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国王陛下の恋のお悩み【連載版】  作者: 新田 葉月
一章 ラーシェ編
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第二十一話 三度目の正直8

 あー、頬が火照って仕方ないです。わたしが廊下をとぼとぼ歩いていると、ぽんと肩を叩かれました。アルフさんです。


「リディアナちゃん、あの後結局―――ってどうしたの? 顔赤いよ」


 不機嫌な陛下―――いえ、ルシアン様に連れて行かれた事を心配して下さったのですね。良い方です。

 顔が赤くなっている自覚はあるので、ぱたぱたと顔を仰ぎました。

「熱?」

「あ、いえ……」

 心配をかけてはいけませんね、慌てて否定してから口ごもりました。


「その……る、ルシアン様に」


 うー。この先は言えません。少し冷めてきた頬の熱が再発します。全く、ルシアン様はどうしてあんなことをなさったのでしょう。

 わたしの反応を見たアルフさんは何故か目を見開きました。

「どうかなさいましたか?」

 声をかけると苦い笑みを浮かべました。瞳に浮かぶのは悲しみ、でしょうか。


「いや、そうだよね……。分かっていたはずなんだけどな」


 何をでしょうか? やけに大きな独り言です。アルフさんは長いため息をつくと手で目を覆いました。

「アルフさん……?」

「……馬鹿だなぁ、俺。これでいいって言いながら、もしかしたらって期待してたんだ」

 辛そうなご様子に心配になって、腕に触れようとしましたが手で制されました。

「ごめん。俺さ……今は向き合えそうにないや」

 情けないなとアルフさんは無理矢理に口の端を上げます。痛々しい微笑みでした。


「だから、さ。リディアナちゃん、最後にするから……君の時間を少し俺に下さい」


 どうしてそんな辛そうな表情をなさっているのですか……? 困惑しつつも頷きました。

「構いませんが……」

「リディアナちゃんのお休みっていつ?」

「ええっと、六日後です」

 じゃあ、とアルフさんがわたしに一歩近づきました。アルフさんの長い足で縮められた距離は僅か数センチ。驚いていると壊れ物を扱いような手付きで髪が一房すくい上げられ、

「っ!?」

 そこにアルフさんの唇が落とされました。


「俺とデートしてくれませんか?」


 こちらを見つめる瞳には悲しいくらいの真剣さが宿っています。

 ドキリと小さく心臓が跳ねました。うまく言葉が口から漏れず、こくりと頷くことしか出来ません。殿方とのデートなんて初めての事ですが、不思議と浮かれる気分にはなりませんでした。さっきみた辛そうなお顔が頭から離れません。

 アルフさんは一転して晴れやかな笑みを浮かべると、踵を返します。


「じゃあ、訓練に行ってくるから! また連絡するね」


 ―――その背中はいつになく寂しげに見えました。


※※


 今日は、分からないことが多すぎます。頭がパンクしそうです。何か大切なものが変わっていく気がして不安なような、弾むような妙な気分になり、もやもやします。

 頭を押さえながら角を曲がると女中さん達の声が聞こえてきました。


「二ヶ月後が結婚式だそうよ」

「素敵よねー!」

「大陸でもっとも有名なお二人の結婚式よ!!」


「…………え?」


 大陸でもっとも有名なお二人。といえばエカチェリーナ様とアスルート帝国の王太子様しか思い浮かびません。

「それは、本当ですか!?」

 女中さん達は突然入ってきたわたしに驚きつつもそうですわ、と答えて下さいました。


 わたしは走り出しました。ルシアン様がここ最近落ち込んでいたのはそういう訳なのですね……。もう結婚してしまうから。

 けど、諦めたらそこからはなにも生まれません。

 二ヶ月後ならまだ間に合います!


 バンッと執務室の扉を開くと、麗しい出で立ちのルシアン様の姿が見えました。手には大輪の薔薇の花束。


「ちょうど良かった。今から行こうと思ってたんだ」

 ルシアン様は微笑みます。

 あぁ、勇気をだして、略奪しに行くのですね! 流石、ルシアン様です。


「リディアナ・コトル」


 今まで聞いたことのないくらい甘い声でそう呼ばれ、反応する前に、ルシアン様はわたしの前に跪いていいました。


「私と結婚してくれませんか?」



――――――……え?

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