忠臣ボルックスの追想
ベガか。
馬鹿だよ。アイツは馬鹿だった。
ヘーカも、なんで気付かないかね?
アイツはずっとシリウスを見てたよ。自分の方を見てほしくて仕方ないって感じだった。
ヘーカから引き離そうとした理由?
さあね。
ヘーカに会えなくなったら、自分のこと構ってくれるとでも思ったんじゃないの? 知らないけどさ。
つーかさ、アイツほんと何?
シリウスの事、なんも分かってなかったじゃん。
それで惚れてるって何?
何が好きだったの? どこに惚れてた訳?
⋯⋯いや、だからさ。見たんだよ。
あの時。
あの馬鹿に『お慕いしている〜』とかなんとか、ぐじゃぐじゃ言われてさ。シリウスの奴、きょとんとしてたよ。
そりゃそうだって。
シリウスは自分の事、女どころか人間だとも思ってなかったんだから。
剣が綺麗だって褒められて、だからなんだって話なんだよな。
多分、結婚とかお付き合いとか、どうするのかも分かってなかったんじゃね?
なのにさ。あの馬鹿、それが分かんないんだよ。
『どうして応えてくれないんだ』とか『何も言ってくれないんだ』とか、勝手に悲劇の主人公気取って盛り上がって。
かわいそーって思ったね。
それだけだけど。
⋯⋯油断してたんだよ、僕も。
だってアイツは、最初の最初から、ヘーカの味方だった奴だから。
なのに、あの馬鹿、言いやがった。
『貴女が僕を狂わせた』とか、全部シリウスの所為にして。
『陛下が憎い』
『陛下さえいなければ』
『陛下などもうどうでもいい。貴女さえ手に入るなら』
ってね。
そりゃ跡形もなくなるよ。
馬鹿だろ? アイツ。
でもさ、ヤバいと思った。
ヘーカの腹心殺っちまった事もそうだけどさ。
シリウスが。
ひっでー顔してるんだよ。あんなの見た事なかった。
で、僕は慌ててヘーカを呼びに走った訳。
あれだね。今考えるとさ、アレって、怯えてたんだよな。
何がって⋯⋯シリウスがさ。
怯えて、腰抜かして、へたり込んでたんだ。きっと。
そんなシリウス想像した事もなかったから、分かんなかったけど。
⋯⋯⋯⋯なあ。僕が、悪かったのかな?
ヘーカを呼ばなきゃと思ったんだ。
ヘーカじゃなきゃ駄目だって⋯⋯ヘーカならなんとかしてくれるって、思ったんだ。
思ってなかったんだ。
まさか、ヘーカが、間違えるなんて。




