: こまりさ


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第1話

挿絵(By みてみん)


 これは私——学術都市オーパックで第2級学者をしているノラ=ノーマンが研究のために訪れたとある村で聞いた話だ。


 この話をしてくれたのは、その村に住む研究者ユーリ。まだ20代の若さなのに、どこか達観した雰囲気を持つ彼は、この村で採れる鉱石の研究をしてるという。


 さて、この話が似たようなものを研究している私の興味を刺激しようと考えたホラ話か。それとも悲劇と呼ぶには生温い、気が遠くなるほどの救われない話なのか。


 ぜひ皆さんに判断してほしい……。


 ***


 魔王が討たれてから約8年。

 その爪痕はいまだ各地に残るものの、魔物の出没もかなり少なくなってきた。


 冒険者に魔物の討伐依頼が出ることはほとんどなくなった。その代わりとして、遺跡調査や旅の護衛などそれまでとは異なる依頼が主な収入源となりつつあり、子どもたちは冒険者よりも違う職業に憧れを持つようになった。


 その1つが私のような学者だ。


 学者とはただ何かを研究するだけの仕事ではない。

 世の理をさまざま角度から解き明かすことを目標とし、さまざまなことを研究して、それを人々の暮らしに活かす仕事だ。


 例えば、生活のために独自に編み出されたオリジンギフトを解析し、多くの人が使うことができるコモンギフト化することもその学者の仕事の1つ目だ。そのおかげで様々なコモンギフトが生まれ、私たちの生活は大きく改善していった。


 私が今こうして暗い夜道を迷わずに歩いていけるのも、先人が作り上げたコモンギフトの「ナイトシーク」と「ナビゲート」のおかげだ。


 いくら魔王が討たれ、魔物などがいなくなりつつあるとはいえ、夜の旅はまだ危険が多い。それなのにわざわざギフトを使ってまで旅路を急ぐのはなぜか?


 それはとある村から送られてきた一通の手紙のせいだ。


 その手紙にはその村に住む鉱石研究者からだったが、私は彼のことを知らない。それどころか、彼が住む村のことすら手紙をもらうまで知らなかったのだ。


 その手紙は「突然の手紙で大変申し訳ございません……」と丁寧な謝罪からはじまり、自分が携わる鉱石研究に私の知識がどうしても必要なので村まで来てほしいと、終始低姿勢な文調で書かれていた。


 その手紙には来てほしい日程と、ご丁寧に多額の謝礼を含めれているであろう旅費も一緒に添えられていた。


 会ったこともない人からの突然の依頼に応じようと思った理由。1つは彼が私と同じような研究をしているから。私の専門はアイテムの生成。いわゆる錬金術に近いものだ。


 無から有を生み出すわけではなく、さまざまな自然環境で採集できるものを利用して、今までにない新たなアイテムを作り出す研究をしているのだ。


 しかし私と同じような研究をしている者は他にいないわけではない。それならなぜ彼の呼び出しに応じようと思ったのか。


 それは彼の手紙に私しか知り得ない、今手掛けてる研究の内容と、それに役立つ鉱石が自分の村で採掘できると書かれていたからだ。


 私は学者だ。自分の研究に役立つ可能性があるのであれば、そこに行かない理由はない。


 こうして私は彼——ユーリ=シーナの呼び出しに応じて彼の村に行くことにした。


 そして……それはユーリにとっては既定事項だったらしい。

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