学院祭7
ソフィーネに導かれ、カナは静かな廊下を抜けて学院の中庭へと向かった。
夜の空気は澄みわたり、星の光がわずかに木々の間から漏れている。
カナの胸の奥のざわつきは、少しずつ穏やかに落ち着きを取り戻していた。
やがて精霊樹の大樹が視界に入る。
その周囲には、学院の生徒たちや王族の関係者、学院の教師たちが静かに集まっていた。
さらに、精霊庁の重鎮たちの姿もあり、重厚な雰囲気が場を包んでいる。
その中で、見慣れた顔がカナの視線に入った。
エリアスは微笑むと、カナに近づき静かに声をかける。
「さすがだ、カナ。君が祝祷者なんだな。
大丈夫だ。君自身を信じろ」
その声には、深い温かさが込められていた。
カナはすぐに微笑みを返す。
「……ありがとうございます。エリアスさん。
はい。頑張ります」
エリアスは軽く頷き、目の前の精霊樹を見つめた。
大樹の葉が月明かりに揺れ、まるで生きているかのように息づいている。
カナは深呼吸をし、胸に宿る精霊たちの鼓動を感じながら、静かにその場に立った。
*
学院長が厳かに手を掲げ、会場に響き渡る声で宣言する。
「――これより、感謝の祝祷を開始する」
夜空に星が瞬く中、第一王子レイナルトがゆっくりと歩み出た。
銀糸のクッションの上には、淡いピンクのエルダーローズと、
白銀に輝く精霊草で編まれた花冠が載っている。
光を受けるたび、まるで精霊が舞うかのように淡い輝きが溢れる。
集まった生徒たちや来賓が息を呑む中、レイナルトはカナの前で立ち止まる。
深く息を整えると、両手で花冠を取り、跪くカナの頭上へと慎重に掲げた。
――その瞬間、精霊樹の葉がざわめき、柔らかな風が二人を包む。
花冠が頭に触れると同時に、淡い光の粒が舞い上がり、夜空に小さな虹を描いた。
レイナルトは身を寄せ、誰にも聞こえない囁きで励ます。
「……君ならできる。私は信じているし、精霊たちも同じだ。
――胸を張って、祝祷者として進めばいい」
カナは胸が熱くなり、震えそうになる手を押さえて、小さく頷く。
その表情に満足したように、レイナルトは一歩下がり、カナに静かな視線を送った。




