22.決意を新たに
「その鎧……もしかしたらモンスターじゃなかったりして」
「シャーロッテに飼われているのに魔物ではないのか?」
「例えば彼女に雇われたNPCの用心棒とか見張り番とか。人間の可能性もあるじゃないですか」
「しかし、NPCが魔物の出るダンジョンでの見張りを承るのだろうか? いくら強いとはいえたった一人で……」
二人は自分たちの言っていることにいまひとつ確信を持てていなかった。交互に意見を出し合ってみているが、どれもピンとこないようで首を傾げるばかり。
キリシマは黒鎧と対峙したときに感じた威圧からして、自分たち以外のプレイヤーの居残りがまだいるのではないかとも考えたが口に出すことはしなかった。
ここでいくら二人が予想をしていても埒が明かない。
「百聞は一見にしかずですね。実際にその黒鎧の男を僕も見にいくしか……」
先に結論をバーレッドが言い、キリシマもそれに頷く。賛成ではあるのだがそれに付け加えるよう続けることには、
「見に行くのではないぞ。再戦で打ち倒すのだ。そうであろう? 参謀バーレッド・ハーキン」
強い気持ちの込められた台詞で言い直しを求める。悔しいという彼の心が滲み出ている返しに、
「そう、でした。倒しにいきましょう。僕らで」
バーレッドもうなずいて言い直す。
負けたまま、逃げ出したままではいられないという強い信条が彼らにはあったようだ。
バーレッドがキリシマのことを情けないと一辺倒に思わなかったのもここにある。相手が誰であろうと関係ない。今ある事実は見知らぬ強敵を前に敗走してしまったということだけ。その真実だけが二人の男に行動を起こさせるには十分な出来事だった。
他のプレイヤーたちが別のゲームへと旅立っていく背中を見送り、ヴァロランド風情に危険に晒され壊されてしまった、運営にさえ放棄されるのを待つだけになった世界。
このLSOに居残りを続けた諦めの悪さや根強さは二人とも廃人の一品。一級品以上の負けず嫌い。そうして、今までもこれからも勝つための手段を編み出す思考をも二人は共有している。
やられたままやり返さないわけにはいかない。本当ならばLSOを終わらせた運営やヴァロランドに向けたいと思っていた復讐心がキリシマとバーレッドを繋いで火をつけていた。今ばかりはその種火の一部を謎の鎧に向けて放ってやるのだと。




