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吁、無情  作者: 調彩雨
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没ネタ其の一 もし後藤さんが居たら

本日二回目の投稿です


此方

本編第二十七話の別バージョンになります


元々考えて居たのは此方だったのですが

後藤さんを護衛から外してしまったので本編の形になりました



「理容室?わたし一応女なんですけど?十年もお世話になってるスタイリストさんが居るんです。予約取り難いの、運良く予約出来たんですよ?やっと髪切れると思ったのに、」

「前に行った所ですよね?其位なら大丈夫です。予約の時間は何時ですか?」


 …。


 何時の間に来たんですか後藤さん。


「良いんですか?都内で、人通りも出入りも多いお店なのに」

「そもそも、ぼく等に白波瀬さんを拘束する権利なんて有りませんから」

「こんな所にぶち込んどいて、良く言いますね」

「…済みません」


 違う。後藤さんに当たったって仕方無い。

 彼はただ、仕事を全うして居るだけなんだから。

 其でも苛立ちは消えなくて、溜め息と共に吐き捨てた。


「なら、奪った荷物返して下さいよ」

「白波瀬さん、サバイバルナイフの携帯は、銃刀法違反ですよ?」


 調べたのかよ。ストーカーか。

 勝手に荷物調べるとか、犯罪じゃないのか。捜査令状は切ったのか。


 否、撮った覚えの無い写真も持ってたな。地球防衛軍にとって、わたしの人権なんて塵芥ちりあくた同然か。


「サバイバルナイフ?ああ、ペーパーナイフの事ですか?見た目サバイバルナイフなんですけど、刃は無いんですよ。単なる玩具おもちゃで、切れません。勝手に荷物調べて変な言い掛かり付けるとか、良い趣味してますね」


 此も本当。護身(虚仮こけおどし)用として、大学入学祝いに親戚のおっちゃんから貰った物だ。刃渡り十五センチ、革製ホルスター付きのなかなか本格的な見た目なのだが、切れるのは精々紙。刃先も丸く鉛筆の尖りすら無くて、気合いで突けば刺傷なら付けられるかな位の、良く出来た玩具だ。

 路上で行われて居た手荷物検査で引っ掛かって、自分の腕に刃を滑らせるパフォーマンスしたから、皮膚が切れないのは実証済みだ。


 其方はダミーで、実際に使える刃物は化粧ポーチの剃刀と、文房具入れの鋏とカッター。

 そして実は其すらダミーで、本当にあかんのはペンケースに入って居る仕込み万年筆だ。一見極普通の万年筆に見えるし使えもするのだが、或手順で蓋を開けると仕込まれたナイフがお目見えする。小型のメス程度の小さな刃だが切れ味が半端無く、うっかり刃に触るとすっぱりさっくり肉が切れる。多分骨も切れる。指位なら簡単に切り落とせるだろう。

 大学院入学祝いにサバイバルナイフくれたおっちゃんがくれた物だ。おっちゃん、わたしを何処に行かせたいのか。


「カッターも、駄目ですよ?」

「ちゃんと使い古したカッターですよ?刃を全部延ばしても、銃刀法に抵触する刃渡りにはなりません。仕事で使いますから、持ち運ぶ正当な理由も有りますし」


 最初から其の場で聞いて居たのか、盗聴器でも在るのか。

 完全に腹滅多刺しを警戒して居る後藤さんに肩を竦めて見せる。


 扨。


 相手は、後藤さんだ。下手な事して最後の切り札で在る仕込み万年筆がバレてもおもしろくない。

 此処は大人しく諦めるか。


 溜め息と共に指先で片目に触れる。


 刃物が無いなら爪と歯で如何にかしよう。

 武器なんか無くてもひとは殺せる。

 手刀ひとつでも、当たり所が悪ければ死ぬのだ。流石にそんな達人技は無理でも、指で目をえぐり出す位はわたしにも、


「…」

「…」


 後一歩でキス出来る様な距離で、後藤さんと見つめ合う。

 両腕は、拘束され済みだ。

 ちょっと力を入れて見ようかな、と、思った瞬間には手を取られて身体から離されて居た。


 …流石達人。抜かりねぇ。


「手、放して下さい」

「不妊なら兎も角、失明は生活に支障が出ますよ?」

「…」


 しらばっくれるか、嫌味のひとつでもぶちかますか、迷って、どうせばれて居るのだからと開き直った。


「失明して支障が出る様な生活ですか、今。どうせもう研究所には戻れませんし、視界が無ければ見たくないものも目に入りません」

「見たいものも見れませんよ」

「此処に、どんな見るべきものが在ると?」

「何時迄も此処に居ると決まった訳では在りませんから」


 どうせ犠にされるのに?とは言わなかった。訊いても仕方が無い。


 視界が無くても生きて居られればマシだ、と言ったら、実際視力を持たないひとに怒られるだろうか。視覚情報の無い世界なんて、わたしには想像も着かないのだから。


 意味の無い討論と、溜め息を吐いて手から力を抜く。

 どうせ平行線なのだから、議論に意味は無い。みんな違ってみんな良いんだ。わたしはわたしの考えを貫けば良い。


「わかりました、少なくとも後藤さんの前ではやりません。責任問題になっちゃいますもんね」

「…そうして貰えると助かります」


 後藤さんは少し眉を寄せたが、低い声で肯定した。






拙いお話をお読み頂き有難うございました


後藤さんが居たら萩沙ちゃんは失明しなかったよと言う話でした

此のパターンだとサクラさんの登場は在りませんでした


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