爺ちゃん独り言。
蛇足的その後話第3弾。
爺ちゃんは実はいろいろしっていました。
ひ孫から慌てたような声で「母さんが居なくなった!」と電話が来た時、あぁ、奴のいっとったことが本当になったんだなぁ、安堵のため息をついた。
孫娘がひ孫の13の誕生日に居なくなる
それは20年以上前に突然「弟子にしろ」と押しかけてきた金髪の小坊主が預言していたもののひとつだった。
小僧が話したのは、神を寿ぎ、時に魔を祓い、不可思議の世界に触れることの多いわしでも首をかしげるほど聞いたことのない不思議な話だった。
それでも信じる気になったのは、見せられた今まで触れたことのない系統の魔術と……。
将来、再び自分はあの世界に帰る。
それまでに今以上の力をつけ、かの世界の魔に対抗しなければならない。
助けたい、大切な人達が待っているのだ、と言い切った小僧の瞳が真っ直ぐで澄んでいたからだ。
これでも言霊を信仰する神社の神巫。
言葉にまやかしが含まれていれば気付く自信はある。
小僧の目は真剣で偽りなく、かと言って狂人のそれとも当然違っているとなれば。
結局、異例とはいえわしは小僧を弟子にとる事にした。
教えてみれば、小僧は優秀な奴だった。
ふざけた格好の割に中身は真面目で、教えた事はまるで水がしみ込む砂の様に速やかに身につけていった。
試しに無理目の課題を与えてみても、文句を言いつつもクリアしてみせる。
当初、特例に反感を持っていた者たちも小僧の努力とめげない姿勢に、いつの間にか仲間と認めていたようだ。
皆でコッソリと人のことを「クソジジイ」呼ばわりしておった事を知った時は纏めて修羅修行コースに叩き込んでやったわ。
更にいつの間にか孫娘と恋仲になり、結婚の承諾を得に来た時には、最終修練として私自らボコボコにしてやった。
小僧はいい奴だ。
少々問題のある孫の事も全てを知った上で好いてくれておるのも知っている。
だが、理性と感情は別物なのだ。
わしもまだまだ修行が足りんようだな。
たぶん30前後で自分が狭間に落ちて居なくなる事。
孫がひ孫の誕生日(たぶん13歳)に消える事。
あやつはいろいろな事を言い残し、本当に居なくなった。
表向きは引率中の事故に巻き込まれて行方知れずになったらしいが、あやつの言う事が正しければ、異世界とやらに行って大暴れしている事になる。
落ち込む孫に「また会える」とだけは伝えたけれど、死後の世界と解釈した様だ。
……うむ。似た様なもんだろう。
そして、今回、めでたく孫が消えた。
どうするかは分からんが、大事な息子を残して、そのままにするわけがない。
意地でも帰ってくるだろう。
「もうすぐ爺ちゃん着くから、大人しく待っときなさい」
作りかけの料理を残して母親だけが忽然と消えた状況にひ孫はパニック寸前のようだ。
まぁ、状況だけ見たらちょっとしたホラーだしのう。大人びて見えても、まだ13歳という事だな。
もともと誕生日パーティーに呼ばれてた為、ちょうど移動中だったので、後10分程で到着だ。
心持ちアクセルを踏み込みながら、今頃感動の再会をしているだろう孫と小僧を思い浮かべる。
「小僧を連れて、早く帰ってくるんだぞ、希」
見えてきたマンションを見上げつぶやく。
そうして、ひ孫を囲んで誕生日パーティーをしてやろう。
「あぁ、その日が楽しみだな……」
と、いうわけで、ちまちま書き溜めた3話分、一気に投稿でした。
後は、月乃ちゃんの話、ですかねぇ。
読んでくださりありがとうございます。




