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14.頼り


「所持金、僕は一万とちょっとですね。キリシマさんはいくらあります?」

「に、二千円だ……」

「心もとないですよね。初心者向けとはいえ兎の獣皮の納品クエストもあんな感じでしたし、やっぱり食べ歩きなんてしてる場合じゃないですよ」

「まったくそのようだ」


LSOのゲーム内通貨は日本語訳がされているのかわかりやすくも「円」だった。

二人が互いにステータスで確認し合った現在の所持金は、合わせても宿屋に数泊出来るかどうか危ういといった額であった。

バーレッドもキリシマもけして貧乏というわけではない。むしろゲーム内通貨ならば浴びても腐ってもどうにも減らないと大口を開けてしばらくは笑っていられるほど桁外れの大金持ちだった。

だが、よりによって二人は揃ってギルドハウスの金庫にそのほとんどを預け入れてしまっていたのだ。

プレイヤーレベルがカンストしてからはLSO内で買えるありとあらゆるコンテンツを制覇してしまい逆に金の使いどころに困った二人は、最終的に自分たちの所持金としては持ち歩かずギルド全体の資金としてまとめて建築物ハウジングの内部やギルドハウスに万が一のこと(盗難や火災などが発生することがある)があった場合の保険屋や弁護士に収めていた。


「金を貸していた輩らも保険屋や弁護士として活動していたものども、名こそ残ってはいるが存在していない」

「ステータス画面に表示されているのを選択しても無反応だ。すぐに助けてくれそうな人は僕らの他にログインしていないみたいですね」


普段現金を持ち歩かない二人の資産家が災害にあったとでもいうべき状況だ。よかれと思っていた運用方法が今回は想像以上にアダになってしまったらしい。

そもそも、自然の脅威ですらデータでしかない世界での異常事態はいくらベテランプレイヤーたちでも想像も予期もせぬ災厄である。

それゆえに現在の財布の中身は心もとない。

これには流石にLSOトップを走るゲーマーとして自信家なキリシマをも珍しく委縮させられているしかない。



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