4-10 乃愛ママ
「というわけで、なんとかなるかしら?」
「なるわけないだろ」
「嘘つき!昨日はわかったって言ったじゃない」
「考えるとは言ったが、どうにかするとは言ってない」
普通に考えて乃愛が自力で説得するしかないのだよ。
「何度も言うけど私がママに説得したところで、どうにかなるわけないのよ」
「乃愛ちゃんのお母さんってどんな人なの?」
「あ、それ私も気になります」
「ママは別に厳しいって訳じゃないんだけど、なんというか……過保護なのよね。イギリスから日本に帰ってくる時も大変だったのよ?その時はかなり無理言って言うこと聞いて貰えたけど。そう何度も聞いてくれるとは思わないわ」
乃愛の言う通り、過保護なのだとしたらどうして一人暮らしさせようとしているのだろうか。そっちの方が心配になるような気がする。
「なぁ、その過保護エピソードをなんでもいいから聞かせてくれないか?」
「えっ?そうね……私が10歳の時だったかしら。ママの料理の手伝いをしようとしたのだけど、危ないからダメだとか。あとは、何処へ行くにも送り迎えされたり……ってこれは裕太も知ってるわよね」
確かに乃愛と外で遊んでいた時は毎回ミアさんの迎えがあったな。実際、ミアさんとはそこでしか面識ないわけだし。いつも迎えに来る人って印象だったな。
「意外だな、俺は厳しい人だと思ってたよ。いつも無口だし言葉に棘がある感じするし」
「ママそういうところ不器用だから」
なるほどねぇ。でも、だからといってどうにかなるかと言われるとそうはいかなくてだな。
「じゃあ、乃愛ちゃんと裕太くんが付き合ってるってことにしたら?それなら許してくれるんじゃない?」
「それだと、夏音が家から出ていくことになるけどいいのかしら?」
「うっ……よくないね」
「それでは、いっその事、諦めて、私に部屋を譲るというのはどうでしょう」
「たまに思うのだけれど、すみれって裕太のことになると手段を選ばないわよね」
「あの、ひとついいか?」
「なになに?なんか思いついたの?」
「もう考えるの疲れたからこうしない?」
俺は一つの案をみんなに伝える。
その場のみんなはとりあえず他の案が見つかるまではそれでいこうと納得してくれた。
後日……
「なるほど、まぁ、いいでしょう」
「ほんとですか?」
「ええ、でもその代わり私からもいいかしら?」
「と、言いますと?」
ミアさんからの意見を聞いた俺は答える。
「俺はそれで構いませんよ」
普通に考えれば厳しいものであったが乃愛なら余裕だろうと俺は思った。
「それと、もうひとつ。乃愛が言ってました。ミアさんの対応が過保護過ぎるって。それはどうしてかなって」
「別に過保護にしているつもりはないのだけれど。あの子、すぐに調子に乗るから」
「はぁ……」
「悪いわね。私は用があるからこれで」
俺はこの瞬間、全てを完全に理解した。




