3-27 3倍返し
「やっぱり、夏音には勝てなかったなぁ」
「え?でも、私たち同着じゃ」
「いいの、そもそも夏音が声掛けてくれなかったらあたしもゴール出来てなかったもん」
「みかんちゃん……」
「約束通りなんでも1つお願い聞くよ?」
「あ、そうだった……どうしよう」
「先に言っとくけど、学校に戻ってきてとか仲直りしてーってのはなしだからね。頼まれなくてもそのつもりだし」
「体育祭が終わるまでに考えときます……」
これで一件落着だな。
「2人とも仲直りできたみたいでよかったよ」
「裕太くんも迅くんも迷惑かけてごめんね」
「俺たちは迷惑だなんて思ってないよ。みかんちゃんたちには仲直りして欲しかったし」
「なぁ、俺も宇佐美に勝ったし1つ頼んでもいいか?」
「なんで、そこで俺が出てくる」
「まあまあ、いいじゃないの。あたしが許可する」
「ちょっ!?なんの権限があって言ってんだよ」
「ダメなのか?」
ちょっとわざとらしく目をウルウルさせてみる。いや、男の俺がやっても意味ないとはわかってるけどノリでな。
「……し、しょうがねぇなぁ」
あれ?通った?
「お前は、今日中にみかんから返事もらってこい」
「返事ってなんのだ?」
「お、惚けるのか?」
「ごめん、裕太くん。あたしにも検討つかないんだけど……」
そっかー、なら仕方ないよねー。
俺はスマホに録音した音声を流す。
『あはは、たまには夏音以外の人をからかうのも悪くないね』
ここで、表情を変えるみかん。
一方、宇佐美はまだ気づいていない様子。
『まったく……そういう所なのかもな』
『え、何が?』
ようやく宇佐美も気づいたようだ。どうしてお前が知っている?と言わんばかりの形相で俺を見る。
『いや、裕太に聞かれたんだよ。どうしてそこまでみかんに協力するのかって……』
「「ストーップ!!!」」
おやおや、お2人さん、息ピッタリでお似合いじゃないですの。
可哀想なので俺は音声を停止させる。
「いつものお返しだ。これくらい良いだろ」
「それはそうと、お前あの時いたのか?」
「そうだよ、隠れて聞いてたの?」
「心外だなぁ。この音声が録音された時、俺は夏音の隣にいたぞ?」
証拠にと、同じ時間に撮影された神子さんのゴールシーンを見せる。写真の隅には夏音も写っていた。
「じゃあ、誰が?」
「私よ」
この4人ではない声の主に反応して2人は振り向く。
「あなたがみかんね。裕太から話は聞いてるわ。私は乃愛、こうして話すのは初めてね、よろしく」
「あ、う、うん、よろしく」
「俺が乃愛に頼んで2人のことを探しててもらってたんだよ。そしたら、たまたま面白いものが見れたって乃愛からこれが送られてきたって訳」
かなり趣味は悪いと思うがな。
その趣味の悪さにはみかんもおかしいと思ったのか俺に問い詰める。
「ちょっと、あの子いったいなんなのよ」
「転校生の乃愛だが……」
「うん、それは聞いてるからわかってる。あたしが聞いてるのはこのねじ曲がった趣味のことよ。迅くんはともかく初対面のあたしの声、録音しますか?普通」
まぁ、こいつはそういうの気にしないタイプだし。知り合いの知り合いは知り合い的な考えなんだろう。
「まぁ、話せば長くなるがかくかくしかじかでな……」
本当にこの言葉って便利。
「分かりたくないけどわかった……」
反論を諦めてくれたようで何よりです。
「しょうがない。今日中に答えは出すけどそっちの進展も聞かせてよね?」
「へいへい」
「あの……私には何が何だか」
1人だけ会話に入れなかった夏音。
俺はイヤホンをセッティングして夏音の耳に装着。例の音声を再生する。
しばらくして、状況を把握した夏音はこんな提案をする。
「あの……1つだけのお願いなんだけど2人でデートしてきてってのはダメかな?」
「夏音、それはみかんの返事がOKならの前提じゃないか?」
「裕太くん、わかってないなぁ。いつもの3倍はお返ししないと……ここで返事を聞かないとダメでしょ」
夏音の悪魔の部分がかなり表に出てきちゃってるんだけど……
ま、俺もそれには同意なので止めはしない。
「うん、夏音は敵にしない方がいいってことがよくわかったよ……どうする?迅くん」
「俺はみかんの返事を待ってるだけだけど?」
「くっ……迅くんまでそっち側か」
「じゃあ、私はみかんの味方になった方がいいかしら?」
おい、こら乃愛!!お前はどこまで空気が読めねぇんだよ。
一番怖いのがこれが本気なのか冗談なのか未だに分からないところである。
「よし、乃愛!この2人が上手くいったら家でパーティーしよう」
「え、本当に?よーし、みかん!!OKを出すのよー」
「寝返るの早っ」
悪いな、俺が本気を出せばこいつを手懐けるのは容易いことなのだよ。
「みかんちゃん諦めな。裕太たちこれは折れないよ」
「てか、この状況で断れるわけないでしょ!!!」
「お、それじゃあ?」
「はいはい、こちらこそよろしくお願いしますー」
今、ここに1組のカップルが誕生したのであった。多少強引ではあったが……
さて、一区切り着いたところで夏音にはもうひと仕事だ。
「やあ、待ってたよ」
「待たせたな、愛莉」
「それで?ボクに話って?」
「まぁ、少しくだらない恋バナだよ」
ここからは俺と許嫁の勝負だ。




