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その49・一家に一台、ゴーレムリーダー

「やることも急ぎの用事もないので手伝ってもいいよ」


 そんな感じで意見が一致したので、アリ退治の了承を伝えるべく、ソルティナが明日にでも英傑さんのところへ赴くということで、この件についてはこれで一応カタがついた。鉄甲アリ大家族終了のお知らせ。



「じゃあお宝の分配といこうか」


『そうだな』


 不死の王の研究施設から持ち帰ったお宝を、床一面にずらりと……というほどの量ではないが、あるだけ並べてみた。

 品物と品物の間隔を意味もなく大きく開けて、気持ち広く見せる工夫をしてみたが余計わびしくなるだけだった。無駄な努力とはこういうことを言うのだろう。


 鉄鞭と金貨は俺のものなので、残りは、



・宝石のはめ込まれた剣


・宝石のはめ込まれた杖


・魔力を帯びている書物三冊



 こんだけである。


「……やっぱり何回数えても、片手の指で数えられるほどしかないわね」


「財宝を抱えて持ち帰った、というよりは、火事場から泣く泣くどうにかこれだけ運び出せたってほうがしっくりくる図だな」


 こうやって見ると、つくづく大したことない成果だ。

 全部ろくなものじゃなかったら、俺の見つけた金貨を二人に数枚ずつ分けても……いや、そんなの逆に嫌味にしかならないか。


『辛気くせぇなあ……。何度確かめたところで増えるわけもなし、これでいいじゃねぇの。全部持ち逃げされてスッカラカンじゃなかっただけ、ラッキーってもんだろ?』


「あるだけ背負っててんこ盛りで持ち帰ればよかったかしらね。目ぼしいものはもう他になかったけど、枯れ木も山の賑わいとも言うし」


「遺跡の掃除人かよ俺らは。お宝なんて見つからないのが普通っていうし、どうでもいい品物のためにそこまで手間取る必要もないさ。割り切ろうぜ。んじゃ、こういうの詳しい奴、手を挙げてー」


 わかってはいたが、自分含めて三人ともピクリとも腕が動かない。

 『鑑定』のスキル持ちか錬金術師が一人いてくれたらなぁと、こういう時に痛感する。



<可能>



 今までお宝のそばに黙って座り込んでいたロードスが、いきなり立ち上がった。


『どした?』


<わかる>


「うん、まあ、誰も詳しくないのはハナからわかってたよ」


<否。そうだがそうではない。自分は『アイテム解析』のスキルを所持している。よって、これらの品々に詳しくはないが、識別ならば可能>


「ホントか!」


<ホント>


 だとしたらこれはありがたい。『鑑定』や錬金屋なんか最初からいらんかったんや。


『おぅ、そんなら物は試しだ。いっちょやってみろよ、ロードス』


 ナナに急かされたロードスが、その双眸から青い光線を宝石剣へと浴びせ、数分そのままでいたあと、鑑定が済んだのか、次に宝石杖へ。

 また数分浴びせ続け、今度は杖から一番近いところに置いてあった書物へ……


「これで本当にわかるのかしら」


「どうなんだろ。まあロードスというか、ロードスの性能を信じるしかないな」


「それが不安なのよ」





 ……で、いささか信じ切れない点もあるが、とりあえず鑑定結果はご覧の通りとなった。



・宝石剣=古代王国製の剣。切れ味、強度、ともに並。積極的な戦闘用ではなく

     護身用の品と思われる。

     付与されている宝石には熱線の魔力が込められており、使用者との

     相性や適性によって、火力や射程距離が変わる模様。

     魔法の技量や才能がなくても魔力を消費するだけで

     使用可能な、優れた魔法武具である。


・宝石杖=古代王国製の杖。重量、強度、ともに脆弱。打撃用ではなく

     魔法使用の補助用の品と思われる。

     付与されている宝石には転移の魔力が込められており、使用者との

     相性や適正によって、転移速度や影響範囲が変わる模様。

     魔法の技量や才能がなくても魔力を消費するだけで

     使用可能な、極めて優れた魔法武具である。


・魔書その一=意識を失っている状態の対象の記憶を意のままに読み取れる一冊。

       対象が秘密にしている記憶程、読み取るのに

       多くの魔力を消費する。


・魔書その二=書物ではなく革製のカバーに睡眠の魔力が込められており、それが

       被せられている書物を読んだ者は眠りにつくことになる。

       一種の罠に近い。あるいは不眠症への特効薬か。

       ちなみに、このカバーがかけられていた本の内容はエルフ族の

       薬草学入門であった。カバーが必要か疑わしい一冊である。


・魔書その三=極東に存在するヤマト国の特殊魔法を再現したらしき一冊。

       使用者が魔力を消費すると書物のページが舞い飛び、様々な種類の

       式神(使い魔のこと)となって意のままに動く。

       使用者との相性や適性によって、操れる数や性能が変わる。

       特殊魔法の技量や才能がなくても魔力を消費するだけで

       使用可能な、極めて優れた魔法道具である。

       なお、式神が撃破された、あるいは解除した場合、再び

       もとのページへ戻る模様。



「思ってたよりも使い道がありそうなのばかりだな」


 そうなるとますます嫌な予感がする。これらをうっちゃってもいいくらいの何かをソルティナの元仲間が手中に収めた可能性が、非常に高くなってきた。



『そーだ』


 何かを思いついたらしく、ナナが自分の手の平をポンと叩いた。


『お前のその新しい相棒も鑑定してもらえよ。なんか奥の手とかあるかもしれねぇぜ?』


「それは名案ね。ほら、やってもらいなさいな」


「そういうことだが、いいか?」


<了解>





「いやー、本当に自由自在に変わるな」



 コークスのスキルによって解明された特性を試してみると、あっけないくらい簡単に、俺の念じたイメージに従って、鉄鞭の凶器部分が瞬時に変形していく。

 室内を気ままにグネグネとうごめく蛇のように、どこまでも長く伸ばしたり、何本にも枝分かれさせて、しかも、それら一本一本を個別に操る事もできる。

 それだけではない。

 先端を鋭く尖らせたり、あるいは切れ味抜群の刃のようにしたりと、叩く切る刺すといった異なる攻撃が可能だ。つまり、剣であり槍であり鞭であり棒でもある万能武器である。

 トワイライト。またの名を夢幻鋼とも呼ばれる、エルフ族の秘儀によって精製される魔法金属で作られているからこそ為せる業なのだとか。


「それって、途轍もなく貴重な金属ってことよね」


『エルフって連中はよ、うちの部族とどっこいどっこいなくらい金物が嫌いでなぁ。そんな奴らが主義を曲げてまで鍛えぬいた金属なんて、この世にほとんど存在しねぇと思うぜ。案外、それが最後のひとつかもよ』


「そんなに」


 あのドワーフのおじさんも、この町を起点に一族の間で広まっている噂の鉄鞭が、まさかエルフ製金属でできてると知ったら、どんな顔するかな。

 エルフとドワーフは仲が悪いと有名だからな。まあ人間と剛虫族も、それに匹敵するくらい険悪な間柄だが……

 いやそれにしても、よくぞ残っていてくれたわ。一歩間違えば、本命を手に入れたついでに持ち去られててもおかしくなかったぞ。一種の運命的なものが俺とこの鉄鞭にあったりしてな。


 ……あれ?


 もしかして、例の裏切り女戦士が手に入れたかもしれない武器よりこっちのほうが上なのでは……?

 人間が使いこなせる程度の凄い武器より、凄すぎて使いこなせる者がろくにいない凄い武器のほうが、ヤバさも威力も段違いな気がするのだが。




 そんなこんなで性能も判明したので、記念に俺がこの鉄鞭に名前を付けることにした。

 そうだな、トワイライト製の鞭なので『トワイビュート』と命名しよう。




 ……聖女二名からの失笑で、俺もソルティナと大差ないネーミングセンスだという事実に愕然とする中、夜は更けていくのであった。



 そうそう、残りのお宝だが、杖や書物は便利なので共有財産として誰でも自由に使用できることになり、剣については、やはり身を守る術がないのは問題だということで、宝石だけくり抜いてロードスに渡すことになった。

 くり抜かれた宝石を手渡すと、ロードスはどうするのかと思いきや、それをおもむろに自分の胸辺りへと押し込んでいく。すると、宝石は沼に沈むように、ロードスの内部へとずぶずぶと潜り込んでいった。

 本人いわく、これで自在に熱線を放てるようになったらしい。つくづく芸達者なゴーレムである。

今週は、火曜、木曜、土曜の同じ時刻に投稿します。

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