4 帰省
私は大学にも慣れ、友人もそれなりにできた今、とある問題に頭を悩ませている。今年20歳となった私には"成人式”という大行事が迫っていた。
成人式自体はとても楽しみなのだが、問題はその後の同窓会である。
誰もが経験したことがあるであろう成人式の日の同窓会。何年経ってもきっと思い出から消えることはないのだろう。
そんな記念の同窓会だ、あのときの新年会とは訳が違うのだ。
加えて、私はあの新年会以来、一度も新年会や忘年会、そのほかの集まりにも参加していなかった。
(流石に参加しなきゃ悪いよなぁ……)
「ねぇ紫苑、成人式のあとの同窓会みたいな集まり行く?」
「何、長ーい講義がやっと終わったって言うのに第一声がそれ?」
「だって、通知来ちゃったから……」
「私は行くよ。一応毎年参加してきたし、夕紀とかにも会えるから」
「そっかぁ……」
「行ってみたら? 千草あれから一度も行ってないでしょ。夕紀たちに会いたくないの? それにこんな機会じゃなきゃ戻れないでしょ」
紫苑の言うとおりだった。こんな機会でもなきゃいくら近いといえども地元に戻ることはないはずだ。見方を変えれば地元に帰り、夕紀や葉月たちと会う絶好の機会なのかもしれない。
「――行ってみようかな」
「そうしな。一緒にいてあげるから」
「ありがとう、紫苑」
そして私は都会を離れ、地元の田舎へと向かっていた。紫苑はアルバイトの都合で先に行っていたため、私1人での移動だった。
(行く、って決めたけどやっぱり怖いな。青と紅祁はどうなってるかな……、夕紀たちは元気なのかな。――灯夜、来るのかな)
と移動中、色々な考えを巡らせていた私はふと、あることに気がついてしまった。
(私、もしかして灯夜のこと忘れたことない……? 卒業したときも、こっちの大学に来たときも、私、気づけば灯夜の姿探してた……)
そうこうしているうちに飛行機は着陸態勢に入っていた。
(着いたんだ、懐かしいな。2年ぶり……?)
空港を出るとそこには紫苑と夕紀がいた。
「あー! 千草だ! 久しぶり、2年ぶり!?」
「夕紀、久しぶり! 元気だった?」
「もちろん! 千草変わんないね~、集まりに来ないから、都会に染まったかと思ってたよ!」
夕紀は笑った。
懐かしいノリに私は(あぁ、迎えられてるんだ……)としみじみと感じた。
「おかえり、無事に着いたんだね」
「うん。ちょっと迷ったけどね」
「そういうとこも変わってないね! 未だに天然なんだ」
「天然じゃないよ!」
「まあまあ2人とも。こんなとこじゃなんだから、ホテル行くよ?」
ホテルにチェックインをした私は2人と昔話に花を咲かせた。
「あ、そういえば千草! 成人式の振袖、何着るか決めたの?」
「あ、うん。これから紫苑と一緒に選びに行こうと思って!」
「レンタル?」
「うん! どっかいいところある?」
「それならここがいいよ! 私もここで借りたんだ! オススメだよ!」
「わかった行ってみるね!」
そう言って一旦夕紀と分かれた私達は夕紀オススメのレンタルショップへと向かった。




