光の庭、はじまりの虹
ホームルームから数日後、学院の中庭。
白亜の噴水が陽を受けてきらめき、水のしぶきがきらきらと空気に舞っていた。
花壇には季節の花々が咲き誇り、精霊が光を散らして飛び交う。
ミリアが両手を広げて、噴水の周りをぐるりと指さした。
「見てよ、この場所!
学院祭の“光の庭”は、ここを丸ごと使うんだよ!」
セオがカナを見て微笑む。
「先生方を説得するの、大変だったんだよ。
ミリアがすごく頑張ってくれて、ようやく許可が出たんだ」
ミリアは腰に手を当てて胸を張る。
「だって成功させたいじゃない?
そのためには絶対この場所! って決めてたんだから!」
カナは辺りを見回し、胸がふわりと弾む。
「すごいね!ミリア。
そして……改めて見るときれいな場所だね。精霊さんも、たくさん……」
セオがメモ帳を手に、落ち着いた声で付け加える。
「精霊が見えない者向けに、精霊を模した光をたくさん飾る予定だ。
光が水面に反射するから、夜にはもっと幻想的になるはずだ。
ここなら来場者も歩きやすい」
ミリアが噴水の縁に腰を下ろし、足をぶらぶらと揺らす。
「お花はどうしよう? 私、お花屋さんに頼もうか?」
カナは少し考え、ふと噴水を見つめた。
「うん。ありがとう。お花がたくさんあると良いよね。
噴水に浮かべるのもありだと思う。
あ……精霊さんにお願いしたら、水のしぶきで虹を作ってもらえるかも……?」
セオが目を丸くする。
「虹……? そんなことができるのか?」
カナは小さく頷き、噴水のそばで両手をそっと合わせた。
(……風の精霊さん、みんなを喜ばせたいの。
お願い。ちょっとだけ、水を運んで……)
瞬間、柔らかな風が舞い、噴水の水しぶきが高く舞い上がる。
陽の光を浴びたしぶきが細かな粒となり、その向こうに淡い虹がかかった。
「わぁっ……!」
ミリアの瞳が輝き、セオが息を呑む。
「……本当に、虹が……」
風の精霊たちは虹の中を楽しそうに飛び交い、その光景に噴水の周りが温かな色に染まっていく。
カナは照れくさそうに振り向く。
「……こんな感じなら、きっとみんな喜んでくれるよね?」
ミリアが勢いよくカナの手を握った。
「最高だよ、カナ! 学院祭が楽しみになってきた!」
セオも微笑みながら頷く。
「うん、まさに“光の庭”って名にふさわしい」
こうして、学院祭の準備は虹色の輝きとともに、ゆっくりと動き出した。




