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巡る導師に惚れぬものなく  作者: 亜城優


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ベレニス

「よお、お前が例のシアン君か。まあ座れ座れ」


え、そっち系なの。全然近衛感ない。団長感はあるけど。


「あたしはベレニス。こいつは副官のディアーヌ」


「よろしくね〜」


「腹減ってんだろ、とりあえず食おうぜ?」


「確かにその方がありがたいかな。早速いただくね」


「おう。マナーとかめんどくせえから、全部いっぺんに持ってこさせた。好きなもんから食ってくれ。そうだ、ワインもあるぜ。いける口か?」


「好きだよ」


「よし。じゃんじゃん持ってこさせろ!」


「……お肉、美味しいね。肉厚で噛みごたえがあるのに、やわらかい」


「だろ?いい肉使ってっからよ。もうその辺の店の肉なんか食えやしないぜ」


「むしゃむしゃ。本当に美味しいでござるね。むしゃむしゃ」


「……さて、結局のところジャンヌはこいつのどこを気に入ったんだ?」


「おや、シアン君ではなく私に質問するのかい」


「お前がそもそもの原因だからな」


「そうだね。私を相手に臆しないところと、からかいがいのありそうなところかな」


「度胸はありそうだな。図太い神経してそうな顔だ」


君も大概だよ、って言ったらよくないかな。よくないよね。


「シアン君は、ベレニスに言われたくないって顔してるよ」


「あたしは団長だからな。度胸がないと務まらねえよ。で、シアンの方はどうなんだよ。ジャンヌに誘われて、フラフラついてきたんだ。なんか理由でもあんのか?」


なんとなく試されてるような感じがする。というより、実は警戒されてるんだろうか。


「ジャンヌのことをもっと知りたいと思ったからね。ここに住んだら、忙しいジャンヌとも会う時間が作れるでしょ?」


「お?まさか、こんな変人に惚れたとか言わねえよな?」


「変人とは私のことかい?もしそうなら、淑女に向かってその言い様は聞き捨てならないのだが」


「ちょっと変わってるかもしれないけど、魅力的な女性だよ。ジャンヌは」


「短い期間で魅力なんてわかるのか?」


「だからこそ、これからもっと知っていきたいと思ってるんだ」


「ふーん。ま、ジャンヌがこんだけ入れ込むのも珍しいしな。好きなだけゆっくりしてけよ」


「ありがとう、ベレニス」


「呼び捨てかよ」


「やっぱり様付けした方がいいの?」


「いや。ただ、いきなり呼び捨てにされるのは初めてだからな」


「そっか」


「あとは、さっきから肉ばっか食ってるそいつだが……」


「む?拙者でござるか?あ、おかわりお願いしたいでござる」


「……まあ無害そうだしいいだろう。よし、シアン。お前のこれまでの話を聞かせろ!旅してきたんだろ」


オボロは無害だね。そこまで素性は知らないけど、純粋でいい子だって保証できる。


「そうだね、じゃあ旅を始めたきっかけから……」


……女の子たちとの関係はあえて伏せておいた。プラスには働かないだろうしね。


「今度はベレニスとディアーヌのことも聞かせてよ。二人のことも知りたいんだ」


「ん?ジャンヌの話じゃなくてか」


「二人にも興味があるんだ」


「ディアーヌちゃんは構わないよ〜」


「おろ。いいのかジャンヌ?こいつ案外お前に惚れたんじゃなくて、ただの美人好きかもしれねえぞ?」


「大丈夫。シアン君は私の中身に惹かれたらしいから。私以外に可能性があるとしても、ベアトリスぐらいかな」


「……あたしに喧嘩を売ってるってことでいいのか?」


「ていうかディアーヌちゃんもしれっと馬鹿にされてる?」


「違うさ。ただ、私が真実と思うことを告げたまでだよ」


「よし、外へ出ろ!久しぶりに手合わせしようじゃねーか!」


「私闘は禁じられているはずだよ。もっとも、もし戦ったとしても私が勝つだろうがね」


「上等じゃねーか、こんにゃろー。バレても誰もあたしを咎めやしねーよ」


「そういう問題ではないのだがね。示しがつかないという話を……」


「……いつもこんな感じなの?」


「お二人はとても仲がよろしいですから」


……気にせず食べようか。

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