翌日の朝
学院祭の翌朝。
カナはゆっくりとまぶたを開けた。
昨日の光に包まれた祝祷、拍手と歓声。
――そして。
ふと、胸に抱いていた花冠が目に入る。
そっと抱きしめると、ふわっとした甘い香りと共に、
あの真剣で優しい、レイナルトの顔が脳裏によみがえった。
「……っ!!」
ぶわっと音がするかのように顔が一気に熱を帯び、心臓が暴れるように跳ねる。
「な、な、なんでこんなに……っ」
慌てて頭をぶんぶん振り、赤くなった顔を両手で覆った。
(落ち着け、落ち着け……!)
しばらく深呼吸をしてから、再び花冠をそっと手に乗せる。
もう一日経っているはずなのに、その花びらは萎れることなく、
昨日と変わらない瑞々しさを放っている。
「……これって、もしかして……」
カナはそっと指先で花に触れた。
(ルシリアのおかげかな……ありがとう)
心の中でそう礼を言いながら、花冠を大事に棚に置いた。
「……よしっ!」
カナは深呼吸をし、ぱんっと両手で自身の頬を叩くと、気合を入れる。
支度をし、制服に着替え、髪を整える。
鏡の中の自分に小さく頷き、部屋を出た。
階下に近づくと、パンの香りと湯気が漂い、寮のホールからはいつものざわめきが聞こえる。
穏やかな学院の朝。
カナは胸の奥のざわめきをそっと押し込めながら、ホールへ足を踏み入れた。
*
ホールの扉をそっと開けると、賑やかだった朝食のざわめきが――ふっと、消えた。
全員の視線が、カナに注がれる。
カナは立ち止まり、胸がドキリと跳ねる。
(……え? な、なんで……?)
一瞬の静寂。
次の瞬間、誰かが椅子を引いて立ち上がったかと思うと、
ホール中から拍手が湧き上がった。
「すごかったよ、カナ!」
「学院祭の祝祷、忘れられない!」
「本当に素敵だった!」
笑顔と歓声に包まれ、みんなが一斉に立ち上がって讃えてくれる。
その光景に、胸の奥がじんわり熱くなり、涙がこぼれそうになる。
「……み、みんな……ありがとう……」
カナは必死に涙をこらえ、深く頭を下げた。
その姿に、さらに大きな拍手が広がる。
ようやく顔を上げ、カナはサラとミリアが手を振っているテーブルへ歩いていった。
二人は立ち上がり、いつもと変わらない笑顔で迎えてくれる。
「おはよう、カナ。……立派だったよ」
「うん、すっごくかっこよかった!」
その優しい声に、カナの胸はあたたかく満たされていった。




