再会と誓い
「主よ、久しぶりだな」
「久しぶり、だね、名も無き精霊くん」
「名はあるんだがなぁ……相変わらず、我を名で呼ばないか。だが、それで良い」
クロヒメは、手の平の上で転がっている黒く丸い物体と話していた。
「ところで、主、何故にそなたは意地悪だな?別に失敗しても主には何も起こらぬぞ?」
「え?」
「いやぁ、あはは、ごめん。何かシリアスキラーなんて称号があったから。自分でシリアスな展開を作ってみた」
クロヒメは言い逃れが出来ないと感じたのか、すぐに認めた。
「こ、この主は……、クロヒメ様、私は心配したのですよ?」
「ありがと」
「悪い病を患っていないかと…、しかし、罹っていましたね、厨二病という病気に…」
「な………」
クロヒメがクーがからかっていると分かって、少し後ずさる。
しかし、そこに、
「はははは!あはははッ!!お前は相変わらずだな」
「お前は!?…………だれ?」
「主、こやつは………一体?」
クロヒメと精霊は二人して、突然出てきた青年に疑問を向けた。
目の前の青年はしばらくプルプルしていたが、突然、停止した。
「そうだった。二人はそういうやつだった。…改めて、クロノだ!クロヒメと精霊」
すると、名前を聞かされた二人は、微妙に合点がいった、顔をした。
「あ、あ〜、クロノ君かぁー、ひさしぶりー、げんきー?」
「クロノか、いや、クロノか。ふむ…」
クロノはクロヒメ達の言外を読み取り、また震えた。
──こいつら、と、
「お前ら、覚えてないだろ。βの時、一緒にパーティー組んだろ」
「そうだっけ?私はあまり覚えてないなぁ。精霊くんは?」
「我もだ」
「技を見せてくれれば、思い出せるかも」
「お、おう、やってやるよ。剣閃!」
「あ、思い出した、クロノくんだー。久しぶり」
「あ、クロノ、我も思い出したぞ」
「あの、少しいいですか?」
突然会話に、クーが割り込んできた。よく見るとシャドも遠くの方でスキルを展開しながら無表情に頬を膨らませていた。
クロヒメは精霊召喚とクロノの登場によって、少し状況を忘れていた。
───戦闘中だったッ!!
「ご、ごめん。クロノくんと精霊くんも、ほら手伝って!」
「あぁ、じゃ、俺は突っ込むから。バックアップよろしく」
そして、軽い衝撃波を発生しながら、魔物に突っ込んで行った。
クロノは空中で剣を抜刀し、腕を…、動かした?
だが、動かしたようだ。故に魔物の皮膚はざっくり裂かれて、魔物は呻いていた。
これが、さっき発動しかけていた、剣閃?
考えるのはあとだ。私達も、大技の準備だ!
「行くよ、私は右手で光輝の虹を、左手で、風と影の閃光を撃つから、みんな準備して!精霊くんはシンプルカノンに精霊の力を込めて。早く」
「分かりました」
「わかったよ」
「がう!」
「あい、了解した」
しかし、主よ…。そんな一度に魔法を撃っても良いのか?少し、我は不安だぞ?無理をしているのではないか、とな。
「我の属性である、黒炎を込めた。これで、砲の威力が上がるだろう」
「おーけー、ありがとう」
「う、うむ」
ま、まぁ、褒められるというのも、悪くは無いな。
「クロヒメ様、いつでも行けます」
「おなじく!」
「がぁう」
へぇ、前より魔力を込めるの早くなってきたじゃん。
「おーけー、カウント2で撃つよ。クロノくんいい?」
「あぁ、俺も結構ダメージを与えた。離れるから少し待て……。行け、クロヒメ!」
「はいよ…、2、1……、ファイア!!」
魔物に向けられた、魔法は狙いがズレることなく、着弾した。
ドゴォォォォォンッッ!!と、凄まじい、爆発音は、魔物の悲鳴を打ち消し、その巨大な体を消滅させ…。
ポリゴンへと、姿を変え、空に溶けていった。
『レベルが9になりました。』
『浅海エリアの中型ボスを倒しました。これより、中型は常時発生。大型は稀に発生するようになりました。』
あれ、は中型だったのか…。まぁ、大型はまた今度でいいかな。
「そういえば、クロヒメはギルドに入らないのか?入っていなければ、もし、良かったら、俺の」
「いや」
冷たい風が流れた。クロヒメは言葉を強めて、拒否した。
「男のプレイヤーとかいるでしょ?私はやっぱり無理なんだ」
「クロヒメ……、やっぱりあの時から」
「うん、だからクロノくんごめんね。誘ってくれるのは嬉しい。ていうか、クロノくんが設立したギルドになら………入れるかな」
クロヒメは少し赤くして、目をそらした。
「なら、なんだ?」
「ううん!何でもないよ!あ、もう6時半だね。クロノくんは帰らなくていいの?」
「え?………あぁ!やばい、せっかく食材採れたのに、あいつらに振舞えない!ごめん。クロヒメ、また会おう」
「ばいばい」
遠ざかって行くクロノに手を振り、クー達に目を向けた。一人も欠けていないことを確認すると、笑顔になり、
「さ、帰ろうか」
◇ ◇ ◇
クロヒメ達は浅海エリアを出て、アメジストを使って、自分のホームに戻ってきた。
実は、アメジストには転移の力が込められている。他にも、ルビーはATK上昇、DEFは防御力上昇、エメラルドはHP回復とこの世界の宝石には様々な効果が付与されている。
「いやー、良かったね。ちょうどアメジストがドロップしてさ」
「はい、ところで、クロヒメ様はなぜそんなにニコニコしているのですか?………まさか、男ですか?」
「ぶふっ!?」
思わず、吹き出した。私がクロノくんをだと!?
そんなことあるわけなっ!
「違うよ。みんなでお風呂入ろうよ。気持ち良いと思うんだ、海の後のお風呂は」
「分かりました。で、その邪な視線と、指を厭らしく動かさないでください」
「分かったよ」
そう言って、クロヒメは横になった。
そして、溜め息を一つ……。
クロヒメの溜め息を聞いた一同はそれを静かに見ていた。
「明日は遂にこのゲームが本気を出す」
目を閉じ……。
「私は死にたくない。それ以上にみんなを死なせたくない。だけど、早く外に出たいから、塔を登りたい」
「こんな理不尽なお願いは君達しか聞いてくれない、明日からは本気で攻略する。どうかな」
目を開け、見渡す。
「私は付いていきます。やはり、私もクロヒメ様を死なせたくはないですから」
クーは、やはり忠誠心なのか。いや、しかし、瞳には覚悟の色が見える。
「このパーティーにはシャドがいないと明るくならないからね。それに、暗闇を引き受けるには影を操るシャドが適任だよ」
確かにシャドはここのムードメーカーであり、暗闇には誰にも負けない強さを持つ。
「がうがう!がう、がう」
…、何言ってるか分からないけど。やる気だけは何となく感じた。
「我は、不安だな」
精霊くんは少し、不安の色がある。
「なんで?」
「主は少し、無理をし過ぎる時がある。いくら、MPが回復しやすいスキルがあるとはいえ、無理はいかん」
「う、うん」
精霊の指摘でクロヒメは痛いところを突かれた、と感じる。
確かにMP回復高速化のスキルを手に入れてから、上位魔法や固有魔法を撃ちすぎている十いうのは分かる。
心の中で何か余裕が出来たと、感じたんだよね。
それか、みんなを守る力を授けられて、調子に乗っていたのか。
「「後者だね (だな)」」
「ぷ、あはは、精霊くんにはやっぱりバレてた」
「ははは、主は少し頑張りすぎだ。少しは仲間に頼るというのも覚えるといい。そなたらも、そのために隠れて、特訓していたんだろ?」
精霊に、全てを見透かされていた。クロヒメは堪えきれず笑い、クー達は少し青ざめた。
「なんで?」
「それはもちろん、ずっと主の中で見ていたんだからな」
「じゃ、精霊くんの言う通りにするよ。みんなこれからよろしくね」
「はい、みんな死なずにですね」
「誓いだね、この家族のための」
シャドがいつになく良い事を言った。
誓いか、悪くない。
「がう!」
「主、我もお供しよう」
「うん。じゃ、ここを帰る家と定めて、みんなの誓いを忘れず、急がずにここをクリアしよう!」
「「「「おー!!」」」」




