3 決別
灯夜が出て行ったあと、私はしばらく立ち尽くしていた。
「――ごめん」
灯夜は確かにそう言い残し去って行った。もう2度と会うこともないだろう。そう思うと涙が止まらなかった。
(あ、紫苑にメールしないと……)
私は紫苑に新年会に行けなくなった、という趣旨の説明と全ての真実を送った。
『わかった。うちから言っとく。今日はゆっくり休みな? 明日家行くから。とりあえずママさんには悟られないようにね』
数分後返ってきたメールの内容に私はさらに涙が止まらなくなった。
翌日、紫苑はメールの通り本当に家を訪ねてくれた。
「紫苑て良い人だよね……」
「何、いきなり」
「だって本当に来てくれたもん」
「当たり前でしょ? 昨日必死に抑えたんだから」
「何を?」
「決まってるでしょ。あいつを殴らないように必死に抑えたのよ。本当、最低なやつね。やっぱり一発くらい殴ってくればよかったわ」
紫苑は私の見たことのない表情で手をわなわなと震わせ怒っていた。その様子に私は思わず吹き出してしまった。
「何笑ってるの。千草だってカチンときたでしょ?」
「それがねぇ……。そうでもないの」
「なんで。言い方悪いけど、千草、騙されてたんだよ?」
「そうだけど、私が灯夜を好きだったのには変わりないし……。もう何を言っても変わらないでしょ? もう会うこともないだろうしね!」
「――そっか。千草が良いならそれでいいけどさ」
それから2週間後、冬休みが明け私は何事もなかったかのように高校生活を送った。
中学のように影でこそこそ言うやつも、下世話な噂がたつこともない、平和な学校生活を。
しかし、そんな私にも難関がやってきた。そう、"受験生”という名のレッテルが貼られる学年になったのだ。
元から成績が悪いわけでもなく、素行も悪いわけでもなかった私は特に大きな問題もなく紫苑と同じここ、凛翔大学を志望校を決めたのだった。
受験間近、私は周りの流行に乗り体調を崩した。当日になっても回復はせず、結局受験は別室で受けることとなった。
それでも受験番号が張り出されていたときはとても嬉しかった。
そんな念願の大学に入った直後、噂で「灯夜も同じ大学」ということを聞き、私の頭は真っ白になった。
しかし、1ヶ月、2ヶ月経てども全く会うことはなく、本当に通っているのかも怪しかったため、そんな噂など全く気にも留めていなかった。




