1-18 手紙
5人で協力したお陰か、1時間ほどで作業は終わり、帰り際に「今日は本当にありがとうございました。明日からは学校へ行けるかと思いますので、そのときはよろしくお願いします」と言っていたので心配要らないだろう。
家に帰り、涼葉の作った晩御飯を食べ終え、自室に戻った俺は宇佐美とみかんに今日のことを聞いてみる。
スマホを手に取り、チャットグループでメッセージを送る。
グループ名は「許嫁を探し隊」みかんが俺と宇佐美を招待して勝手に作ったグループだ。
『織田さん、なんか怪しいところあったか?』
『俺は特になかったと思うぞ。なんかすげぇいい人そうじゃん』
『あたしもなかったと思うな。それに父が転勤したって言ってたけど、許嫁のお父さんって社長さんなんだよね?転勤したのが本当なら違うんじゃない?』
みかんの言う通りだ。やっぱり俺の考え過ぎか?と、そこへ俺の部屋のドアがノックされ、外から涼葉の声がした。
『裕にぃ、いる?』
俺がドアを開けると、そこにはパジャマ姿の涼葉が立っていた。手には手紙?のようなものを持っている
……またか。
「また許嫁の人から手紙来てたよ。裕にぃも大変だね。じゃあ私はもう寝るから。おやすみ」
そう言って、俺に手紙を渡した涼葉は自分の部屋へ戻ってしまった。
もう、23:00か、俺もそろそろ風呂に入って寝ないとだな。
「っと、その前に」
涼葉に渡された手紙を見てからにしようか。
『天野裕太君へ
お手紙は入学式の時以来ですね。私は毎日、天野君の楽しそうな学校生活を見届けることができてとても嬉しく思います。最近は特に3人の男女と仲良くされているのですね。クラスメイトとの交流はとても良いことだと思いますが、他の女性についていってしまってはダメですよ?天野君は私のものですから』
……怖っ!え?これって下手すりゃストーカーでは?訴えたら俺、勝てるんじゃないか?
考えるのも怖くなり、俺は風呂へ入ってすぐに寝た。
翌朝、涼葉に手紙がいつ届いたのか聞くと「夕飯の買い出しから帰ってきたとき郵便受けに入ってた」と、言われた。涼葉が昨日帰ってきたのは午後6:00頃らしい、平日はいつもこのくらいだ。
ちょうど、その頃俺は、織田さんの家から帰るところだった。
仮に織田さんが許嫁の人で、俺達が宇佐美達3人と家に押しかけてから、仲良くしているのを知って、あたかも毎日見てました風に手紙に書いて出したのだとしたら昨日の午後6:00までに家の郵便受けに入れるなんて芸当は出来ない、はず……
とりあえず、俺はみかんにこのことを相談すると
「でも、許嫁本人が入れたとは限らないでしょ?あたし達が織田さんの家に到着したタイミングでこっそり他の誰かに連絡して手紙を入れさせたかもしれないじゃん?内容は手書きじゃないから誰にでもできるし」
「お前なぁ、昨日は違うんじゃない?って言ってなかったか?」
「あたしも最初はそう思ったけど名前隠してる時点で本当のことかどうかなんてわからないし、それにあたし達が織田さんの家に押しかけたタイミングとか出来すぎてるでしょ」
それもそうだ。とにかく今日から学校へ来るらしいのでもうしばらく様子を見るとしよう。