精霊科ホームルーム2
学院祭に向けたホームルーム。
今日もミリアとセオが教壇に立っている。
「じゃーんっ!」
ミリアが勢いよく、手にした紙をぱっと掲げる。
「聞いて聞いて! 学院祭の“光の庭”、
ついに中庭の噴水を使う許可が下りたんだよ!」
教室が一気にざわめき、
リオナ、フェリル、マリスの三人が目を輝かせる。
「噴水? 本当に? 」
落ち着いた声でリオナが言うと、フェリルが身を乗り出す。
「おー! 外でやるのか。いいな!」
セオが微笑みながら説明した。
「下見のとき、カナが精霊に頼んで、水しぶきに光を集めてくれたんだ。
すごくきれいで、精霊もたくさん寄ってきた」
マリスの瞳がきらりと揺れる。
「わぁ……!そんなの、絶対みんな喜ぶわ……」
ミリアが両手を腰に当て、にかっと笑う。
「でしょ! だからみんなで作ろうって思って!
ランタンとか花の飾りとか、あと精霊さんが飛び回れる道も作るの!」
学院祭の話が一段落すると、カナは机の上に両手を置き、勇気を出して小さく声を上げた。
「あの……みんなって、どんな精霊と仲良しなんですか?」
教室の空気がふわりと和らぎ、ミリアが真っ先に手を挙げる。
「わたしは土! 畑で小っちゃい精霊がいつも手を振ってくれるんだー」
フェリルが続ける。
「オレは水だな。川でよく笑い声が聞こえるんだ」
マリスが少し恥ずかしそうに答える。
「私は……風かな。森を歩くと、ふわって頬を撫でてくれるの」
リオナは落ち着いた声で微笑む。
「私は水よ」
最後に、セオに視線が集まる。
セオは一瞬だけ目を伏せると、穏やかに答える。
「僕は……土だよ。森で土の精霊の声がよく聞こえるんだ」
ミリアが肘でセオをつつく。
「セオって研究ばっかりしてるけど、ちゃんと声は聞こえるんだね」
「ミリア……」
セオは苦笑しながら頷く。
*
午後の陽射しがやわらかく差し込む中、
精霊科の教室から、カナたち6人がわいわいと中庭に向かって歩いていた。
噴水はきらめき、周囲には蝶のように舞う精霊の姿がちらほら見える。
ミリアが両手を広げて叫ぶ。
「わぁーっ! やっぱりここ、気持ちいいね!
精霊さんもいっぱい集まってきてる!」
マリスが頬に風を感じて微笑む。
「ふふ、歓迎してくれてるみたい」
フェリルが勢いよく噴水の縁に駆け寄る。
「おー、いいじゃないか! 水しぶきで虹、絶対キレイだぞ」
ミリアが皆を振り返って言う。
「どう? 素敵でしょ?
花のアーチを作ったり、あと、噴水にお花をいっぱい浮かべようかって思ってるの。
どうかな? 何かいい考えがあったら教えて!」
「……花?」
リオナが静かに言う。
「……え? うん。
お花をいっぱい浮かべたらきれいかな、って……」
ミリアは首をかしげる。
リオナはそっと噴水に近寄ると、水面に静かに手をかざした。
噴水の水面にひとしずくの冷気が落ち、たちまち薄氷の花が咲き始めた。
「こんなお花はどうかしら?
学院祭の日は、もっとたくさん浮かべられると思うわ」
その繊細な美しさに、みんなが目を輝かせる。
ミリアが駆け寄る。
「リオナ、すごーい!」
マリスも目を見開いて呟く。
「まるで本物の花みたい……」
セオがノートにさらさらとメモを取る。
「氷の花を浮かべて、カナが虹をかける……。
いいね。とてもきれいになりそうだ」
視線が自然とカナに集まる。
カナは少しだけ緊張しながら微笑む。
「……やってみるね」
そっと目を閉じ、首元のペンダントに触れて風の精霊に呼びかける。
(──お願い、水しぶきを舞い上げて。
みんなに虹を見せたいの……)
次の瞬間、風が噴水の水をふわりと舞い上げ、
陽の光を受けて七色の光の帯が弧を描いた。
「わあっ!」
「これは……すごいな……!」
リオナの氷の花に虹が差し、淡く輝く光景に、精霊たちが嬉しそうに舞い始めた。
セオが静かに呟く。
「これなら、学院祭の日はきっと……精霊も、みんなも笑顔になる」
ミリアが、カナとリオナの肩をぽんと叩く。
「決まりだね! 光の庭、絶対に成功させよ!」
6人の笑顔が虹色の光に照らされ、未来の景色が、確かな形で胸に刻まれた。




