ダメ勇者
しばらくして、女魔王は泣き止み、冷静さを取り戻した。
「そういえば、私達もう4日も旅しているのにお互いのこと全く知りませんよね。
今の魔王さんの話もそうですし、それぞれの年齢も分からないですし、魔王さんに至っては名前すら知りませんし。
簡単に自己紹介しませんか?
新しくリガンも加わったことですし」
と提案した。
女魔王は眉間に皺を寄せたが、すぐさまジークが
「そうだな」
と返事をした。
「まずは私から。
私はクリストファー・オストレイン。
現在17歳です。
気軽にクリスと呼んでください。
まぁ、ジークは既にそう呼んでますが。
トワイザラン王国騎士団の氷の騎士団長をしていました。
史上最年少で王国騎士団長になったのですが、ジークと女魔王さんには足元にも及びません」
続けてリガンが話始める
「僕はリガン。
このニシノ山のベビーリカント族の出身。16歳です」
リガンの16歳という発言にジークと女魔王が噴き出した。
この子供のような見た目で私と1歳しか変わらないなんて!
「笑わないでくださーい!!!!」
そのまま笑いに包まれたままリガンの自己紹介は終わった。
「次は俺だな。
俺はジーク・アストレイ。19歳だ。
メンドくさいことは大嫌い。出来ることなら何もしたくない。休みの日は1日だらだらして過ごすのが理想だ」
勇者らしからぬニートのような発言だ。
しかし、この4日一緒に旅をしてきて、この人の性格は本当に今の言葉のままだと思う。
面倒くさがりで、だらしない。
トワイザランにいた時は知らない土地ということと、無礼を働いて面倒なことに巻き込まれたくないと、必死に着飾っていたらしい。
この旅においても、モンスターに襲われたりした際には9割方は私か女魔王さんが戦っている。
ご飯を食べては口の周りを汚し、着替えては服を逆に着ていたりして、いつも女魔王に注意をされている。
さっきのこの焚き火と夕飯の支度もジークさんだけ何もしていない。
勇者だと思える部分は戦闘能力以外には皆無だ。
だからこそ気になることがある。
「ジークさん。
どうしてジークさんは面倒くさがりで何もしたくないのに、勇者として魔王を倒す旅に出たんですか?」
「姉がな…。
魔族の襲撃で亡くなったんだ。
うちは幼い頃に両親を亡くして、姉は俺の唯一の肉親だった。
当時姉は俺の住んでた国の騎士団長のクレイグという男と婚約しててな。
これから幸せな家庭を築こうという所で
魔族の襲撃があり、その巻き添えをくらって亡くなったんだ。
騎士団長のクレイグは怒り狂い、すぐに姉の敵討ちに魔王討伐に行くって言い始めたんだ。
クレイグは本当にいい奴だった。
心から姉を愛してくれていた。
俺は姉が大好きだった。心から。
そんな姉を想ってくれているウィンも大好きだった。
だからクレイグを死なせたくなくて、一緒についていっただけだ。
クレイグはどっかの騎士団長さんと違って、めちゃくちゃ強かった。
だから旅を始めた当初は戦闘に関してはウィンから剣術や魔法を教わっていたんだ。
それだけ強いクレイグでも1人の力では魔族たちには太刀打ちできず、俺がしばしば助けて入った。
その旅を続けてく中で気付いたら俺はウィンの実力を超えていて、多くの魔族や魔物を倒していくうちに勇者と呼ばれていたんだ」
珍しくジークが悲しげな表情を見せた。
途中さらっと私をディスってるような言葉が聞こえたが、それは置いておこう。
「ジークさん……。本当にお姉様のことが好きだったんですね」
「あぁ。
姉は弟想いでな。
俺が18歳になって定職にも付かずに、だらだらゴロゴロ過ごしても文句1つ言わなかったし、毎日炊事洗濯の世話をしてくれた。ご飯はどれも絶品で、最高の生活だった。
その理想の生活を支えていたのは姉なんだ!!」
やはりこの人は最低の勇者だ……。
クリスは思った。




