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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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平穏8

村の広場に、レオニスとアルトリウスが向かい合って立つ。


その報は、あっという間に村中へと広がった。

気づけば、広場の周囲には人だかりができていた。


「なんだなんだ? 果し合いか?」


「違う違う! 王都の騎士様の模擬戦だって!」


「すげえな……あの気配……」


ざわめきと期待に満ちた声が、空気を震わせる。


カナは、その人垣の外で立ち尽くしていた。


(すごい、人……)


そっと息を呑んだ、その時。


「大丈夫か、カナ」


不意にかけられた声とともに、肩がやさしく引き寄せられる。


「レ、レイナルト様?!」


驚いて見上げると、彼は目を細め、穏やかに微笑んだ。

そのまま、彼女を人垣から守るように立つ。


そして、視線を広場の中央へと向けた。


「なんだ? 楽しそうなことになっているな」


「だ、大丈夫でしょうか……」


愉快そうなレイナルトの声に反して、不安げに問いかけるカナに、彼は軽く頷く。


「大丈夫だ。

彼らも、加減は分かっているだろう」


そう言うと、視線を再び広場へと戻した。

カナもまた、ゆっくりと視線を二人へ向ける。





向かい合うレオニスに、アルトリウスはにっと笑みを浮かべる。


「魔力は? どうする?」


問われたレオニスは、広場の外――ティオの姿を一瞥する。


「……もちろん、ありだ」


静かな声。


「でなければ、彼の参考にならん」


その言葉に、アルトリウスは微笑む。


「……だね。わかった!」


そして姿勢を低くすると、その気配をすっと研ぎ澄ませる。


「……それじゃ、いくよ?」


レオニスは目を細める。


「……ああ。来い!」





――空気が、変わった。


次の瞬間。

二人の足元から、淡く光る魔力が立ち昇り、渦を巻いた。


空気が震え、地面に光が走る。

それは、広場全体を包み込むように、広がっていった。


レイナルトは、わずかに口角を上げた。


(……さすがだ。自ら広場を結界で覆うか……)


見えぬ壁が、静かに張り巡らされる。

外へと影響を及ぼさぬよう、そして内に全力を許すための配慮。


その中心で――

二人は、同時に地を蹴った。

鋭い金属音が、遅れて響く。


――ギィンッ!


交錯する剣。

弾ける火花。

風が、後から追いかける。


一閃。

また一閃。

続けざまに繰り出される斬撃。


レオニスの剣は、水のように流麗に。

アルトリウスの剣は、風のようにしなやかに。


重なる斬撃は、もはや光の軌跡となって空間を駆ける。


踏み込み、受け、流し、打つ。

そのすべてが、ただ美しく、そして鋭い。


観衆は、息を呑んだまま動けない。


その中で――

ティオは、ただ立ち尽くしていた。


(なんて……速いんだ……)


目を凝らしても、動きが捉えきれない。

視界に残るのは、残像のような光だけ。


(……見えない……!)


拳をぎゅっと握りしめる。


(これが……騎士の剣……!)


胸の奥が、熱くなる。

同時に、自分の未熟さが、痛いほどに突きつけられた。

届かない。遠い。圧倒的に。


(でも……だからこそ――)


その瞳に、確かな光が宿る。


あの高みへ。

あの速さへ。

あの強さへ。


届きたいと、強く願う。


(……絶対に、追いつく……!)


広場の中央では、なおも剣戟が続いている。

交差する二つの剣は、まるで互いを高め合うように、なおも激しさを増していく。


視線を逸らすことなく、ティオはただ、見続けた。

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