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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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平穏6

レイナルトの眼差しを、エダンは正面から受け止めた。

そして、ゆっくりと頷く。


「……もちろんでございます、殿下。

あの異変は、我らとて被害者にございます。

カナの力がなかったらと思うと……今もなお、恐ろしい」


「――そうか。

……わかった」


エダンの低く、噛みしめるような言葉に、レイナルトは、ゆるやかに視線を巡らせた。


「では……話すといい。アルトリウス」


「……え?」


思いがけない言葉に、エダンとマリナは揃って首を傾げる。


(――なぜ、ノーザリアの王子が、王国の異変について語る……?)


二人の瞳に浮かぶ戸惑いに、アルトリウスは一度静かに目を閉じた。

胸の奥に溜め込んだものを吐き出すように、深く息を吸う。


そして、顔を上げた。


「……まず初めに……。

僕は、皆さんから石を投げられても、責められても仕方のない立場にあると……申し上げます」


その声には、覚悟の重さが滲んでいた。

アルトリウスは、まっすぐに顔を上げ、語り始める。


一つひとつ、逃げることなく。





すべてを聞き終えたとき。

エダンとマリナは、衝撃のあまり、言葉を失っていた。


ノーザリアの王が――精脈を歪めていた。

精霊を滅し、精霊樹を枯らし、王国を我が物にせんとした――その事実。


「僕は……皆さんに真実をお話しするため、そしてノーザリアを代表し、謝罪するために参りました」


アルトリウスは、震える声を押し殺すように、言葉を紡いだ。

その奥にあるものが、痛いほどに伝わってくる。


「父の所業は、到底許されるものではありません。

いかなる非難も、(そし)りも、叱責も……すべて、お受けします。どうか……」


深く、頭を下げる。

まだ年端も行かぬ少年の、そのあまりに真摯な姿に、エダンの胸は揺れた。


しばしの静寂ののち、彼は静かに口を開く。


「……アルトリウス殿下。どうぞ、お顔をお上げください」


エダンはひとつ息を吐き、ゆっくりと言葉を続ける。


「……お話は、よく分かりました。

まさか、そのようなことがあったとは……」


言葉を切り、しばし思案するように目を伏せる。

やがて、顔を上げたエダンは――俯いたままのアルトリウスへ、やわらかな微笑みを向けた。


「この話は、我らの胸の内に留めましょう。

よくぞ、打ち明けてくださいました」


その言葉に、アルトリウスははっと顔を上げる。

その瞳が大きく揺れた。


罵倒されることを覚悟していたのだろう。

膝の上で握られた手は、かすかに震えていた。


「知りたいとは申しましたが……」


エダンは静かに続ける。


「もう、過ぎたことにございます」


その隣で、マリナもそっと頷いた。


「ええ、あなたの言うとおりね」


そして、やさしく微笑む。


「私たちは、もう前を向いています。

あの異変は……もう、二度と起こらないのでしょう?」


アルトリウスは息を詰め、力強く頷いた。


「……はい。二度と。

我が名にかけて、お約束します」


その言葉に、彼女は、ふっと微笑みを深めた。


「なら、大丈夫です。

これは、ここだけのお話にしておきましょう」


二人の言葉は、あまりにもあたたかく。

そのぬくもりに、アルトリウスは再び――深く、頭を下げた。

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