第三十二話 無駄だとわかって居たからこそ惹かれた
今週二回目の更新です
前話未読の方はご注意下さいな
短いです
泣き腫らした顔で保護され、其の儘寝こけて目覚めたわたしに、佐原さんもサクラさんも何も言わなかった。
ただ、やっぱり色々動いたり触ったりしたのは問題だったらしくて、がっつり叱られて数日間の絶対安静を言い付けられた。
何も出来ないのを良い事に何もせず考え込み、持て余した時間を存分に思考で浪費した。
此の年になって初めての悩みに陥り、途方に暮れて頭を抱えた。
考えても、答えが出ない。否、出したくない。
吁、駄目だ…。
起き上がって頭を抱えたい所だが、そうすると確実に怒られるので片腕で目許を被うに収めた。
気付いた時にはもう遅い。其がわたしと言う人間。
駄目だなんて、知ってるのに。理解して居た、はずなのに。
今更。
今更だ。
命さえ張れる程大事にして居る妹を、信頼して託せる程の恋人が居る彼が、わたしなんて。
馬鹿だな。
彼女が死にでもしなきゃ、望みなんて、無い。
望みなんて、無いんだよ。
大体わたしは、奴を嫌ってたはずじゃないか。
「うー…」
偶然周りにひとが居なくなったのを良い事に、力無い唸り声を漏らす。
訳がわかりたい。馬鹿だろう、わたしは。
否。わたしが馬鹿な事なんて、今に始まった話じゃ、全然ないけども。
うん。
あはは。
馬鹿気てる。馬鹿気てるよ。
今更、恋なんて。
吁、駄目。認めない。
認め…たくない。
だって、何で?
なんで?
寄りに寄って、さ。幾ら何でも馬鹿にも程が在るだろうがよ。無謀だ。無為だ。
どれだけ考えたって、デメリットしか浮かばないじゃないか。
一度会ったきりだけど、可愛いひとだった。わたしと違って優しげで、明るく良いひとそうな。
太刀打ちなんか、出来っこない。
妹を救い彼女と結ばれるなら美談だけど、わたしを救って結ばれたって、彼には害しか無い。
吁。吁。
でも、駄目なんだ。
だって、わかってるじゃないか。
必死に、必死に悪い所探しして居る時点で、もう。
認めたくないだけで、もう。
こう言う理論を脳内で重ねて居る時のわたしの結論は、もう出て居るんだって。最後には、わかったって認めてしまうんだって。
わかったよ。
認めるよ。
わたしは。
わたしは、
…わたしは、夏川晴史に恋して居る。
恋。
そう、恋。
夏川晴史が好きなんだ。人間としてじゃなく、恋愛対象として。
吁。
寄りにも寄って、死を望まれて居る時に、寄りにも寄って、運命みたいな恋人の居る相手に、寄りにも寄って、此の歳で漸くの恋らしい恋なんて。
遅過ぎる初恋なんて、否、遅過ぎた初恋なんて、要らないのに。要らなかったのに。
馬鹿だろう。自分ながら。
まず結ばれないし、万に、否、京にひとつ無い位の奇跡で結ばれたとしても、まず、幸せになれやしない。わたしは兎も角、彼は。運命の恋人を棄てて、更に、良くて即座の別れ、悪ければ地球防衛軍で在りながら地球を救う手を棄てて女を取ったと後ろ指指される日々。
笑えなさ過ぎて、逆に滑稽だ。
まだ、春田さんにでも惚れた方が救いが在った。きっと素敵に慰めて、わたしを侵略者へと送り出してくれただろう。
なのに何でまた、寄りにも寄って。
わたしを生かしたいと望んでくれた相手に惚れるとは。
そんなに生きたいか、自己中め。
そう迄して、生かしてくれそうなひとに縋り付きたいか。
否、うん。わかってる。
醜いわたしはそう迄して生に縋り付きたい。でも、其だけじゃなくて。
だって、それなら、後藤さんに惚れれば良かったんだから。
上司に逆らって迄生かそうとしてくれたひとなんだから。
でも、そうじゃなかった。
わざわざ気の合うひとを避けて、自分でも相性の悪いと思う相手に惚れた。
後藤さんじゃなくて、夏川晴史に惚れたのは、弱り目を突かれたのも有るだろうけど、其以上に。
多分、だけど。
無駄だとわかって居たからこそ惹かれたんだ。
なんて馬鹿。なんて天邪鬼。ううん。きっと、弱虫。
届きそうな葡萄に手が届かなかったら嫌だから、絶対に届かない星を食べたいと泣くんだ。触れられるものに手を伸ばすのが恐くて、水面の月に手を伸ばすんだ。
絶対に届かないものに手が届かなくったって、其は恥にならないから。
卑怯で、臆病な、弱虫。
邪で、打算的な、恋心。
ああ、ねぇ。
此の思いを持て余して、わたしは如何すれば良い?
一日頭を抱え続けたわたしはとある結論に達し、佐原さんから引き継いで護衛に着いて居た椎垣さんに声を掛けた。
拙いお話をお読み頂き有難うございます
やっと、やっと主人公の恋愛が出せたよ…!
ごめんなさい
やっと恋愛出たけど後十話弱で完結予定です…( ;°°)
ジャンル詐欺だ!!とお怒りにならず
生温かい目で最後まで読んで頂けると嬉しいです




