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これは『勇者』と『魔王』の物語  作者: 東の雲
魔王の名

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18/21

大海獣の正体

ジークとマオさんはゆっくりと歩いてきて、超巨大海獣の前に立った。


「おぉー。なんだこのバカでかいドラゴンは!こんなサイズのは初めて見たぞ」


さすがのジークも驚きを隠せない。


「こ…こいつは……まさか」


ドラゴンをみたマオさんの表情が変わる。

目をカッと見開き、薄紫の肌の色が更に濃くなってゆく。


海獣は口を大きく開けると、口の前に光が収束していき、大きな光の球体が出来てゆく。


「ジーク!まずい!!!魔力を全開にして船を守るぞ!」


マオの叫びが響く。


その視線の先――

光球が、脈打っていた。


膨張と収縮を繰り返しながら、内側にとてつもないエネルギーを孕んでいるのが、遠目にもはっきりと分かる。


空気が震え、耳鳴りのような低い唸りが辺りを満たしていく。


「……ああ、確かにアレはヤバいな!」


ジークが歯を見せて笑った、その直後。


光が“流れ出した”。


いや、違う。


放たれたそれはもはや光ではない。


圧縮された破壊そのものが、極太の奔流となって解き放たれたのだ。


ドォォォォォォォォォッ!!!!!!


海面を焼き裂きながら、一直線に客船へと迫る。


通過した軌跡の海水が一瞬で蒸発し、白い蒸気が爆発的に吹き上がる。


「来るぞ!!」


ジークとマオは同時に両手を突き出した。


魔力が奔流となって溢れ出す。


前方に巨大な魔法陣が展開し、緑色の防御壁が形成された。


分厚く、重厚な壁。


――ズガァァァァァンッ!!!!!


放たれた光線は激しく防御壁にぶつかる。


世界が揺れた。


衝突の瞬間、凄まじい衝撃波が甲板を叩き、船体が悲鳴を上げる。


防御壁に触れた部分から、光が押し潰すようにめり込んでいく。


「ぐっ……!!」


ジークの足が甲板を削りながら後退する。


靴底が焼け、煙が上がる。


「おい、マオちゃん……!」


声を張るが、轟音にかき消されそうになる。


「これ……ただのビームじゃねぇ!!押されてる!!」


防御壁が、軋む。


ミシ……ミシ……と嫌な音を立て、わずかに歪む。


触れている部分が赤熱し、溶けるように薄くなっていく。


「喋る余裕があるなら集中しなさい!!」


マオの声が飛ぶ。


額には汗が滲み、その頬を伝っていた。


「これは防ぐんじゃない――押し返すのよ!!」


二人の魔力がさらに膨れ上がる。


防御壁が強く輝き、わずかに押し返す。


だが――


ビームは止まらない。


むしろ、さらに出力を上げたかのように圧力が増す。


ズズズズズ……ッ!!


防御壁ごと、空間を押し潰すように前進してくる。


「がんばれー!!」

「負けるなー!!」


船員たちの叫び。


だがその声も、轟音と熱に飲み込まれていく。


甲板の木材が焦げ、ところどころで火が上がり始めていた。


空気は灼けるように熱い。


息を吸うだけで肺が焼けそうになる。


それでも――


止まらない。


防御壁は、じり、じりと後退する。


あと十メートル。


五メートル。


三メートル――


(……届く……!!)


視界の端で、船体の先端が赤く染まり始めるのが見えた。


このままでは、貫かれる。


(何も、できない……!)


拳を握ることしかできない自分が、どうしようもなく無力だった。



「マオちゃん。このままじゃマジでヤバいぞ」

珍しくジークの表情に焦りの影が見えた。


その時


「私達も力をお貸しします!」


と甲板に3人の女性が現れた。


3人の女性はジークとマオと同じように、両手を前に差し出し、呪文を唱え始める。


すると、ジークとマオの魔法の防御壁が輝きを放ち、爆風を放ち海獣のビームをかき消した。


甲板の船員達もジークとマオさんもその爆風に吹き飛ばされる。


助かった……のか?!

爆風に飛ばされてマストに体を打ち付けたが、なんとか生きている。


しかし安堵をする暇はない。

超巨大海獣の1撃目を凌いだだけに過ぎない。

それを分かっているジークとマオさんはすぐに態勢を立て直していた。


「おい!マオちゃん!防いだはいいけど、どうする?こいつを倒さないと、この客船は確実に沈むぞ?!」


ジークが叫ぶ。


「こいつを倒すのは……無理だ」


マオさんが言った。


「なんだって?珍しく消極的じゃないか」



「この巨体。額の紅き宝玉。この光魔法の威力……」


マオの声は、わずかに震えていた。


「あれは――神獣レヴィーアだ。神が創りし最強の生物の一体……」


視線は逸らさない。

だが、その瞳の奥には明確な“理解”があった。

――勝てない。


「神話の中だけの存在だと思っていた……まさか、実在しているとはな……」


空気が、重く沈む。


「でもよ。やらなきゃ、やられるだけだろ」


ジークが一歩前に出る。その声に迷いはない。


「無駄でもいい。抗うんだ!俺とお前なら――やれる」


その一言で。


マオの表情が変わった。


「……すまないな」


小さく息を吐く。


「伝説を前にして、心が折れかけていた」


そして、口元をわずかに歪める。


「どのみち沈むなら――最後まで足掻くとしよう」


次の瞬間。


二人は同時に甲板を蹴った。


――飛翔。


夜の海上を裂くように、一直線に神獣へと向かう。


ジークが剣を抜く。


その刃に魔力を纏わせ、一気に加速した。


「うおぉぉぉぉッ!!」


全力の一撃をレヴィーアの胴へと叩き込む。


――だが。

ギィンッ!!

金属が砕けるような音。


衝撃が腕を逆流する。


次の瞬間。剣が、根元から砕け散った。


「……は?」


まるで“世界そのもの”を斬りつけたかのような、絶対的な硬度。

破片が宙に舞う。

ジークの腕が、痺れて動かない。


マオはすでに詠唱を終えていた。


「焼き尽くせ――!」


炎が放たれる。


灼熱の奔流が、神獣を飲み込む。


続けて氷。雷。闇。


連続して叩き込まれる高位魔法。


空間が歪み、海面が抉れ、爆音が連続する。


だが――

煙の向こうから現れた巨体は、ただそこに在るだけだった。


傷一つない。まるで、攻撃という概念そのものが通じていないかのように。


「……ふざけるな」


マオの声が低く落ちる。

ジークも歯を食いしばり、魔法へと切り替える。

両手を突き出し、魔力を叩きつける。


爆発。閃光。衝撃。


そのたびに海が裂け、巨大な水柱がいくつも立ち上る。


だが、その中心にいる存在は――揺るがない。

弾かれた魔法が海へと落ちる。


ドォン!!


遅れて水面が爆ぜ、十メートルを超える水柱が夜空へと吹き上がる。


それほどの威力。

それほどの破壊。


それでも。一切、通じない。


「……冗談だろ」


ジークの呼吸が荒くなる。

腕は痺れ、魔力も急速に削られていく。

マオの額からも汗が流れ落ちていた。


「これが……神獣か……」


そのとき。


レヴィーアが、ゆっくりと口を開いた。


先ほどとは違う。


光線ではない。

代わりに――


低く、深い唸り声が漏れ出す。


ゴォォォォォォ……


空気が震える。


いや、違う。


空間そのものが、揺れている。


「……来るぞ!!」


叫ぶ間もなかった。


――咆哮。


その瞬間。


見えない“何か”が、爆発した。


衝撃が壁となり、二人を正面から叩きつける。


「――ッ!!」


防ぐ間もなく体が宙を舞う。


骨が軋み、内臓が揺れる。


そのまま2人は客船へと叩きつけられた。

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