聖なる小水
「して、何用なのじゃ?長らく使っておらんかった転送装置をわざわざ使ってきたのじゃ。何か大切な用があるのだろうと待っておったのじゃが」
ずっと使われていなかった転送装置が突然光出したので、発見した人が何事かと報告し、ネブラが呼ばれたらしい。
「呪われた黒龍ってわかる?」
「黒龍?……姉様が昔呪いをかけた、じゃじゃ馬プルートのことかや」
「多分そうだね。要は、そのプルートの呪いを解きたくて来たんだ」
「ふむ。よくわからんが、わかったのじゃ」
「……言っておいて何だけど、呪いって解いていいものなの?罰で与えられていたものなんでしょ?」
「わしは知らん。が、おそらくもうよかろう。姉様は多分呪いを解くのを忘れているだけじゃ」
「そうなの?」
「姉様は忘れっぽいからの。ともあれ、姉様に聞いてみるのじゃ。最悪わしが手を貸してやる。お主には借りがあるからの」
「そうしてくれるとありがたいよ」
ネブラと一緒にネブラのお姉さんのところに行った。
「初めまして。現龍王さまなのかな?」
「うむ。妾が龍王のステラじゃ。妹が世話になったそうじゃな」
「早速だけど、龍王様が昔プルート?にかけた呪いを解いてほしいんだ。理性を失ったまま王都に近づいてきているらしくて、危険なんだ」
「何じゃ?プルート?」
「昔姉様が罰を与えてどこかの洞窟に閉じ込めていた、あのプルートなのじゃ」
「ふむ。……ああ、あやつか。天界の果実を盗んだとかいう。そういえばそんなこともあったの」
「もう十分罰は与えたし、呪いを解いてやっても良いのではないかと思うておるのじゃ」
「そうじゃな。かまわんじゃろ。ではシアンよ」
「うん?」
「主に遣いを頼みたい。あいにく妾は多忙の身での。代わりに呪いを解いてやってくれ」
「それは構わないけど、どうすればいいの?」
「簡単じゃ。妾かネブラの小水を飲ませるのじゃ」
「……え?」
「姉様?」
「何じゃ。皆して耳が遠くなったのか?おしょんを飲ませよと申したのじゃ」
……聞き間違いじゃなかった。何言ってんのこの人。
「おしっこで呪いが解けるの?」
「そうすることによって妾の一族に服従したことを示すのじゃ。呪いとはいうが、正確には隷属魔法じゃな。隷属の強制力を弱める時には、薄めた小水を飲ませることもある」
「そういうものなの?」
「わしにも全然理解できん……」
というか、どうやって飲ませるの。おしっこを預かって無理やり飲ませろってこと?
「ではネブラ、シアンのために出してやるのじゃ。お主の恩人じゃろう」
「な!?ね、姉様?冗談じゃろ?」
「この容器を使うが良い。線が入ってるじゃろ?そこまで満たせばOKじゃ」
「な!わしは嫌じゃぞ!姉様が出せばよかろう」
全然OKじゃないぞと、顔を真っ青にしてプルプルと首を振るネブラ。
「妾は嫌じゃぞ。恥ずかしいではないか」
「わしだって恥ずかしいわ!」
今度は真っ赤になってぷりぷりと怒り出すネブラ。すごく気の毒だとは思う。早く決断してほしいけど。
「……ネブラ?姉の言うことが聞けんのか」
ギラリと鋭い目で妹を睨む。
「うう……睨むのはやめてほしいのじゃ姉様。わかった、わかったから」
「ごめんねネブラ様。よろしくね?」
「……これはもはや貸しじゃからな。覚えておれ!」
なんか八つ当たりされた。
「そのうち返すよ。さて、今から出る?」
「……シアン。お主もう少しれでぃーに対してじゃな……」
「よかったら手伝うけど」
「何をじゃ!」
「ぐえっ」
私の頭を思いっきり叩いた後、ぷりぷり肩を怒らせながらどこかへ歩いて行くネブラ。全然手伝うのに。




