王と謁見
門が開かれると、馬車は門をくぐり王城の入り口前にある、大きなロータリーで馬車から父さんと俺は降り立った。
豚も一緒にと思ったが、父さんが「流石に王城内に連れ込むのは‥」と少し渋ったので仕方なく馬車に置いてきた。
いくら契約従魔で危険は無いとはいえ、魔物?そっち系のものだから仕方ないか。
幸いにも豚は、村で住んでいた時は馬と同じ干草も主食だったらしく、馬車を置く馬小屋で待機してもらう事とし、従者は他の案内係が来て使い専用の客間へと移動した。
客間に入るなり王城のメイドが頭を下げ待っていた。
「ネイブル伯爵様。ようこそいらっしゃいました。話は伺っております。早速ですが、玉座の間にご案内致します。」
メイドがそう言って進みだしたので、俺はつい何時もの癖でレビテーションを発動し飛ぼうとすると慌てて父さんが俺を抱き抱える。
「ちょちょちょ!!何してるの?こんな所でそれ使っちゃダメだよ!」
え?、あっ、そうか。ここは家じゃなかった。
歩ける様になったとはいえ、大人の様に歩幅が大きくないので、普段大人に合わせると走らなければならない。
なので何となしにやってしまったのだ。
「ご、ごめんなしゃい」
「分かればいいさ。とりあえずここでは歩くペースに付いてくるのも大変だろうから僕が抱っこするよ。」
父さんは俺を片手でヒョイと抱き抱えた。
「やっぱり子供だね。軽い軽い。」
何だか嬉しそうな顔をする父さん。
地味に照れ臭いぞ。
そしてそのまま玉座の間の扉に辿りつく。
扉の彫刻は外観に負けず劣らず美しく繊細で、玉座の扉前に居る2人の騎士達も門番とはまた違い、フルアーマーの端々に金色の細工が施され、胸の部分には王家のドラゴンの形をした紋様が描かれている。
武器はハルバートを所持だ。
門番が父さんを確認すると、敬礼し頭を下げ、扉を開いた。
開いた先は、前世でいう体育館程の広さがあり、端々には3メートル程あるのではないだろうかという窓?が左右3つづつあり、天井には小さな精霊が描かれた神秘的なステンドグラス。
太陽が真上にある事もあるため、ステンドグラスを通して光が玉座の間に絵を浮かび上がらせる。
また、中央には高級そうな赤色の絨毯が敷かれ、20メートル程伸びた先に段差が一段ある。その段差の上には高級そうな椅子が置いてありその場所には堂々たる威厳で座る人物がいた。
その人物はグレイアッツシュ系の髪を短くカットし、凛々しい顔立ちをした40代程の男だ。
勿論装いも華やかで、身体も鍛えているのか逞しかった。
恐らく、いやあの男が王なのだろう。
そしてその隣には60代程に見える細身の男が立っている。
頭のテッペンがツルツルになっていて、横の赤髪がくせ毛なのか半分にしたボールが張り付いている感じになっている。
何だろう?何かに似ている。
んーと‥、あ!!アレだ!
前世でまだ婆ちゃんが生きていた時よく買ってきていた鶯ボ◯ルに似てるんだ。
うわぁ~、でもコレやっちゃったよ。
こうなったら俺ってば、もうかなり意識しちゃうんだよなぁ。
アレは恐らく宰相とかそこらなんだろうけどもうコレはダメだな。
鶯だよ、もう完全ウグちゃんになっちゃったよ。
オッホン。頭の中を整理し、話を戻す。
間、変な例えをしていしまったが、玉座の両の壁際にはまた先程と同じフルアーマーを着た騎士が左右2人ずつ姿勢良く佇んでいた。
俺と父さんが玉座の段差前にたどり着くと、父さんは俺を腕から降ろし、胸元で右拳を左手で覆い跪く。
「この度は謁見の時間を作って頂き誠、感謝致します。」
慌てて俺も父さんと同じポーズを取った。
「面をあげよ。」
その声は渋く深みのある声だった。
俺と父さんはその声で顔を上げると、王が俺を見つめていた。
その瞳は真っ直ぐで、とても活気に満ちた感じだ。
「よくぞ来た。ネイブルよ。書状は見せてもらったぞ。して、この幼児が今回の謁見の用だったな。名は何と申したか?」
明らかに俺に尋ねてきたので、テレパシーでとも考えたが、ここは普通に返す。
「初にお目にかかりましゅ。ハル・フォン・エしゅテード でつ。」
相変わらず滑舌が上手くいかない。
「うむ。滑舌はともかく、確かに幼児とは思えん挨拶だ。さて本題の件だがネイブル卿。これに書かれている事は誠真実であるか?」
「はっ!教会で確認はしてはおりませんが、書状に書いた通りが真実で誠かと思われます。その理由は公に出来ませんが…。」
「ふむ。それが誠ならばな。だがネイブル卿よ。お主は良き働きをしてくれ、信頼もしておるが、やはり見た限りでは只の幼児だ。証明が無ければ何ともいえん。」
「はっ!ですのでその証明に神聖大聖堂を使わせて頂きたいのです。」
「神聖大聖堂か。ふむ。確かに神の使徒であればあの場所が最適であるな。グイス宰相。」
キタぁ!!!
「ぶぅはっ!!」
思わず吹き出してしまう俺。
気づかないでくれ!とも思ったが、やはりそうは行かず、宰相が俺を見る。
見るんじゃない!!ってかマジヤバイ!ww
俺は誤魔化すべく、咳込むそぶりをする。
「ゲホッ!ゲホッ!も、申しゅ訳ありましぇん。唾液が喉に詰ゅまりまちた。」
宰相とその場にいた皆が訝しむ表情をする。
「大丈夫ですかな?」
宰相が真顔で俺に尋ねる。
あかん!あかん奴や!ツボに入ってしまったらしい。
悪い癖なんだよなぁ。
全然人が面白いと思わない物でも俺の中でシュール過ぎると笑ってしまうんだ。
込み上がる爆笑の火山を抑えるべく肩がヒクつく。
もう鶯を見る事が出来ない為、頭を下げる。
そして下げる!!
見ないでくれぇ~!ww
「ゴホッ!ゲホッ!ゴホッ!ゴホッ!だ、大丈夫です。#失礼__しちゅれい__#しました。」
俺は無駄に咳き込み、そう言うと納得してくれたようで鶯は「ならいいです。」と言って近くの騎士に王が言わんとした事を告げる。
「すぐに神聖大聖堂を開く準備を整えよ。」
「はっ!」
騎士は直ぐ様に出口へと走っていき、出口前でもう一度王に向き、右拳を左手で覆い軽く頭を下げた後退室した。
「では我々も場所を移そうか。話はそれからだ。」
王はそう言って席を立ち、右奥にある王専用の出入り口から宰相と共に先に退室した。
俺と父さんも騎士の誘導で退室し、騎士からまた先程のメイドに変わり案内される。
父さんはまた俺を抱いて歩きだす。
ふぅ。なんとかなった。
けど、思い出すだけで笑ってしまいそうだ。
人の事で笑うなんてダメだぞ俺!!と自身を戒めるが鶯ボー◯みたいな人がグイスって言われたら笑っちゃうでしょ?わからない?
いやもう分かって貰わなくても自分がツボってるからどうでも良いのだ。
廊下を歩く最中でもまだ肩のヒクつきが収まらない俺を見た父さんが俺に耳打ちする様小声で尋ねる。
「何があったの?」
「いえにゃにも。」
俺がそう言うと頭にクエスチョンを飛ばすように首を傾げる父さんだったが、とても言えない。むしろ自分しか分からないし!
しかし、この気持ちを誰かに吐き出さなければツボったままだ。
大聖堂でもう一度会ったりなんかしたらもう火山が噴火しちまいますよ!
誰かいないか!?誰か!と辺りを見渡すと、城内の警備で回る騎士達に目をつけ、通り過ぎた後ろ側の騎士に自分の噴火寸前の気持ちをテレパシーで打つける。
(そのまんまじゃねぇーかよ!!!)
テレパシーを脳内に打つけられた騎士は慌てふためき腰を抜かすし地面に倒れこむ。
それを見ていた他の警備騎士が慌てて倒れた騎士を起こす。
「おいおい大丈夫か!?」
「い、今、声が‥??」
騎士は何が起こったか分からない感じになっている。
「声?疲れてるんじゃないのか?」
よし。これで落ち着いて大聖堂に行けそうだ。




