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実力主義の五人と、フラッグ争奪戦

「これより、来たる四校魔術対抗戦に向けた、一年生の『ロンドン校代表選抜』についての説明を行う」


ホームルームの時間。教壇に立つ実技担当の教師が、黒板にチョークで大まかなルールを書き出していった。


「対抗戦の種目は大きく分けて二つ。五人一組でフィールド上の目標を奪い合う『フラッグ争奪戦』と、各チームから二名が選出される『個人戦闘タイマンの代表戦』だ。まずはこのクラスから、代表候補となる五名を選抜する」


教師の言葉に、クラスの生徒たちがざわめく。

このエリート揃いのクラスで、誰がその五枠に入るのか。


「選出方法は至ってシンプルだ。これまでの実戦形式試合の成績上位者五名を、私がこの場で指名する。もし意義がある者は話し合い、それでも解決しなければ――実技場での『試合』で決めてもらう」


教師は手元のバインダーを一瞥し、重々しい口調で上位五名の名前を読み上げ始めた。


「第一位、クロウ・ラングリー」

「第二位、レイラ・ラングリー」

「第三位、エレノア・ヴァレンタイン」

「第四位、ルシアン・エインズワース」

「第五位、ギルバート・バレット」


名前を呼ばれた瞬間、クラス内に気まずい沈黙と、抑えきれない悔しさの入り混じったどよめきが広がった。


「……一位と二位が、魔力ゼロの編入生二人かよ……」

「いくらなんでも不甲斐なさすぎるだろ、俺たち……」


三位以下のエレノア、ルシアン、ギルバートは純粋な魔術師だ。だが、これまでの実戦演習において、純血のエリート魔術師たちは誰一人として、クロウとレイラのコンビに勝つことができなかった。

どんな強力な魔術を放っても、クロウの【化勁】で無傷に受け流され、ゼロ距離に踏み込まれて一撃で沈められてきたのだ。


不満げに俯く生徒たちを見渡し、教師はダンッ! と教卓を叩いた。


「静かにしろ! 貴様ら、何か勘違いをしていないか?」

教師の鋭い一喝が、教室の空気を引き締める。

「ここは伝統ある魔術研究の場ではない。違法魔術師を取り締まり、殲滅するための『対魔特務機関』の養成学園だ! 敵を制圧できるのであれば、魔術が使用できようができまいが関係ない」


教師は鋭い視線をクロウに向け、そしてクラス全体へと戻した。


「ついこの間のテロ襲撃を思い出せ。犯人が使った特殊な煙幕で、魔術が無効化される事態があっただろう。魔術にだけ頼り切った頭でっかちでは、本物の殺し合いでは生き残れん。クロウとレイラの実戦能力は、文句なしのトップだ。……文句があるなら、今すぐ実技場で彼らを魔術でねじ伏せてみせろ」


その言葉に、反論の声を上げる者は一人もいなかった。

エレノアは悔しげに腕を組みつつも事実を受け入れているようだったし、ギルバートは「ギリギリ五位滑り込みだぜ!」と朗らかに笑っている。そして四位のルシアンは――先日クロウたちを尾行して精神魔術の巻き添えを食らったばかりであり、引きつった愛想笑いを浮かべて大人しくしていた。


「意義はないようだな。では、この五名を本クラスの選抜チームとする。そして――」

教師はチョークを置き、クロウとエレノアを真っ直ぐに指差した。

「『個人戦闘の代表』は、強さと現場での応用力を考慮し、クロウ・ラングリーと、エレノア・ヴァレンタインの二名とする」


「なっ……わ、私ですか!?」

突然の指名に、エレノアがガタッと席を立った。赤髪を揺らし、クロウの方をチラリと睨みつける。

「ま、まあ、妥当な判断ですわね! ヴァレンタイン家の誇りにかけて、必ずロンドン校に勝利をもたらしてみせますわ! ……そこの魔力ゼロ男に足を引っ張られなければ、ですけど!」

「頼もしいね、お嬢様。俺は後ろでサボらせてもらうよ」


クロウが肩をすくめて軽口を叩くと、エレノアは「サボるな!」と顔を赤くして怒った。

だが、クロウの内心は、彼女の言葉とは裏腹に黒い炎を燃やしていた。


「お前たち五人は、これから一年の他の五クラスの選抜チームと競い合い、一年代表の座を勝ち取ってもらう。明後日から早速、校内予選を開始するぞ!」


(――一年の他クラスの精鋭たちとの潰し合いか)


クロウは窓の外を見つめながら、ひっそりと薄ら笑いを浮かべる。

ルールに縛られた試合とはいえ、相手は全力で己を潰しに来る魔術のエリートたちだ。他のクラスにどんな『未知の魔術』を操る手練れがいるのか、考えるだけで胸が躍る。


「マスター。他の五クラスの戦闘データも収集し、対ウロボロスの予備軍がどの程度使い物になるか、正確に見定めます、オーバー」

「ああ、頼んだぞレイラ。……さあて、最高峰の魔術師様の卵たちが、俺の『気』の前にどこまで立っていられるか。じっくり見せてもらおうじゃねえか」


九十年の時を経て蘇った老練なる拳聖は、これから始まる合法的な『死合い』の舞台に向けて、静かに闘気を研ぎ澄ませていた。


本日もお読みいただきありがとうございます!

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