王都レイドクス
ー【レイドクス王都】ー
それは圧巻と言わざる得なかった。
ベージュ色をした高い塀はその先がわからぬ程に続いており、それを囲う様に深そうな堀が掘られ水が流れていた。
流れがある事からして何処かの川と繋がっているのだろうか?
また門の大きさも凄い。
高さで20メートル程あり、横幅は10メートル程だ。
その門の下にはゲートが3つ設けてあり、入口が2つに出口が1つとその各場所に鉄製のフルアーマーを着用し、槍を装備する門番が3人づつ並び検問を行なっていた。
それに加えてやはり王都と言うべきか、跳ね橋の上は人の出入りが多く、検問前には商人や冒険者達が列をなして待っている為、その上はごった返している。
「わぁ。しゅごい人がいるね。」
父さんの前ではテレパシーは禁止だ。
「王都だからね。いろんな行商人が出入りして交易を行っているんだよ。また王都の近くにはダンジョンが二つあって、実入りもいいし、冒険者達もそれを求めてやってくるんだ。」
ダンジョン!?本である事は知ってたけど、本当にこの世界ってゲームみたいだよな。
そんな事を考えていると、キリス達が挨拶に来る。
「じゃぁ僕達はここまでなので、また帰る前日にギルドに依頼書を送ってもらえたらいつでも動ける様にしときますんで。」
キリスが父さんにそう言う。
どうやら帰りもキリスさん達に護衛を頼む予定だった様だ。
「分かったよ。じゃぁ帰りも宜しくね。」
「はい!」
礼儀よく返事を返すキリスに対して、いきなり襲いかかる様に俺を胸で抱きしめる二つのメロン。いや、マロン。
「少し会えないから充電しとかないと。子豚ちゃんもこっちに着なさい。」
『ぬぅぉ!何をす‥ぐえ!』
豚もマロンのお気に入り追加になったみたいで道中ずっとマロンに撫で撫でされていた。
だがこれが意外と気持ちいいのだ。
感触でいうと毛を短く刈り取ったシーズーみたいな感触だ。
因みに防御時は硬質化する事も出来る為、俺の攻撃ではダメージを出せなかったらしい。
ダメージを受けたのは俺の手で、後から腫れ上がって回復魔法をする羽目になったのは皆んなには内緒だ。
マロンは俺と豚を抱きしめ別れを惜しむようにするが、パクストンがマロンの首根っこを掴みあげる。
「ほら。さっさとギルドに報告いくぞ。」
「あぁん!!ハル君!子豚ちゃ~ん!」
マロンは引き摺られるかたちで連れてかれた。
さよならフワフワメロンさん。
そう言えばキリスさん達ってギルドのランクで言えば何ランクなるんだろう?
本で見た知識だと確か‥
F~Eランク・駆け出し冒険者。
ブロンズカード。
主に素材採集や、行商者の荷物運びなど。
時折、街の地下に発生するスライムや場外付近に入り込むゴブリンといった下級モンスターの討伐などもする。
Dランク~Cランク・一人前冒険者。
シルバーカード。
護衛や中級モンスター討伐などの依頼を受ける事ができ、またダンジョンも解放される。
Bランク・手練れ級冒険者。
ゴールドカード。
他国によって規定は様々だが、ダンジョン5階層まで入る事ができる冒険者。
1人の実力でD~Cランクパーティーに匹敵する実力と認められた場合。
Aランク・達人級冒険者。
プラチナゴールドカード。
国にその実力を認められた冒険者。
より深いダンジョン探索や、災害レベルの魔物が現れた場合などの討伐依頼を受ける事もできる。
また国から直々に指名依頼なども来る。
Sクラス・超達人級冒険者。
プラチナカード。
国に実力を認められ、尚且つ1人でAランク冒険者20人に値する実力がある場合。
このランクは全世界でも10人といない。
S Sクラス・神人級冒険者。
オリハルコンカード。
1人で国を滅ぼす事が出来るとされる称号。
300年前に存在していた様だが、今はその存在事態も迷信ではないかと疑われている。
って事はDからCランクって事になるよな。
世間を知る為にも一般的冒険者の基準ステータスを見せてもらっても良かったかな?惜しいことをした。
まぁ帰りも一緒ならそのチャンスはあるだろう。
「さ、検問を抜けるぞ。」
父さんがそう言うと従者が門番に割符らしき物を見せると門番は慌てる様に敬礼し、道を開けた。
門をくぐるといきなり市場が広がっていて賑わう光景が目に飛び込んだ。
あらゆる所に安易なテントが立ち並び、人々がごった返す中、商人達が客寄せの声を張り上げる。
「いらっしゃい!いらっしゃい、!」
「もう一声!!」
「ダメだぁ!これ以上は負けらんねぇぜ!」
「おっ!そこの旦那ぁ!コイツァお買い得ですぜ!」
この世界の市場を俺は見た事が無い。
シャルべ領を出た時も人が多いなとは感じたがここまででは無かった。
それに色々な場所から良い臭いが漂っていて食欲を誘うし、そこらで楽器をもった人が路上ライブを行っているのも雰囲気バッチリだ。
市場を廻りたい所であったが、観光は後にして先に王城に行く事が優先の為通りすぎる。
更に奥に行くと住宅街に入る。
住宅街はシャルべ領とほぼ同じ家の作りが建ち並ぶが、その景色は断然違った。赤屋根の統一に外壁がターコイズやオレンジ、レッドなど全て違う色で塗られていて、道に沿う様に木々が統一し綺麗に立ちならんでいる。
道も白色の石レンガを地面にはめ込んで出来ていてとても綺麗である。
そして更にそこを抜けると、3メートル程の大きな柵が横一面に現れ、その柵の向こう側は貴族やお金持ちの住宅街となる。
馬車はその柵を突き当たりにして沿う様に右へと進むと、今度は金色格子の大きな門が現れる。
その両脇にはまた槍を持ったフルアーマーの門番が2人立ち、警備していた。
そこでまた従者が割符を門番に見せると門番は貴族街の門を開く。
ここからは一変して建物が大きくなり、庭がある家も多くなる。
更に奥に行けば行くほど屋敷は大きくなっていて、庭に飾る石像や花などの飾りが鮮やかになり、オマケに噴水まで付いている屋敷まであった。
さぁ、ここに来てやっと王城に辿りついたと思うとその立派差は他の比でないくらいの美しさに感嘆の声を漏らす他ない程の圧巻だった。
王城の廻りは大きな池になっていてその中央に城はそびえ立っているわけだが、その城の外壁は赤茶色のレンガ造りとなっており屋根はエメラルドグリーンで統一されている。
また近づくと更にその所彼処に施された彫刻の繊細さや、高い技術は正に芸術を知らない物でも芸術は素晴らしい物だと言わざる得ないものだった。
また王城の門前で門番が立つ。
今度は父さんが馬車から降り立つと、門番が父さんに敬礼する。
「シャルべ領党首、ネイブル・フォン・エステード伯爵だ。この度は王との謁見で参った。」