ルクスの宝剣
洞窟に差し込む陽の光から、外の爽やかさが容易に想像できた。
何故かジークだけは明け方にボロボロになりながらテントへと帰ってきていたが、何があったんだろう?
私は疑問に思いながらも、どうせこの人をボロボロに出来るのはマオさんだけだから、また何かマオさんに変なことを言ったんだろうと、考えるのをやめた。
朝起きて、みんな身支度を整え終えると、パルさん達の元へと向かった。
パルさんのテントにはプルさんとポルさん、エンヤ爺がいて、何やら話し込んでいた。
パルさんが私達にいち早く気がついた。
「おはようございます。昨日は本当にありがとうございました」
プルさんとポルさん、エンヤ爺も頭を下げた。
「みなさん、もう旅立たれるのですか?」
「あぁ。早く元の世界に帰る方法を探したいからな。
パル達はこれからどうするんだ?」
ジークが問いかけた。
「私達はこれからこの洞窟を離れます。
ここはルクスの地から近すぎるので、また残党狩りなどが来る可能性もありますので。
なので、ゆっくり身を隠せる場所を探して旅をするつもりです。
そこでまた新たにルクスの村を再建していきます」
「そうか!」
「あなた達はどちらへ?」
「まだ決まってないんだよな。
ルクスの他に魔法に詳しい種族とか、空間転移に詳しい人っていないのかな?」
「魔法に詳しい種族でしたら、私達以上の種族はいないでしょう。
でも空間転移に詳しいかは分かりませんが、東方の小さな島国に、科学技術に優れた人間の民族がいます。
とても勤勉で器用で真面目な民族と聞いてますので、何か手がかりになるようなことがあるかもしれませんよ?」
「そうか!じゃあ、他に当てもないし、次の目的地はそこにしよう。パル!ありがとう」
私達がテントから出ようとしたとき、
「あの……。私もその旅に同行させてもらえないか?」
とアーブルグ族のライラさんが名乗り出てきた。
「私もあなた達の旅に同行して、もっと力を身に付けたい。ゼノドラグスを超えるほどの。そして一族のみんなを救いたい。
それに私はゼノドラグスの手先として一度は悪に手を染め、色んな種族を手にかけてきた。これからはゼノドラグスに苦しめられている人達を助けていきたい。
それが一度道を踏み外した私なりの贖罪だと思っている」
ライラさんは真っ直ぐな目でジークを見つめた。
「贖罪か。もしそう思っているなら、まずは目の前の困ってる種族を助けてあげたらどうだ??
ルクス族は大人が殆どいなくなって、まともに戦えるのもパル達だけだ。
これからの旅の途中には色んなモンスター達に襲われる危険もある。
ライラがいてくれたらきっと彼女達も助かると思うぞ?
残念ながら俺たちの旅はゼノドラグスを倒す旅でも、人助けをする旅でもないからな。そっちの方がライラの今の気持ちに合ってる」
「私もそれがいいと思うわ」
マオさんがジークに続けて言った。
「しかし……私は昨日彼女らを、ルクス族を滅ぼそうとした…。彼女達が私を受け入れてくれるだろうか?」
ライラさんはバツが悪そうにパルさん達の方を見た。
「私達は構いませんよ。まだ完全に信じ切ったわけではありませんが」
パルさんが即答した。
「本当か??」
「はい。私達も安住の地を求めて旅をしますが、いつか村の再建が落ち着いたら、一族をこんなにしたゼノドラグスと戦いたいと思っています。
そのためにも旅をしながら、自身の力を磨いてゆくつもりです。
ライラさんがついてきてくれたら、私達の修行にもとても助かります。あなたの魔力無効が効かなくなるまで修行すれば、ゼノドラグスとも渡り合えるかもしれませんからね!」
パルさんはニコリと笑った。
「ふん。私もゼノドラグスの魔力を無効化できるまで修行するつもりだ。私の無効化を超えることなんていつまでも出来ないかもしれないぞ?」
ライラさんの表情と声は力強くなった。
「うん。これでパル達の新しい旅も少しは安心だな」
ジークがニッカリと笑った。
もしかしたらこの人はここまで考えてライラさんを救ったのだろうか??
私はふと思った。
「さて、そろそろうちらは出発するか!」
ジークがパルさん達に背を向けた。
「待ってください!」
パルさんが呼び止めた。
「これを持って行ってください。
何かの役に立つはずです」
そう言うと、パルさんは2本の剣を取り出した。
「これはルクスに伝わる3本の宝剣のうちの2本です。
そこらへんの剣よりは遥かに攻撃力がありますので、2人のお役にたてるはずです」
ジークとマオさんが1本ずつ剣を手に取った。
「いいのか?3本の宝剣ってことは、本来は3賢者のものじゃ?」
「はい。本来その宝剣はルクス3賢者の証としての物ですが、今後はルクスの象徴として1本だけあれば充分です。それよりもあなた方に使っていただいた方がよっぽどその剣も報われます」
「わかった。ありがたくいただくよ」
ジークは剣を受け取り、じっくりと剣を眺めた。
刃渡り50センチ程のシャムシール型の湾曲した剣だ。
ルクス族の最高権力である3賢者の証ということもあるので、柄は煌びやかな宝飾がされている。
「…いい剣だ。とても」
「それと、これも」
パルさんは続けて2つの緑に光る小さな石を渡した。
「これは魔晶石というもので、魔力を蓄える力があります。使い捨てのもので1回使えば壊れてしまうものですが、レヴィーアの時に私達が使った魔力増幅の魔法が入ってます。何か困った時にこの石を使ってください」
「ありがとう」
魔晶石を受け取り、ルクス族のみんなに別れの挨拶をして、私達はルクスの洞窟を後にした。




