魔法への興味
リガンは頭を悩ませていた。
ゼノドラグスの手下との戦いを終えて、僕たちはルクス族が隠れ住んでいる洞窟へ帰る道中だった。
夜明け前の山道には、ひんやりとした風が吹いていた。
東の空がうっすらと白み始め、みんなの足音だけが静かに続いている。
僕だけまだ何も活躍出来てない。
誰よりも真剣に修行してきた自負はあるのに。
レヴィーアとの戦いの時には、全く何も出来なかったし、今回も敵を1人も倒せなかった。
あのクリスでさえ、レヴィーア戦では体を投げ出してみんなを守り、今回の戦いでは数人の敵を倒してた。
もっと…
もっと強くなりたい。
ジークさんやマオさんのように。
「なにをそんなに悩んだ顔をしてるんだ?」
クリスが話しかけてきた。
クリスとは毎日同じ修行をこなして、毎日数時間は2人で実戦練習をしているだけあって、最近はお互いの表情でなんとなく何を考えてるのかが分かるようになってきた。
クリスは僕のことどう思ってるかは知らないけど、僕にとってクリスは初めて親友と思える存在だ。
きっと僕の表情を見て、さっきの戦いでのことを気にしてるのに気付いたんだろう。
「さっきの戦いのことか…?」
ほらね。
クリスに隠し事はできない。
「うん。クリスが褒めてくれたのはとても嬉しかった。
だけど、僕はまだ勝利というものを味わったことがないから、強くなったって言われても実感がわかないんだ」
「ははは。強くなったって実感か。
俺も自分自身では前よりは少しは強くなったって思えるけど、それでもジークさんやマオさんの異常なまでの強さを見てると、自分の成長なんてちっぽけで、大したことないんじゃないかって思うよ。
でも、強くなるのに近道なんてないんだ。
そのちっぽけかもしれない物をいかに積み上げていくかが大事なんだと思うよ。
たくさん鍛錬してるのに、少しずつしか成長しなくて歯がゆいかもしれない。
でもその歯がゆさに耐えられる人だけが強くなっていくんだ」
「そうだよね」
クリスに言われずとも、分かっていたことではあるけど、そうやって自分が思っていたことと同じことを言ってもらえるだけで、少し安心できた。
「なぁ、クリス」
「どうした?」
「ジークさんやマオさん、パルさん達の戦いを見てて思ったんだけどさ、やっぱり魔法って覚えた方がいいのかな?」
クリスに問いかけた。
今まで魔法には興味がなかった。
だけど、みんなの戦いを見ていて、魔法が使えた方が遥かに戦術が広がると思い始めていた。
それに、さっきの戦いでよく分かった。
僕の一番の弱点は、攻撃が軽いことだ。
どれだけ当てても、敵を倒せるだけの威力が出ない。
筋力はすぐには増えないけど、魔法なら、その弱点を補えるかもしれない。
「俺もな、それは少し考えてた…」
クリスは呟くように言った。
「やっぱりクリスも同じこと考えてたんだね」
「あぁ。でも今は毎日マオさんと短い時間の実戦練習をしてもらってて、一撃もかすりもしない状況だからな。
まずは俺の剣技を磨いて、あの人に攻撃を当ててみたい!だから魔法を修行するとしても、その後かな?」
「確かにそうだね。まずは今の修行を精一杯頑張ろう」
心の靄が晴れていった。
明日からもっと頑張ろう。




