第一章:戦場の中で 第四話「死神部隊」
―2059年12月 フャルージャ砦陥落から3時間後 「ユーフラテス戦線方面軍第2特殊作戦部隊野営地」―
ここはフャルージャ砦から西に90~100キロ離れた場所に位置する野営地。
その野営地には「ユーフラテス戦線方面軍第2特殊作戦部隊」敵からは“死神部隊”と呼ばれている部隊が駐軍していた。
彼らは3時間前の「フャルージャ砦陥落作戦」の任務を見事完遂し、現在は野営地内の中央で部隊長によるブリーフィングが行われたいた。
部隊は隊長と副隊長の前に整列しており、整列している姿からも隙のないことが窺える。
彼らは、第5次中東戦争が始まって以来の歴戦の猛者と隊長自ら才能を見出されたルーキーの混合戦闘集団である。並の兵士がこの場にいれば、とても強いプレッシャーに息ができなくなっているだろう。
そんな部隊を率いているのが「スネーク部隊」の副隊長であり、現に第2特殊作戦部隊の隊長を兼任している「影山 昌」という少年である。
彼は、まだ15歳の少年である。肩まで延ばされた髪は白く一つに結わえられている。前髪も長く、目元まで覆ってしまっている。他の者なら、前髪が邪魔で視界が全く見えないはずであるが、彼は前髪を鬱陶しそうにしていない。見た目からも異様であるが、彼のオーラも異様。
長年、彼と共に任務をこなしてきた熟練兵であっても彼の重圧には未だ慣れていない。
彼の実力は、味方は勿論、敵からも畏怖されるほど認められており、この場にいる誰もが彼が隊長として部隊を率いることに口出ししない。
もし、〝死神”と恐れられている自分たちの隊長が敵であったらと想像するだけでも戦々恐々としてしまう。それと同時に死神部隊の面々は、目の前の少年兵が自分たちの隊長であることに、安心感を覚え、敵からも〝死神”と呼ばれ畏怖されている彼を尊敬している。
死神部隊の面々が彼らの隊長に尊敬の眼差しを向け、視線が一点に集中したことを確認した時、話が始まった。
「----第2特殊作戦部隊の諸君、先のフャルージャ砦陥落作戦の件はご苦労であった。彼の砦を堕としたことによって、敵の防衛線を一時的に麻痺することに成功した。感謝する。----今後の方針については、副隊長に話をしてもらう。----副隊長、あとは頼んだ。」
「はぁっ!!」
昌から指示を受けた副隊長は、昌より少し前に出て彼らに方針を話し始めた。
「お前たち、よく聞け!! 今後は、第2特殊作戦部隊を私が率いることになった!! 隊長は本部より招集され、スネーク部隊の副隊長として重大な任務に取り組むことになられる!!」
副隊長の話を聞いた各員は動揺し、辺りがざわめき始めた。驚愕と不安の声が混じっていた。
「お前たち!! 静かにしろ!! 俺たち第2特殊作戦部隊は戦線の押上が今後の方針になる!!いいか、今後は俺たちだけで任務をこなしていくんだ!! 今まで以上に覚悟をしろ!! わかったな!!」
「「「サー、イエッサー!!」」」
「よろしい。----隊長、私の話は以上であります。」
「----あぁ、ご苦労だった。副隊長。----以上でブリーフィングを終える。各員、解散してよろしい。----」
そして、昌の指示を受けた各員は、解散していった。その場所に、残ったのは、昌と副隊長だけであった。
「----隊長。これでお別れですなぁ。」
「----あぁ。世話になった。----」
「いえいえ。滅相もない。私なぞ、ついていくのでやっとでしたぞ!! ガハハハハハッ。」
この巨躯で右目に眼帯をしている副隊長は、2050年リヤド首都防衛戦以来から、昌に仕えていた最古参である。故に、隊の中で昌のことを最も知っているのは副隊長であるこの男であり、今のように気兼ねなく昌に話しかけている。それに対して、昌の反応はあまり朗らかではない、むしろ冷たいが、この男は全く気にしない。
「----ところで隊長。本部からの招集ということは・・・・」
「----本部は遂に戦争を終わらせる気でいるようだ。」
「やはりですか・・・隊長、ご武運を。」
「----お前もな。」
昌と副隊長は話を終えると雪が降っていることに気づいた。すると、昌は雪を見たことにより過去の記憶を思い出す。
(----雪を見ると思い出す。家族が自分の目の前で死んでいくのを。今でも、鮮明に覚えている。----両親と妹が血まみれで、倒れているのを。----そして、炎に飲まれていくのを----だが、それに対して今は何も感じなくなってしまった。----いったいどうしてなんだろうな? 父さん、母さん、美亜----)
そんなことを昌は考えながら、雪が降っているのを眺めていた。




