7/26-冒険者って冒険しなかったら実質無職では?
皆さんは気づいたでしょうか?
前話における圧倒的な違和感に。
人はノーロープバンジーをすると死にます。
「まだ死んでないっ!……けど死ぬかと思った。」
顔から地面に落ちたけど、衝撃とかはほとんどなかった。
ただの演出なのかなぁとか思いつつ顔を上げると、目の前に噴水が見えた。
周りを円形に石垣に囲われ、その中には所々に岩が置かれ、真ん中の大きな岩から水が噴き出している。
しばらく噴水を眺めいると、周りがざわざわしていることに気付いた。
ざわっ
「おいあれ」「空から落ちてきたぞ」
「プレイヤー?」「いやNPCじゃないか?」
「何かのイベント?」「あの子かわいい〜」
「…なんか目立ってる?」
どうやら空から落ちてきたから目立ってしまったようだ。
やっぱりおかしいよね、あれ。
「大丈夫なのか?嬢ちゃん。」
知らないおじさんに声をかけられた。
所々に金属の板をつけているけど、それ以外は普通の動きやすそうな服で、腰の剣がなければ普通の一般市民と勘違いしそうだ。
「……おじさん、誰?」
冒険者かな?それとも警備兵とか?
金色の髪をオールバックにした紅く鋭い目つきのおじさん。
「おっと悪りぃな。俺は傭兵やってる、アレウスってんだ。空から落っこちた嬢ちゃん、あんたは?」
「僕はリラだよ。で、傭兵?冒険者じゃなくて?」
「おう、傭兵だぞ。それと、冒険家や探検家を自称する奴はいるが、冒険者なんてのはいねぇなぁ。」
「なるほど。傭兵の仕事ってなにするの?」
「仕事の内容か?そうだなぁ…傭兵組合からの依頼で討伐に採取、商業連合から依頼があれば護衛ってところだな。」
この世界に冒険者っていないんだ。
やっぱり諸々リアルだなぁ、このゲーム。
それにこの人、AIだよね?中に人入ってるとかじゃないよね?
「傭兵組合と商業連合っていうのは?」
「傭兵組合は傭兵登録した奴に仕事を斡旋する所で、商業連合は商人登録した奴を管理する所だ。」
ギルドって組織は無いのかな?
「登録自体は誰でもできるの?」
「傭兵組合は誰でも無料で登録できるぞ。毎月登録継続料を組合に払わなきゃならんがな。商業連合への登録は、商売してる奴、始める奴だけだな。」
「そっかぁ。じゃあ傭兵組合行こうかな。」
「嬢ちゃんにはお勧めしねぇがなぁ。そんで、なんで嬢ちゃんは空から降ってきたんだよ?」
「こっちが知りたいんだけど?来訪者って普通どうやってこっちにくるの?」
「なるほど、何も知らねぇ嬢ちゃんだと思ったが来訪者だったのか。他の来訪者なら、ほれあそこみたいに地面が魔法陣がでて、そこから現れるんだよ。」
僕から少し離れた場所に魔法陣がでてきて、一際強く光ったと思ったら、いつのまにか人が立っていた。
「なにそれずるい。ずるくない?僕いきなりスカイダイビングさせられたのに。」
やっぱりオピス、怒ってたのかなぁ?
「あ。」
「ん?」
ちょっと考え事してると、出てきた人と目があった。
ていうか思いっきり見覚えのある顔だった。
黒いストレートの髪に、赤色の目、高い身長に見慣れた凛とした顔。
基本髪型と目の色を変えただけだからわかりやすい。
「やぁ親友。」
「こんにちは、親友」
凛も僕にすぐに気づいた。
実は当選発表前に身体データをみんなで作ってお披露目会をしていたりする。
「なんだ、知り合いか?」
「まぁね、こっちで待ち合わせしてたんだ。」
「こちらの方は?」
「色々教えてくれてる人、アレウスさん。」
「なるほど。私は鈴火・刀道と言います。」
おー、日本人っぽい名前だ。
「おう、傭兵のアレウスだ。よろしくな、鈴火嬢。」
「あっそうだ、僕はリラ・ミルキーウェイね。」
「ん、把握した。もうすぐスーと桜も来るだろう。このままここで待つとしよう。」
「スーとサクラ?あの二人の名前?」
なんでまだいない2人の名前を?
「ああ。少し前に決めてな。事前に教えあっていた。ファミリーネームがあるとは思ってなかったから、分からないがな。」
あぁ、それは抽選外れた僕には言えないよね。
「ふむ、嬢ちゃんはもう大丈夫そうだな。そんじゃあ俺は仕事に戻るがよ、もう空から落ちてくんなよ。」
「落ちないよっ!…はぁ、ばいばい、色々教えてくれてありがとう!」
「?空から落ちる?…アレウス殿、連れが世話になりました。」
僕と凛…リンカが話してるのを見て、アレウスはほっとしたような顔になり、踵を返して僕たちから離れる。
厳つい顔に似合わず、優しい人だなぁ。
「それで、空から落ちるってなんの話だ?」
「こっちに来る時、案内役の人に空に飛ばされたの。」
「は?一体何したんだ、お前。」
呆れたような眼差しが痛い!
「いや、うん、まぁ、気にしないで。……そうだ、鈴火は武器何を選んだの?何も持ってないっぽいけど。」
「私は刀だな。使い慣れたものが1番だ。今はインベントリにしまっている。リラは?」
インベントリ?後で聞こう。
っと僕の武器か。
「僕は盾だよ。ほら、こ……れ………。」ダラダラ
「何もないが、どれだ?」
「…………わ…れた。」
「ん?なんだって?」
「オピスのところに忘れて来たぁ〜!!」
これからどーしよ。
一方その頃
アレウス「おじさん、かぁ。俺、そんなに老けて見えるかねぇ…。」
地味におじさん呼びにダメージを食らっていたアレウス・アンタレスさん24歳の図