↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/721

午後・精霊科の教室

昼下がりの柔らかな陽光が、学院の回廊を金色に染めていた。

カナはレフルに伴われ、静かな歩調で精霊科の教室へ向かっていた。


「緊張しなくても大丈夫ですよ、カナさん。

皆、あなたに会えるのを楽しみにしているはずです」


レフルの落ち着いた声が、少し張り詰めていた心を和らげる。


カナは扉の前で深呼吸をする。微笑むレフルがゆっくり扉を開けると――

教室内のざわめきが一瞬で収まり、視線が集中した。


「皆さん、午後から精霊科に加わるカナさんを紹介します」


レフルの声に促され、カナは教壇へと歩み出る。


「……カナと申します。まだわからないことばかりですが、よろしくお願いします」


小さく頭を下げると、後ろの席のミリアが、勢いよく手を振った。


「カナ、こっちだよ!」


「……ミリアさん。お静かに」


レフルの声と共に教室に笑いが広がり、緊張が少しずつほぐれていく。


精霊科の生徒は、ミリアとカナを含めて6名。

教室はこぢんまりとしており、窓際には小さい花が咲き、光が優しく揺れていた。


レフルが席を指し示す。


「……カナさんはミリアさんの隣を使ってください」


「はい、わかりました」


席に座ると、ミリアが嬉しそうに微笑みかけた。


「やっと一緒だね! 午後は基礎の授業だから、きっとやりやすいよ」



*



「さて、今日から新たに仲間が増えました。

精霊学の基礎をもう一度振り返りながら、皆で学んでいきましょう」


やがて、レフルが教壇に立ち、静かに授業が始まった。


「では、今日は基礎に立ち返り、“精霊呼び”の練習をしてみましょう。

精霊との絆を育む最初の一歩は、呼びかけ、応えてもらうことです」


教室の中央に、淡い光を放つ魔法陣が浮かび上がる。

生徒たちは順番に立ち、魔法陣の上で呼びかけを試みた。


「……来てください」


最初の生徒が声を出すと、小さな光粒がふわりと現れ、机の端に舞い降りる。


「いいですね。今の反応が標準的です」


レフルが頷くと、次々に生徒たちが挑戦したが、光が揺れる程度の反応に留まった。


やがて、レフルの視線がカナに向く。


「では、カナさん。あなたも試してみましょう」


突然の指名に、カナは少しだけ肩をすくめた。


「……わたし、まだ魔力がないから……」


「大丈夫です。声に想いを込めるだけでいいのです」


カナはゆっくり立ち上がり、魔法陣の中央に歩み出た。

胸に手を当て、森で出会った精霊たちを思い浮かべる。


そして、静かな声で囁いた。


「――来てくれる?」


その瞬間、空気が震え、無数の光が一斉に舞い降り、カナの周囲に集う。


「……えっ、なに、すごい……!」

「精霊が一度にこんなに……信じられない……」


生徒たちが一斉に声を上げ、椅子から立ち上がる者までいた。


風の精霊がカナの肩にとまり、髪をやさしく撫でてくれる。

カナはふわりと精霊に向かって微笑み、小さな声で礼を言った。


「――ありがとう。こんなにたくさん来てくれるなんて……」


風が吹き抜け、教室全体が温かな光に包まれた。


沈黙。

ミリアですら、何も言葉を発することができず、ただ目の前の光景が信じられなかった。


レフルが驚きつつも、深い感嘆を込めて言う。


「……やはり王宮と精霊庁に選ばれただけのことはありますね。

精霊がこれほど懐くのは、私の長い教員生活でも初めてです」


カナは、学院での新しい一歩を踏み出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。